12/29/2016

リコーダーの結露対策


結露への対策
気温が下がってくるとリコーダーの内管に水滴が溜まり、場合によっては微妙なサミングを邪魔してしまい、とんでもない音が出たりする。原因は窓の結露と同じことで、肺の中に溜まっていた水分をタップリ含んだ暖かい空気が冷えたリコーダーに吹き込まれると、空気が急冷され、含まれていた水分が内管に凝結する訳だ。

本題の前にこの現象にまつわる話を2つ
HRCを立ち上げたころだからかなり昔の話ではあるが痛みを持って思い出す。
新入部員の加入に伴い新規の楽器が届いたばかりの頃だった。国産の木管アルト。結露のため音が出にくくなったらしい。遠心力で水を抜こうとしたのだろう。管をつかんでビュンと力強く振ったのだ。勢いで頭部管がスポンと抜け、運の悪い事にその方は和太鼓の演奏者でもあったので、並の力をはるかに超えていたのだろう。さらに床がコンクリートにリノリューム張りで、絨毯や畳でなかったことも悲劇性を強めた。カッキーン! と鋭い音で床にぶつかりコロコロと転がった。あわてて拾い上げてみると吹き込み部分とブロックがひどく損傷していた。・・・その後修理は完了したとの話は聞いたが、演奏に使っているのを見たことが無いから、当初の性能に復帰できなかったのでお蔵入りとなってしまったのだろう。

次はかっこいい話だが、残念ながらクラリネットだ。
クラリネット協奏曲を聴きに行った、確かモーツァルトだったと思う、新進気鋭といった感じの奏者。第1楽章が終わった時、片手を上げて指揮者に何かアピールした。
ン!何だろう と思う間もなく、2本のネジを緩めてリードを外し、手品のように取り出した深紅の絹のマフラーのような布をリード部分の穴に差し入れ、そのままスッと先端のベル部分から引き出した。ネジを締めてリードを取り付け、そのまま何事も無かったように第2楽章を開始した。・・・
試し吹きもなく慌てる様子もない、それでいて早く、あざやかさに拍手したくなる程だった。
いつかリコーダーでもやってみたいと思ったが、木槌でコンコンコンとブロックを抜かなければできないだろう。

さて本題  リコーダーの内管の水分を取り除く方法
通常は頭部管を外し、ガーゼのような布を巻き付けた掃除棒を差し込んで水分を取り除き、中部管、足部管も同様にして水分を取り除き、再度組み立てる。
この作業を楽器をバラす事なくやってしまうのが今回の趣旨。
写真1 クリーニングスワブ、掃除棒 モダンピッチアルト

準備するもの
・ヤマハ クリーニングスワブ S  
・木製掃除棒
クリーニングスワブ 昔はガーゼ製だったが現在はマイクロファイバー製 薄くて滑りが良い。
木製掃除棒  全長は32cmは必要、楽器のケースには収まらないかもしれない。(写真の掃除棒はバロックピッチの楽器にも対応するため 38cm)
既存の金属やプラスチックの掃除棒は長さが不足しているし、管内を傷つけるおそれがある。太すぎるのもスワブを押し込むには不適格。5φ(アガチス材)の丸棒、一端にゼムクリップをカットした金具が取り付けてある。(この金具はオイル塗布などに使用)
写真2 押し込んだ状態

足部管の下側の穴からスワブを掃除棒の木製部分で押し込んで行く。布の部分がほぼ押し込まれたら、掃除棒でスワブを押し上げる
布の先端がブロックに触れたら(写真2)の状態、掃除棒を引き抜く。
ウインドウエイに強く息を吹き込み中の水分を吹き飛ばす。
スワブの紐を静かに引き出すと管内の水分が除去され完了
 
写真3 ゼムクリップをカットした金具 キリで穴をあけ糸で巻く

クラリネットの新進気鋭氏ほどスマートではないが、楽器をバラさなくても良いので位置関係の再調整が不要になる。かなり完璧に水分除去が出来るので、楽器の鳴りも良い。

演奏会を終わって

第4回細岡ゆき門下生 リコーダー演奏会
2016年12月4日(日) 近江楽堂
チェンバロ 矢野 薫
ヴィオラ・ダ・ガンバ  なかやま はるみ
演奏曲
G.P.Telemann. Sonate f-moll TWV41:f1
   Triste Allegro Andante Vivace

もう2週間以上も過ぎたが体調のバランスがくるったのか、まとめるのに時間がかかってしまった。
演奏会当日はバタバタと過ぎ、必死で演奏したけれども、やはりダメなところはダメ、セロ弾きのゴーシュにはなれなかった。

リコーダーを演奏する限り、いつかはテレマンをとの思いはあったが、この曲 ソナタヘ短調TWV41:f1は私にとって難しすぎたかもしれない。五線の頭にフラットが4つも並んでいてさらに加線もふんだんに使用されているから、加線を数え運指表で確認しながら進むハメになった。半音階などの基礎がしっかり身についていれば、これほど苦労することはなかったと思うが、とにかく遮二無二やるしかない。一つのフレーズを何回か練習すると”指”が覚えてくれるのか、なんとかその部分を演奏できるのだ、しかし完全に理解できているわけではないから、たとえば途中から演奏しようとすると悩んでしまって動けない。
それを補うためプロの演奏を徹底的に聴くことにした。通勤の往復は2時間はあるのでiPodに入れてある録音を連続して聴いた。
iPodには聴いた回数を記録している機能があるので調べてみると300回を超えていたからそれなりにスゴイと思うが、半分は寝ていたかもしれない。
あと練習の場所と時間の確保が大変だった。この時期はどうしても他の演奏会と競合する。土日などは他の演奏会やそのための練習などで埋まってしまう。HRCなど合間にヒイヒイ練習している私のために、合奏練習を早めに終了させ場所と時間を提供してくれたことが何回かあったがこれは多いに助かった。多摩川の河原はこの時期暗くなるのが早いしリコーダー向きではない(最近事件があったが、そこは私が練習している場所)

本番演奏中は”滑ったり転んだり”だったが、一瞬冷静になれる場所もあり、チェンバロとガンバがしっかり支えたり手を差し伸べてくれたりするのが実感できた。さすがプロ!

楽器への工夫
指掛け
私はモダンピッチの楽器には自作の指掛けを取り付けている。しかし今回使用した楽器には使っていない。伝統的なバロックピッチの楽器であるし、カエデ材に塗装仕上げであることも取り付けを躊躇させていたのだ。しかし右手がらみの細かい動きにモタつきがある。子細に観察してみると右手親指の位置が定まっていないため楽器の支えが不安定で、それを補うためか右手” 人差し指” ”中指”の腹でも楽器を支えていることがわかった。
小型の指掛けを作り、両面テープで固定した。それなりの効果は期待できる。アマチュアの場合許される範囲と思う。
楽器の結露対策
 気温が下がってくると管内の結露が多くなる。その都度楽器をバラして水分を拭き取るのは音程や取り付け角度が狂ったりして手間がかかる。
掃除棒やスワブ(拭き取り布)の材質やサイズを工夫して、組み立てたまま拭き取ることが可能となった。

演奏が終わりとりあえずほっとして考えてみると、ソナタなどの演奏は登山に似ていると思った。プロの奏者達は多少のガレ場でも楽しそうにスイスイ超えて行ってしまう。私はチェンバロとガンバの頼もしいガイドが同行しているのに”滑ったり転んだり”悪戦苦闘の連続なので、「素晴らしい展望ですよ」、「きれいな花がありますよ」など言われても見る余裕なし、それに山の規模は高尾山、大山ではなくて北岳クラスだったと思う。

男性の参加
Face Book に演奏会の集合写真が載ったが、「男性が少ない」との書き込みがあった。正にその通りで、Yさんと私だけなのであった。門下生が圧倒的に女性だけというわけではない。現に私の所属しているRicco Suonoではほぼ半数ずつだと思う。
私の場合ドン・キホーテ的で恥もタップリあったが得たものも多かった。
男性の場合少しばかりの自信と”自己防衛本能”のようなものが強すぎるのかもしれない。

これは”昼下がりの演奏会”のような演奏を行ってもお客さんはほとんど女性ばかり。男性はほんの一握り、同じような傾向だ。初めて聴くリコーダー合奏にも「アラいいわね」などと興味を示す女性も多いのに、男性は「なんだカラオケじゃないのか」と帰ってしまう。年をとるほど柔軟性が不足して頑固になるように思う。自分自身も含めて心しなければならない。

11/24/2016

テレマン リコーダーソナタ ヘ短調 (TWV41:f1)


テレマンのリコーダーソナタ ヘ短調 (TWV41:f1) を初めて聴いたのはかなり昔のことではっきりしない、確かブリュッヘンの演奏だったような気がする。出だしが雄大でなかなかカッコいい曲と思った。ヤマハの楽譜売り場で偶然この曲を見つけた。 リコーダーと通奏低音のための「4つのソナタ 」ベーレンライター版 だった。演奏することなど考えてもいない、楽譜を見たいだけ、でも購入したのだ。当時はHRCを立ち上げて間もない頃でソナタの演奏なんて実力も環境もなかった。せめてサワリだけでもと思ったが、フラットが4つも並んでいるので恐れをなして、本棚行きとなってしまった。

その後渡辺清美先生のところで、チェンバロやガンバ付きの演奏会にHRCの3兄弟を加えてもらい、(刺身のツマ?)ソナタを演奏する機会ができたのだ。その後細岡師匠も独奏会を始められたのでそちらに参加、シックハルトやヴァルサンティの曲を楽章を落としたりして(表向きは時間の都合、実は指が回らない)演奏させてもらった。
今回も近江楽堂での演奏会が決まり曲目を聞かれた時に、いつかはテレマンをやりたいとの思いがあったので、この曲名を伝えたのだった。「いざとなったらできない楽章を落とせばいい」・・・

リコーダーでは有名な曲らしく多くの奏者が演奏している、私はPamera Thorby などをよく聴く。
 YouTubeで演奏例などを探しているうちに珍しい録音を見つけた。ファゴットでの演奏だ。これが実に名演で惚れ惚れしてしまう。リコーダーの演奏とは趣がちょっと違うけれども表情豊かで気持ちがよい。よほどの名手の演奏だろう。リコーダのお株を取られると心配になるほどだ。・・・ 最近になって楽譜を調べようとペトルッチの楽譜ダウンロードサイトで探すとテレマンのリコーダーソナタの中にこの曲が見つからない。??? さらに捜索範囲を広げて探したらファゴットのソナタで TWV41:f1 を発見した。このサイトではアレンジ譜も載せるからそいう場合もあり得ると自分を納得させるも、なにかスッキリしない。
何か手がかりはないかともう一度ベーレンライターの原譜に戻ってみる。序文がドイツ語なので無視していたのだが、よく見ると半分は英語なのだ。・・テレマンは2週間ごとに音楽レッスンのための刊行物シリーズ "Der getreue Musikmeister"「忠実な音楽の師」を発刊していた。(事業家としての才能も優れていたらしい)その中にいろいろな楽器のための楽譜が載っていて、もちろんリコーダーの楽譜もあるのだがこの曲(TWV41:f1)は低音部記号で書かれファゴットのソナタとして考えられている。しかし最終楽章でテレマンが「このソロはリコーダーで演奏することができる」と書いてあるのだそうだ。・・・・納得・・・曲の出だしの雄大さはファゴットに由来するのだ。テレマンはファゴットのために作曲したのだろう。しかし当時でもファゴットよりリコーダー奏者が圧倒的に多かった。そこで彼は営業上の配慮から「リコーダーでも演奏できる」と書き加えたと想像する。

曲の出自は解ったけれども演奏が進歩したわけではない。演奏が難しい場所がいくつかあり未だ克服できない。テンポを落としてもたもたすると制限時間を超過してしまう

実は演奏日が迫っていて、12月4日 オペラシティ近江楽堂 通奏低音を演奏して下さるチェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバの奏者にはすでに楽譜を送ってある。
楽章を省略する案も検討してみたがこれが意外と難しいのだ、第1楽章の"Triste"は短いけれどもこのソナタの看板みたいなもので下ろすことはできない。第2楽章の"Allegro"は長大でおまけにダカーポまである。しかしこの曲の中核をなす部分で省けない。第3楽章"Andante"と第四楽章"Vivace"は短いのだがペアになっているような感じでどちらか一方だけでも外すとバランスが悪くなる。
結局どの楽章も省略できないかも知れない。昨夜はHRCの夜練習だったのだが、私がソナタをヒイヒイ練習しているのを見て、練習を切り上げて会場を私の為に空けてくれた。ありがたいことだ。

こうなるとセロ弾きのゴーシュの心境だが、結果は彼と同じとはいかないだろう。

11/23/2016

バスリコーダー専用ストラップ


以前EWI の為のストラップを作るblogを書いた。バスリコーダーにも欲しかったが、私の首は一つしか無いわけで、EWIのストラップに延長リードを取り付けて使用していた。しかし最近バスリコーダーを使用する機会も多くなったので、専用のストラップを作ることにした。
前回も使用したBIRD STRAPの方式はデザイン使用感共に優れているので、今回もBIRD STRAP用のVプレートを使用。
首に当たるパッドの部分は、前回は合成皮革のパッドを流用したが、材料が古くかつ力が加わったためだろう表皮と本体部分が剥がれてしまった。この部分丈夫な皮革とハトメ加工が必要になる、しかし皮革は比較的高価なため端切れ品などを購入することになるが、厚さや強度が一定せず、それに見合うサイズのハトメを加工するのは敷居が高い。そのため今回はストラップの構造を変更してみた。

変更点
楽器の重量をロープだけではなく、皮パッドにも受け持たせている。そのため皮パッドは引っ張り強度も高くなくてはならず、ロープとの接続点(2ヶ所)も不安の種となる。
それならば構造を少し変更して皮パッドに力がかからぬ様、楽器の重量を支えるのはロープに任せ、皮パッドは首へのクッションのみ受け持たせる。
構造としては皮パッドに結びつけていた部分のロープをさらに15cmほど延長し、左右のロープどうしで結ぶ、本結びなどが良いと思う。皮パッドは孔を何個か開けてロープを通しておけば楽器の重量を支える張力はかからないが、クッションの役割は果たすことができる。今回は皮を使用せず30mm幅のナイロンベルトを使用してみた。バスリコーダーの重量はそれほど大きくないので、これでも十分使用に耐え費用も安価である。
ナイロンベルトの加工写真を示すが、サイズなどは概寸であり厳密な数値ではない、皮革を使用する場合は両端ハトメ仕上げも可能だが、今回の構造も悪くないと思う。安全性は高まり、ロープ全長の調整も楽である。

ロープの長さ

ストラップは伸縮できるが、適正位置にVプレートが来るようにあらかじめロープの長さを決めておく必要がある。参考までに今回作成したストラップのサイズを示す

ナイロンベルトの先端から楽器取り付用のナスカンの先端まで300mm、Vプレートの位置をパッドの先端から50mmとする。長さを計ることが可能な部位はA部とB部、
A部に必要な長さは190mm×4=760mm
B部に必要な長さは 50mm×2=100mm   合計 860mm
実は今回使用したロープの全長が1500mmであることは確認してあるので、
両者の差  1500mm-860mm=640mm  
この640mmの内訳は(Vプレート内を横に通している部分、パッドに沿わせている部分、結び目部分、折り曲げなどによるロス部分)などであり、同寸法のVプレート、パッドを使う限り固定で変化がない。したがって必要なロープの長さを計算することができる。ロープの全長を L として、A部、B部の長さを決めれば下記で求められる。
L=A×4+B×2+640mm 

ナイロンベルトのパッド
写真にて概寸を示す。ベルトを所定の長さにカットしたら両端の角を丸く切断する、そのままだと繊維がどんどん解けてくるので、ガスコンロなどの炎にサッと通す。繊維の先端がわずかに溶けて溶着する。溶けすぎると固まって硬くなってしまうのであくまでサッと。
孔は熱した千枚通しの様なもので、3.5φ程度の穴を溶かして開ける

Vプレートその他
厚いアルミ板を加工して自作も可能だが、手間を考えれば部品として購入がおすすめ。
新大久保のクロサワ楽器で2100円で入手した。色もいろいろ選べる。今回は全体を細く作った新型があったのでそれを使用してみた。孔位置は同じなので機能上は変化ないが見た目がかなりスマートで洗練されている。3mmロープ、30mm巾ナイロンベルト、小型ナスカンは東急ハンズ  ロープは70円/m ,ナイロンベルトは230円/m程度入手できる。小型ナスカンは100円ショップの携帯ストラップに使用されていたりするので探してみる価値はある。 

Vプレートだけではなく、カラフルなロープも市販されているので、いろいろ工夫してみることもできる。よく考えてみるとリコーダーでストラップが楽しめるのはバスリコーダーだけなのだ。

楽器に付属してきたストラップを義務的に使っているのはダサいですよ。

10/08/2016

Vivaldi L'estro Armonico (調和の霊感)

前日の練習風景

学生時代マンドリンクラブに所属していた。9月にクラブのOBOG会があり、そこでの演奏を依頼されたので同期の有志で演奏することになった。40ウン年前の卒業だからもう半世紀に近いが、卒業後も演奏活動を続けている仲間が多いのだ。しかし練習するにも、それぞれの演奏活動でいそがしく、遠方に住んでいる仲間もいるので、練習のために集まれるのは本番前日の一回ぐらいしか出来ない。選曲は私に任されたので、 Vivaldi  L'estro Armonico (調和の霊感)No.6 第一楽章  
有名なヴァイオリン協奏曲だが、ヴァイオリンのパートをリコーダー2本で分担して演奏するアレンジがあったので使用させてもらった( 積志リコーダークラブ編曲)リコーダー1本だとソロ ヴァイオリンと第一ヴァイオリンを兼ねることになり、とんでもなく忙しいが、2本で分担するとかなり楽になる。ただそれだと solo と tuttiの区別がつきにくく、ヴィヴァルディの協奏曲らしくないので、マンドリンに加わってもらいtutti を形成する。チェロはチェロの楽譜そのままだが、本来はコントラバスもあるので、奏者の判断で部分的に1オクターブ下げた演奏もアリ。


練習の足しになるかと、私のリコーダー演奏にメトロノームを加えた音源を作り、MP3でみんなに送付したけれど再生できたのは1人のみ、(全員工学系なので問題なしと考えた私が甘かった。年齢を考えるべきだった。)
しかし心配した前日練習も特に問題なく仕上がり、響の良い部屋のせいか、かなりうまい演奏に聞こえる。多分皆さん練習したのだろう。
ヴィヴァルディの指揮する「ピエタの娘たち」は、かなりの速さで見事に演奏したと思われるが、我々はちょっとゆっくり、でも名曲だから十分に楽しめる。

本番前のリハーサルでは私が珍しく「あがって」しまい、早いパッセージで指がもつれたり、息が苦しくなったりして心配したが、本番では少し落ち着きを取り戻し、なんとか演奏できた。お世辞が混じるにしても「演奏良かったよ」と声をかけて下さる方が何人かいたし、演奏者達も「楽しく演奏できた」と言ってくれたのでとりあえず成功かな。
あとで録音も聴けたけれどちょっと貧相な音でがっかり、でも録音方法を工夫すればもう少しマシな演奏になるはず。

今回は選曲が良かったと思われる「ヴィヴァルディ様様」だ。

Vivaldi  L'estro Armonico  ル エストロ・アルモニコ(調和の霊感)
ピエタ慈善院の合奏団を指導しながら試行錯誤を重ねたヴィヴァルディがその結果をヨーロッパ全体に問うた最初のコンチェルト集で、大きな反響を呼び、バッハも編曲して研究している

<ピエタ慈善院の合奏団とヴィヴァルディの関係を引用しておきます>
「多少とも新鮮な感覚が鈍り、すぐにあら探しをする職業音楽家ではなく、熱心さと好奇心に富んだ若い生徒たちが主体となっているこの音楽家の集団が、ヴィヴァルディの指導に対して、いかに敏感な反応を示したかは想像に難くないが、この若い敏感な感受性を持つ音楽家たちに、ヴィヴァルディの人間性は完全な影響力を持っていたのである。この点においては、ケーテンにおける大バッハや、エステルハーツィーにおけるハイドンよりも彼はずっと恵まれていた。彼は時間の制限や、頑固な演奏家や、”演奏家労働組合”の厳格な規則にふりまわされずに、オーケストラの扱い方や、合奏上の問題などについて経験を積み、ゆっくり研究を進めることができたのである。」
【マルク・パンシェルル著 ヴィヴァルディ 生涯と作品 早川正昭/桂誠 音楽の友社】


7/31/2016

中国でヴァイオリンを演奏する羽目になり大恥



前回のブログ「G線上のアリア」でヴァイオリンのことを書いたが、私は中国でヴァイオリンで大恥をかいたことがある。

私の現役時代の後半は中国と日本を頻繁に行き来していたことがあった。そんな時代の失敗談である。
私自身も中国と関係を持ち始めた初期の頃で、会話もニイハオ(今日は)、シエシェ(ありがとう)ハオツー(おいしい)程度しかできない。職場も自前の工場ではなく、5階建てのオンボロビルの一階と4階を借りて操業していた。場所は深圳と言っても特別区ではなく、宝安(バオアン)地区、古い町並みは残っているがホテルやデパートもある。滞在期間は毎回1〜2週間だったが、土日の休日もあり、そんな時はマクドナルドを食べに行ったりしたものだ。本屋も見つけ何回か店に通った。もちろん本は読めないのだが、興味深かったので。珍しいと思ったのは床に座って本を読んでいる人が、何人かいたこと。床はコンクリートだし、外から土足で入ってくるわけで、それほど綺麗にしてあるわけでもない。椅子も無いし、ゴザもない、そんな場所に当然な様子で”あぐら”をかいて読んでいるのをみて、日本では”立ち読み”だけれどこちらでは”座り読み”なんだ! と妙に感動したことがある。もっともその後職場が引っ越して珠海になった時、洪北(ゴンベイ)の地下にある大きな書店では床に座る人は見かけなかったから、例外的な特殊ケースだったのかもしれない。

話が横にそれてしまった、その本屋の隣が楽器屋だったのだ。楽器屋は探していたのだが、なかなか見つからない、灯台下暗しである。間口が狭く地味だったので見つけにくかったのかもしれない。入ってみると奥は広くピアノやオルガンも置いてある、壁にヴァイオリンを下げたコーナーもあった。珍しいのでそばに寄って見る。高級感はなし、どれも中国の職人さんが作ったものだろう。幾つか変わった形の楽器があった。胴の肩がガンバのように”なで肩”なのだ。コントラバスの”なで肩”を思い出してもよい。しかし弦は4本だしフィレットはない。とりあえずヴァイオリンなのだ。胴体の裏板はヴァイオリンのような膨らみがなく、平らな一枚板、それに肖像画が刻印してあるものまである。それにその肖像は見覚えがあるような気がする。指先で触ってほり具合を確かめていると「ベードーフエン」と後ろから声がかかった。なるほどベートーヴェンなら 見覚えがあるのももっともだ。
しかしガンバ風ヴァイオリンでベートーヴェンの肖像とは実にちぐはぐ。

振り向くと店員が立っていた。ヴァイオリンの弓を持ってきてくれたのだ。ニコニコしながら手渡してくれた。手渡し方が慇懃すぎる気がして、ちょっと気になったが、音を出してもよいということだ。試してみよう。一番ヴァイオリンぽい楽器を取り上げ、弦を弾いてみると案の定音程はバラバラ、近くにピアノがないので、A線を適当に合わせた。後はAとE、AとD、DとG線を重音で合わせた。ヴァイオリンニスト達がよくやる方法だが、その時はそれしか方法が無かったので、見よう見まねでやっただけ。
とりあえず調弦終りということで後ろに振り向きかけたら、突然パチパチと拍手が起こった。見ると5〜6人の店員とかお客らしい人達がこちらに向かって拍手をしている。また間の悪いことに店内の床に段差があり、私の立っている場所は階段で2段ほど高くなっているので、小さな舞台に上がっているような感じなのだ。
「違う違う!音を出してみたいだけだ」と言いたいが、言葉がわからん!、お客たちは期待感を持った目で見上げている。弓を持ってきてくれた店員を探すも見つからない。エイ!音階でも鳴らしてみよう。下手さがわかって許してもらえるだろう。

ぎこちなく音階を鳴らしてみた。駒の高さと指板の位置がおかしいので音が出しずらいのだ。楽器を横の台の上に置こうとすると、怒鳴り声が聞こえる。よくわからないが「途中で止めるな!」と言っているようだ。そしてまた拍手。ここまできたらもう仕方がない、とにかく弾いてみよう。バッハのメヌエット、半世紀ほど前に練習した曲だが、なんとか弾けるのが不思議、しかし音程などフラフラ、音色うんぬんなどおこがましい、ギーギギギギ  ガーガーガー  ビービビビビ ズーズーズー   「こりゃダメだ思ったよりヒドイ」下手は当然として楽器もひどいのだ。しかし言い訳するにも中国語の壁、これはもう脱出するしかない。楽器を横の台に置き、出口へ向かって一目散、お客さんたちは呆気にとられているようだが、そんなのかまっているヒマはない、脱出成功、そのまま20メートルほど先の交差点付近で止まった。

「誰も追いかけてこない」そんなの当たり前! 汗が噴き出してくる。初夏の宝安は気温も湿度も高いのだ。その店へはその後半年ぐらいは恥ずかしくて行くことができなかった。中国語さえできればこんな事にはならなかっただろう。今想い出すだけでも顔が赤くなってしまう。
宝安の商店街

7/21/2016

G線上のアリア

G線上のアリア
数年前HRCでもこの曲を演奏したことがある。
周りの部員たちは平気で「G線上のアリア」と呼んでいた、それも「ジー線上の・・・」と
私はこれには納得できなくって、
バッハは「G線上のアリア」など作曲していない!管弦楽組曲第3番のエアだ!などと踏ん張るのだが多勢に無勢、簡単に押し切られてしまうのだった。
これは音楽後進国の日本だけの現象で、本場ヨーロッパではちゃんとした名前で呼んでいるさ。と思っていた。 
アリアは言語によって多少変化する アリア(伊)、エア、アリア(英) エール(仏) アリエ(独) (歌 旋律の意味) まあこれはよしとしよう。不満もあるけれど。
問題は「G線上・・」である
バッハ管弦楽組曲第3番 Air の冒頭部分 <楽譜1>

なぜそのような呼び方が生まれたのか。すでにご存知と思いますが、まとめてみます。
バッハはライプツィッヒの聖トマス教会のカントールという要職に就く前は、ケーテン公に仕えていた。
そこには小さいながらも有能なオーケストラがあり、バッハはそれに合わせて色々な器楽曲を作曲した。ブランデンブルグ協奏曲や管弦楽組曲のシリーズなど。管弦楽組曲第3番はオーボエやトランペットを混じえたオーケストラが、賑々しく序曲を演奏した後、エア、ガヴォット、ブーレ、ジーグなどが演奏される。ところがこの「エア」が絶品で、最初の1小節で低音の弦楽器達が8分音符でゆっくり8つの音を刻み、ヴァイオリンが"Fis"の音を8拍分伸ばしているだけでもうこの曲の魅力に引き込まれてしまう。<楽譜1>参照

バッハもこの曲の優秀さは十分自信があったのだろう。騒々しい序曲の直後にわざと配置して弦楽合奏だけで美しさを際立たせている。見事な演出と言える。
G線上のアリア 冒頭部分 <楽譜2>

ドイツのヴァイオリンニスト ヴィルヘルミはこの「エア」の存在は知っていたが、管弦楽組曲自体がほとんど演奏される機会はなかったのだ。彼はこの曲をピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏曲に編曲することにした。原曲では弦楽合奏なので中低音はヴィオラやチェロに任せ、ヴァイオリンは比較的高音部を担当している。独奏曲に編曲するにあたり、ヴァイオリンの中低音の魅力を引き出すべく、ニ長調からハ長調に変更した、一音だけ下げたのではなく、ドーンと1オクターブと1音下げたのだ。これ以上は下げられない限界値だ。結果この曲の最低音がヴァイオリンの最低音G線の開放音と一致した。これで独奏ヴァイオリンの中低音の魅力も演出できる。
この音域の引き下げは副産物も生み出した。曲の最低音を弦の最低音と一致させた事により、曲の最高音(B)もそれほど無理することもなく同一の弦で鳴らすことができる。つまりG線だけでこの曲を演奏することが可能となったのだ。「G線上のアリア」の誕生
掲載の<楽譜2>でもスタートの音はG線を一番の指(人差し指)でEの音を出す指定がある。それ以外の音にも適時運指が指定してあり。指示通りに演奏すれば、G線だけで演奏可能となる。
(もちろん他の弦を併用する演奏者も有ると思う)
ここではっきりしておかなければいけない点は、両者は全く別の曲になったという事。

バッハの原曲は多声部の弦楽合奏、  トップのヴァイオリンⅠは目立つかもしれないが、他のパートだってそれぞれ重要な動きをしつつ、全体として繊細なあや織のように進行してゆく。ヴイルへルミの編曲では、ヴァイオリンの独奏曲だからヴァイオリンⅠの旋律線は受け継がれているが、1オクターブ以上音が下げられ、音色がすっかり変わると同時に、演奏者の個性が色濃く反映され、ヴァイオリンⅠ以外の他のパートは、ピアノパートに取り込まれてはいるが、生き生きと動き回ることはなく、伴奏の一部として背景に押しやられているのだ。

素晴らしい曲にもかかわらず、管弦楽組曲として演奏される機会は滅多になかったが、ヴィルヘルミの編曲により単独で演奏される機会が増えた。当初は「G線上のアリア」で問題なかったが、次第に他の楽器での演奏も増え「G線上の・・」も意味なく受け継がれてしまった。
 曲名が大ヒットしたのだ。
以来 ピアノで演奏しても「G線上のアリア」と呼ぶようになった。
他の曲では「愛のメヌエット」、「恋のコンチェルト」・・のような愛称も使われているからその使い方に準ずるとも言えるが、私的には「バッハのアリア」なんていかがでしょう。もう手遅れだけれども。

では海外ではどのように呼んでいるのだろうYouTube で調べてみた。
Air on G string 
なんだ!「G 線上の・・・」じゃないか。「G線上のエア」日本だけの現象ではなかったのだ。
YouTube で"Air on G string" を検索してみると100件以上ヒットする。
しかしその中で本物のAir on G stringと呼べるものは数件しかない。
ヴァイオリン独奏で最低音G線の開放を使用する演奏は現役奏者の動画では2件、伝説上の名人がモノクロスチール写真とパチパチSP音で登場する「化石演奏」が2件ほど、かなり苦労して探してこれだけ、しかしこの4曲だけは『G線上のアリア」と呼んでも誰も文句はない。
ヴァイオリンの独奏でも最近の演奏は高い音(多分原曲のニ長調)で演奏していることがほとんどで、音の好みが変化してきた結果と思うが、多分G線は一度も使わないのに「G線上のアリア」詐欺じゃあないの。
ピアノ、トランペット、フルート、オルガンなどG線など関係ないのに「G線上の・・」

ヴァイオリンの独奏やピアノ演奏では「G線上の・・・」でもとりあえず我慢しよう。

一番ひどいのが管弦楽組曲第3番を紹介する目的で、代表して「エア」の部分だけ取り上げる場合まで、「G線上の・・・」と紹介している。バッハが聞いたら怒りますよ。


ここに至れば
私なんぞが流れに逆らってもどうしようもない。「ジー線上のアリア」でいきましょう。

上記で紹介した中でチョン・キョンファの演奏は、まさに正統派「G線上のアリア」と言える。ヴァイオリンの低い音を鳴らしきるためにいろいろ工夫をしている。
本当にG線だけなのか、他の線も併用しているのか確認したくて動画と楽譜の運指を比べてみたのだ。細部での差異はあったが、それほど問題ではない、驚いたのは最低音のG線を鳴らす時だ、単純に開放されたG線を弓で弾けば良いのに、隣のD線を押さえてヴィブラートをかけているように見える。初めは意味が分からなくて困惑したが、わかった! D線で1オクターブ上のGを押さえているのだ。
最低音のGが鳴れば、それに隣接しているD線のGも共鳴する。音は両者の合成音として放射されるわけだが、彼女はそのD線のGに強烈にヴィブラートをかけて全体の音色をコントロールしていたのだ。
ヴァイオリン奏者にとっては当たり前のテクニックかも知れないが、私にとっては驚きの発見でした。




番外編  
中国 珠海市に仕事で滞在していた時のこと、休日などはCD屋を回ったりしたものだ。
屋台のようなCD屋ならともかく、きちんとした店でも半分以上は海賊版のような気がする。
麗々しく(版権所有)などと書いた金色のラベルがわざわざ貼って



あるのもかえって怪しい。

そんな店でリコーダーのようなジャケットのCDをみつけた、やはり海賊版?、リコーダーとキーボードで演奏したHI FI RECORDERS「牧童笛」と称するアルバムなのだ。CDジャケットを確認してみた。色々ポピュラーな曲が入っている。見ていると日本語のカタカナは非常に便利な道具だ、15.MY WAY はマイ ウエイ とすれば何とかなるが、中国語では強引に翻訳するしかない、「我的道路」(私の道路)ちょっと意味がズレている?

この中に「G線上の・・・」がある「19. Air(J.S.Bach) 空気」   "Air"はわかる、むしろ正しい。原盤にはそのように表示してあったのだろう。"on G string" は省いてある。バッハの指示通りだ。しかし中国語への翻訳は”空気”??? これでは意味不明、直訳すぎる!全く音楽を解さない海賊がやったのだろう。

7/09/2016

第38回昼下がりのコンサート終了

昼下がりのコンサート終了 6月26日 
会場はいつもの「ポーポーの木」
ぼんやりしていたら1週間以上も過ぎてしまった。


管弦楽組曲第2番 BWV1067より・・・・J.S.バッハ 
(ロンド ブーレ ポロネーズ バディネリ)
「調和の霊感」Op.3 No.6 (RV356)・・ A.ヴィヴァルディ
愛の挨拶・・・・ E. エルガー
チュウチュウトレイン・・・  J.ケアリー
雨に歌えば・・・N.H.ブラウン
雨のブルース・・・服部良一
空よ・・・・難波寛臣
学生時代・・・・平岡精二
雨のメドレー・・・編曲 高梨征治 
(雨降りお月さん、雨上がり、雨降りくまの子、雨降り、夏は来ぬ) 

バッハ 管弦楽組曲第2番 
(ロンド ブーレ ポロネーズ バディネリ)
バッハ   ケーテン時代の作と思われるが、よほど上手いフルートトラベルソの奏者がいたのでしょうね。
これをリコーダー四重奏で演奏した。編曲は・・・北御門氏
これはトップパートを各部員入れ替えて演奏してみた。どの曲を選ぶかは「早い者勝ち」笑!
普段あまりやったことがないパートもおもしろいのではないか。
トップパートの演奏者が替わるので気がついたのだが、似たような曲が並んでいると思っていたけれども、そんなことはない、
各自苦労しながら演奏しているのを聴いていると、それぞれの曲の特徴というかクセが見えて来た。どの曲も個性的ですね。全体としてはまずまずの仕上がりだったと思う。
私はバディネリの担当、例の♫「あっちもこっちも勝手でしょ・・」わかりますか?
ちょっと気負いすぎて高音が出なかった箇所があった。もう少し速度を落として、曲の細かいニュアンスもしっかり演奏できれば、無理に速度を上げる必要はないのだけれど、そこが難しいところ。

ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲「調和の霊感」第一楽章  ・・・L'Estro Armonico Op.3 No.6 (RV356)
昔と言っても半世紀以上前のことだが、この曲を練習したことがある。小学校4〜5年だった。NHKラジオで「声くらべ腕くらべ子供音楽会」という番組があり、ヴァイオリンで出場する子供はほとんどこの曲を演奏していた。ヴィヴァルディの曲では「四季」も有名だが、この曲も題名こそ取っ付きにくいが、演奏を聴けばすぐに、アッあの曲だ!とわかる。

積志リコーダークラブの公開楽譜の中にこの曲を見つけた。Soloパートは難しさを分散させるためアルト2本で演奏する編曲だ。
途中も一部省略してあったり、音の高さも考慮してあるので、少し練習すれば演奏できそうだ。さすが積志! 使わせてもらいました。

細かい音の動きはヴァイオリン特有の動きであることがよく分かる。リコーダーでは突っ走るような演奏ではなく、ちょっと落ち着いた演奏の予定だったが、本番では少し緊張したせいか速度が上がってしまった。臨時記号を出し損ねたり、16分音符できざみながら上がって行く箇所で指がもつれたり、でも演奏は楽しく達成感がありました。

愛の挨拶 エルガー
この楽譜も積志リコーダークラブの楽譜を使用させてもらいました。
活躍する場がトップパートだけではなく、他のパートにも振ってある。演奏していて充実感のある音で満足、お客さんの受けも良かった。

リハーサル中 手前のトラベルソは実際には使用していない

雨に歌えば、雨のブルース クラリネット ギター伴奏
Tさんのクラリネットは迫力十分。
ご本人の話では車の中に楽器を一晩放置したとかで今回楽器の鳴りが少し悪かったそうだが、聴いていて全くわからなかった。
長年プロとしてこの楽器に関わっているから、多少の問題は乗り越えてしまうのだろう。
クラリネットはリコーダーよりも圧倒的に個性が強い。 当然拍手喝采

リコーダー合奏に戻り
「学生時代」 「空よ」 「童謡メドレー」
いづれもTさんの編曲、私はアルトでトップパートを演奏したが、歌謡曲をメリハリをつけて演奏するのはかなり難しい。
「夏はきぬ」を会場全体で歌って終了

今回の演奏は充実感は充分だったが、疲れました。


次回は9月25日を予定している。

6/04/2016

ドルニエ228

稲城市に住んでいる。多摩川を挟んで調布市があり、休日などは調布飛行場を離着陸するのであろう小型のプロペラ機をよく見かける。そんな中で双発のプロペラ機が飛行しているのがちょっと気になっていた。
小型の単発機は何種類か飛行しているのだろうが、機体の種類を見分けるほど気にはしていない。
しかし、双発のプロペラ機に注目していたのは訳があった。ものすごくダサい機体だったから。
なぜダサいか、それは主翼の形にあった。
Dornier 228

これは私のかってな思い込みだろうが、空気中にピシリと伸ばした主翼は大空を飛びたいとの機体の意思そのものであると思うのだ。設計者も当然その事を考慮して設計するはず。
ところがその双発機は申し訳なさそうに貧相な翼を左右に伸ばしているのだ。必要以上に自分を卑下しオドオド生きている人物に似ている。
しかしそんな貧相な外見にも関わらず、しょっちゅう見かけるのは、コストパフォーマンスなどそれなりに優れた点もあるのだろう・・・などと考えていた。
機種名を知りたいとの思いはあったが、かっこいいならともかく貧相では、わざわざ調べる気も起こらない。
ところがひと月ほど前、新聞を読んでいたら「双発機エンジン不調で引き返す、調布飛行場」のような小さな見出しを見つけた。通常なら見過ごす記事だが、例の双発機だろうとピーンと感じたのだ。記事では、調布飛行場を離陸した双発機が途中で片側のエンジン不具合の警告ランプが点灯したので、引き返した、乗客乗員は無事であるとのこと。機種名を読んで目が釘付けになった。ドルニエ228  なに! ドルニエ! 
ドルニエ社と言えば、かのツエッペリン飛行船の設計にも関わったドイツの老舗だ。そんな名称がまだ生きていたとは!
ドルニエ社は航空機史上空前絶後の珍機種を作っているのだ。

巨大飛行艇 ドルニエ  DoX  (Dornier DoX)
飛行艇と言うより、客船に強引に翼を取り付け、強力なエンジンを乗せられるだけ乗せたように見える(12基)。当時のエンジンはそれほどパワーが無くかつ不安定であり、機体の材料にしても現在のように軽くて強い材料が揃っていたわけではない。ダイニングルームや寝室付の豪華飛行艇などと言っても結局重量オーバーで、高度100m程度(あるいはそれ以下)しか上昇できなかったらしい。初飛行は1929年10月となっている。169人を乗せて試験飛行した記録があり、掲載の写真はその時の記念写真と思われるが、正装した紳士淑女たちが写っている。こんな危なっかしい機体によく乗る気になったものだとその勇気に感心するしかない。またアメリカへの飛行も試みられ、途中故障故障の連続で、結局到着まで9ヶ月を要したとのこと。
3機製作され2機はイタリアへ納品されたそうだが、こんな機体イタリアでも扱いかねたのではないだろうか、特に記録は残っていないらしい。
Dornier DoX


豪華とスピードを競っていた旅客船のアメリカ行路でのタイタニック号の事故(1912)から10年以上が経過し
ツエッペリン飛行船での行路も開設されて、豪華さは飛行船でも引き継がれていた。
そこへ割って入った航空機ドルニエDoX 豪華さは必然と考えてこのような仕様になったのだろう。巨大飛行艇の誕生、そこがボタンの掛け違いの始まり、本来なら豪華は捨てて簡素とし、スピードと安全を目指すべきだったのだ。
飛行船は豪華ヒンデンブルグ号が爆発炎上する事故(1937)以来運行は中止された。

その後ドルニエ社は競争の激しいこの世界にあって合併や吸収の洗礼を受けるも老舗ドルニエの名前だけはしぶとく生き残ってきたが、ついに倒産、会社名としては消えてしまったが、ドルニエ228の性能を惜しむ声に押されてRUAGエアロスペース社による生産が復活した。
この機体の最大の売りは短距離での離着陸が可能であることであり、それは特許の層流翼(TNT翼)に負っているとのことだ。

休日にベランダで洗濯物を干していたら双発機の機影が見えた。ドルニエ228だ! 新島ー調布の往復に使われているらしい。例の主翼だがドルニエ社の伝統と技術の結晶で「あれが層流翼なんだ」と思えば感慨も湧いてくるし、何と言っても巨人機ドルニエDoXの末裔なのだ。・・・でもやっぱりダサイなあ。

追加、リコーダー吹きとしてはこのまま話を終るわけにはいかない、
ドルニエDoX の初飛行(1929)の3年ほど前、
ドイツ人の弦楽器製作者ペーター・ハルランがイギリスのアーノルド・ドルメッチのリコーダーを見て、独自の運指(ドイツ式)で大量生産を始めたのが1926年、

その大衆性がナチスの注目することとなり多くの行進曲がヒトラーユーゲント鼓笛隊の為編曲された。ベルリンオリンピック(1936)ではカールオルフ作曲のリコーダーと打楽器による演奏でマスゲームが繰り広げられた。・・・この件に関しては別項で書く予定です。

5/17/2016

ケーナの音,色っぽい

先日はフォルクローレの練習日、月一回のペ-スなのでなかなか上達しないのだ。

今回の練習曲はCunumicita 「クヌミシ-タ」とLlaqui Runa「悲しい人」、どちらも過去に演奏しているので、多少の余裕はある。
それにちょっと久しぶりではあるが、I さんが加わって経験豊富なギターでしっかり支えてくれているのだ。安心できるのか私のケ-ナも良く鳴ってくれる。

練習の途切れたところで I さんが「ケ-ナの音良いですね」思いがけず褒められて「いやそれほどでも」などと言っていると歌の担当者から「今日のケ-ナは色っぽいのよネー」などと声が掛かる。

 色っぽさを狙って演奏しているわけではないけれども、少し余裕が出来てきたので ,歌手の口を見ながら歌に寄り添い、2番ケ-ナのハモりにはしっかり乗っかり、抑えるべき場所は抑え出るべき場所では多少リズムを崩しながらしゃしゃり出る、まだ不完全ではあるが、そんな演奏を「色っぽい」と感じてもらえるなら嬉しくなってしまう。

おだてられれば木にも登りますよ。多摩川原での練習を再開しますかね。
ケーナとリコーダー、アプローチはかなり異なるが、最終目標は一致するのかも知れない。

Llaqui Runa | Musica Andina,

5/10/2016

グリ-ンスリ-ブス

My Lady Greensleeves ロセッティ画

グリ-ンスリ-ブスと言えばリコ-ダ-吹きには馴染みの曲だし,一般にもよく知られている.
先日のフレンドシップコンサ-トで細岡師匠がかっこよくこの曲を決めた後で、シェイクスピアの「 ウインザーの陽気な女房たち」の中で2回もこの曲に言及しているとの話をしてくれた。
このブログでも「ハムレットはリコーダーを吹いた」との主張をしたことがあるので、シェイクスピアについてはおおいに興味がある。
早速現物に当たってみることにした。訳は2種類を比較してみる、坪内逍遥と松岡和子。坪内逍遥は明治時代にシェイクスピアを日本に紹介して高い評価を得ている。

{参考のためのあらすじ}
酒好き、女好き、太っちょの悪党騎士フォルスタッフ、二人の金持ちの人妻に言い寄るが、陽気な女房たちのしかけに逆にはまってしまい、亭主を含む周りの男たちも巻き添えになり大騒ぎ。シェイクスピアと同時代のエリザベス朝のイングランドを扱った市民劇

{参考文献}
・ザ・シェークスピア 第三書館 ウインザーの陽気な女房 坪内逍遥 訳

・ウインザーの陽気な女房たち
ちくま文庫 シェイクスピア全集9  松岡和子 訳

・The Merry Wives of Windsor  PENGUIN SHAKESPEARE  G.R. Hibbard

劇中2か所でグリーンスリーブスに言及しているとあるが日本語翻訳そのものには曲名は出てこない、第二幕第一場でのフォード夫人の台詞、第五幕第五場でのフォルスタッフの台詞。該当部分を書き出してみる。アンダーラインがある部分が核心部。

第二幕第一場  
<坪内逍遥 訳>
フォー妻 
無駄は止して。(陽光が費える。)・・・・さ、これを読んで下さい。私が勲爵士になれさうなわけがわかるから。わたし、此の目で男の体附が見分けられる限り、もう〃肥ッちょうは真っ平。けどもね、あの男、平生は口ぎたない雑言もいはないし、貞淑は女の美徳だと褒めてもゐたし、無礼、無作法を合理らしく非難してもゐたんですから、わたし、大丈夫、言うことと気質と一致してるとばかり信じてましたの。
ところが、どうでせう?まるで讃美歌と緑袖節(ストトン節)とほどのちがひよ。
ほんとに、どの沖あひからの(はやて)風で、あんな何頓といふ油をおなかに収れている大鯨が此ウインザーの浜なんかへ吹き寄せられたんでせう!
  ルビ(緑袖節 あおそでぶし)

<松岡和子 訳>
フォード夫人
無駄なおしゃべりはやめて、ほら、これ読んで、読んで。私がナイトになれそうなのが分かるから。この目が男の体つきを見分けられるかぎり、私、太った男は大っ嫌い。そうは言っても、あの男は汚い口をきくこともないし、女のしとやかさを褒めてたし、はしたないことは何であれ、お行儀よくきちんと非難してたから、私、その言葉どおりの立派な気性の人だと思い込んでいた。でも、言行不一致もいいとこだわ、賛美歌を*恋の流行り歌のメロディで歌うみたいにズレてる。一体どんな大嵐が、おなかに何樽分もの脂をつめこんだあの鯨をウインザーの岸辺に打ち上げたのかしら?
* 翻訳者注 Greensleeves   現在も歌われている「グリーンスリーヴス」は1580年代に生まれた。

MISTRESS FORD
But they do no more adhere and keep place together than the Hundredth Psalm to the tune of 'Greensleeves'.


第5幕 第5場
<坪内逍遥 訳>
フォルスタッフ
黒尻尾の牝鹿かい?(天を仰いで)馬鈴薯の雨が降ってくれ、緑袖節に合わせて雷が鳴ってくれ、嘗め菓子(香ひ入りの糖李実)の霰が降ってくれ、エリンゴ(砂糖漬けの海草)の雪が降ってくれ、刺激剤的の大あらしがやって来てくれ!おれはここで雨泊りをするから。

<松岡和子 訳>  
フォルスタッフ
黒い毛の雌鹿ちゃんだな! 空よ、マムシ酒の雨を降らせてくれ、恋の歌の伴奏は雷だ、薄荷の霰、ニンニクの雪、なんでもいい、媚薬の嵐を巻き起こせ。俺はここで雨宿りだ。

*翻訳者注 原文では、フォルスタッフが空から降らせたいと言っているのはサツマイモ   (Potatoes), 息をいい匂いにする砂糖菓子(Kissing-comfits),エリンジュームの根(eringoes) など、当時催淫剤とされていたものや口臭予防のもの。  

FALSTAFF
My doe with the black scut! Let the sky rain potatoes. Let it thunder to the tune of 'Greensleeves', hail kissing-comfits, and snow eringoes. Let there com a tempest of provocation, I will shelter me here.

     
英文ではどちらも the tune of 'Greensleeves' となっている。
松岡和子 訳 では「グリーンスリーヴス」の表示ではなく「恋の流行り歌」あるいは「恋の歌」と表現されている。(Greensleevesとの脚注あり)
坪内逍遥 訳では緑袖節(ストトン節)は笑ってしまうが、たぶんグリーンスリーヴス の直訳だろう。
翻訳された時代の差が大きい。坪内逍遥のころはまだグリーンスリーブスは日本に伝わっていなかったと思われる。
松岡訳ではグリーンスリーブスの名称をあえて避けているが、当時(シェイクスピア)の時代の曲のイメージと現代日本でのイメージがかなり異なっているのではないかと想像する。また資産家のフォード夫人と悪党騎士のフォルスタッフが相互に関係なくこの曲を取り上げているところを見ると、階級や男女の別が無いほど流行していたのだろう。

「訳者のあとがき」によればこの戯曲は「騙し騙され」のドタバタ喜劇だが登場人物の言葉に癖がある。ウエールズ訛りとかフランス訛りとか・・シェイクスピアも周囲を観察しながら書いたし、当時の観客たちもその違いを聞き分けて楽しんだのだろうとある。
当然、巷で流行していたグリーンスリーブスも抜け目なく劇中に取り込んだのだ。

原曲のメロディーは2種類あったのではないかとの説もあるらしいが、500年近く伝承されて現代でも生き続けているその生命力は魔性的ともいえる表情もそなえ、おいそれと取って代われるものではない、原曲の核心部分はほぼそのまま残っているのではないだろうか。
現在伝わっている歌詞は数多く、「別れてしまった女を思う男の歌」が基本的なイメージで中にはクリスマスキャロルの替え歌もあるらしい。


しかしこれだとフォード夫人が清純な「讃美歌」と全く違う例として挙げたり、エロ騎士フォルスタッフが雷と一緒に鳴らそうとすることとイメージ的に矛盾が生じてしまう。 しかしグリーンスリーブス(緑の袖)には娼婦を指す時代もあったとの説もかなり有力らしいので、あるいは当時そのような歌詞で大流行していたのかもしれない。

4/02/2016

ERマイク不良

不良を起こしたコネクタ部分

フレンドシップコンサート当日リハーサルで片方のマイクが接触不良のような症状を起こした。マイクとマイクケーブルのコネクタ結合部分に力を加えると音が途切れるのだ、リハーサルでは時間がないので、そのままとし、終了後舞台のソデで修理した。可能性としてはマイクのコネクタ部分の不良、あるいはマイクケーブルの不良が考えられる。私はマイクケーブルを疑った。マイクも新造品であったが、前回のテスト使用では問題が無かった。マイクケーブルは直前に少し長いケーブルと交換したのだ。マイクケーブルを元の物に戻した。AC電源も近くに無いので動作チェックは省略した。・・マア何とかなるだろう・・これが甘かった

本番舞台上で大急ぎでセッテングしたが、片方のマイクから音は出てこない。マズイ!しかし 躊躇している場合では無い。このままマイク一本でスタートする。

最初は「涙のパヴァーヌ」マイクは使わないのだがアルトのソロを演奏しながら頭の中に・・これは涙ですね・・などと苦笑いしている言葉がグルグル駆け回って邪魔でしょうがない。
サンマルチーニのコンチェルトではソプラノのソロはERを使う予定だったが、ER無しで演奏した。何カ所かの難しい部分では動揺しているのが自分でもわかる。しかしふらつきながらも最後まで到達。とりあえず一息、残りの「知床・・・」「浜辺・・」は残りの一個のマイクでテナーのHさんに頑張って貰えばよい、私はクラリネットとERの音を聞きながらバランスを取るだけ。
とりあえずクラリネットに圧倒されてしまわないだけの音量は出ていた。音質はちょっとおとなしすぎたかもしれない、もう少しクセのある音色でも良いと思った。これは検討の余地十分あり。
それとクラリネットの音が生き生きしていたこと。あとでそのことを演奏者のTさんに聞いたところ、普段は当然抑えて演奏するが、今回はテナーリコーダーの音量がアップした為、遠慮することなく自由に演奏したとのこと。なるほどこれもERの効能だ。


故障の原因
翌日故障の原因を調べた。マイクのコネクタ部分の回路であることは間違いない。
この部分は小さな基板上にFET、コンデンサー、抵抗など取り付けて回路を構成しているのだが、5台ほど組み上げたので部品配置など少しづつ改良を施しているし、ハンダ付けなどは自信がある。不良になるはずは無いのだ。

しかし直ぐに不良箇所は判明した。ハンダ付けの不良だ。回路のアースパターンを最後に細い線材でコネクタの1番ピンにハンダ付けする場所が不完全だった。原因としては半田ごての熱容量が不足していたたためピンの温度が上がらなかったと思われる。これは部品が小型になったので半田ごても小容量の物を導入したのだが、これが裏目に出たようだ。

4/01/2016

第12回フレンドシップコンサート終了


2016 3 19日 稲城中央センターホール
今回の特徴は百花繚乱と言うべきか。ここ何年かは特徴ある演奏も増えてきて、それを個性化などと呼んでいたのだが、今回ははそれが一気に爆発した感じで、実に多彩な演奏会となった。そして それぞれが「素敵な演奏」であったことだ。

フレンドシップの初期の頃を思い出せば、当時はどのグループもお行儀よく「リコーダー合奏」を行い、違いといえばちょっと難しい曲だとか演奏技術が優れているなどでまるで「金太郎飴」のような演奏会であったような気がする。
想像してみるに、与えられた楽譜を演奏できたこと自体が嬉しく。それをそのまま演奏会に持ち込んで、それで満足だったのだ。それから約10年が経過し経験や交流を通じて各グループとも演奏者としての表現や主張の必要性を自覚しそれが実現できるテクニックも備わって来たからだろう。
これが単に他グループとの違いを際立てるための工夫ではなく、10年の積み重ねが必然的に産んだ結果であることに意味がある。

全体合奏の舞台上


全体合奏はピエール・ファレーズ パヴァーヌとガリヤルドを演奏したが、今回の演奏会を象徴していた。
舞台上の厚木リコーダーオーケストラの前にはガンバのなかやまはるみさんとハープの矢野薫さん、ハープのソロで曲は始まる。
会場の中ほどにルネッサンスドラムとサックバットの奏者がいて事前に打ち合わせ済みのように全体をリードしている。どこからか鈴の音も聞こえる。会場全体からわき上がるリコーダーの音。この場でしか聴けない見事な演奏でした。

プロフェッショナル達の演奏はある程度正統派であることが必要かもしれないが、アマチュアの場合は「素敵な演奏」を目指すべきだし、その答えは無数にあることが今回証明されたような気がする。来年はさらに伸び伸びと素敵な翼を 広げて下さい。


私自身としては、ER(Electric Recorder)の発表の機会を与えてもらったが、事前の点検不足のため2個のマイクの内1個が不良となり不満足な結果となった。この件については別項で書くつもり、もう一つ、全体の録音係を仰せつかっていたが、自分の出演したRicco Suono の録音SWをONにするのを忘れてしまった。トホホ どなたか録音してあれば、ご提供願います。

3/12/2016

PAとER どこが違う

一般的なPAとER(Electric Recorder) どこが違う
例えば体育館などで小編成のリコーダー合奏を演奏するとして、音量が不足で会場全体に行き届かないと判断される場合、PA屋さんにお願いすることになるわけです。楽器ごとに マイクスタンドを立て、その音をミキサーで集約し、パート間の音のバランスをとり、場合によっては少しリバーブ(残響)を加えるなどしてL/R ステレオ音としてアンプに送り、増幅した音を左右のスピーカーから出す。
音質は特に手を加えることはなく、原音に忠実が原則だ。

ERの場合 演奏者個人の要求から出発する。「リコーダーと少し異なる音質が欲しい」「音量をアップしてクラリネットと合奏したい」「バスパートなどをパワーアップしたい」などエフェクター装置が必須となり、操作は演奏者個人の責任で行うことになる。
その為PAの場合スピーカーから出力される音はPA屋さんにお任せで自分たちは演奏に専念できるのだけれど、ERの場合音色も音量も演奏者に任されているので、音をしっかり聞き取りバランスを取ることが必要になる。スピーカーの音を演奏者に聞き取れるようにすれば当然ハウリングの危険が増大する。それを防ぐのはスタンドに立てたマイクでは無理で、発音源から数センチで集音できる極小タイプのマイクが必要となる。

SAMSON PM6 と fet Ⅱ

ERに使用するマイク
このブログを訪れて下さる方はマイクの内部構造などには興味が無いかもしれないし、通常のラベリアタイプのマイクでもERに使うことが十分に可能なはずで、その上私のオリジナルではないのだけれど、私として興味がありエネルギーを注いだ項目なので、記録しておきます。

fet Ⅱ 内部


ラビュームから数センチほどの位置に取り付け固定するのだから、極めて小型でなくてはならない。エレクトレットマイクのように電池の使用が必要だと保守が必要、演奏中に電池切れではエライことになる。ラベリアタイプと呼ばれる衣服に取り付けて使用するコンデンサーマイクが目的に合致するが、結構高価な上、リコーダーにはクリップで挟み込むような場所がない。いっそ自作でと。「ShinさんのPA工作室」のブログで紹介されているファンタム式パナ改マイクロホン fet Ⅱを使ってみることにした。
写真では左が市販品サムスンのマイク 右がfet Ⅱ (先端のピックアップ部分は8φ 20mmのアルミのパイプに収めてある)


先端のピックアップ部分は直径6mmのエレクトレットマイク、これのパターンをカットして改造し、ニ芯シールド線で引き出し、コネクタに接続する。実はこのコネクタはコネクタとしての機能は残しつつ、内部に電子回路を構成してあり、先端のピックアップ部を含む全体でコンデンサーマイクとして動作する。まさにマニアックな作りにもかかわらず完成してしまえばプロ機材として十分通用する完成度なのだ。コネクタから先は通常のプロ仕様バランスケーブルに接続すればOK
測定器が無いので両者並べて比較してみた
ミキサーの2つのチャンネルにそれぞれのマイクを接続し、一つの音源で比較する
サムスンの方は残留ノイズが多く、感度も少し低いようだ。聴感上の比較だけでも両者の差が判る。
低価格の市販品では使用パーツや組み立て構造にも色々制限があり仕方が無いのかもしれない。
fet Ⅱは十分に吟味されたパーツを使い組み立てにも気合が入っている。 例えばピックアップ部と本体をつなぐ二芯 シールド線にしてもモガミの3031と指定されているが固さとしなやかさを兼ね備えているようで実に扱いやすい。



パーツも音質へのこだわりや、コネクタの中に電子回路を入れるなどサイズにも制限があり、指定のパーツをあつめるのに苦労する。
回路図や詳細は、「ShinさんのPA工作室」のブログを見てもらうとしてパーツの調達は結構大変だった。小型の金属皮膜抵抗やフイルムコンデンサーは秋葉原を歩き回って入手できた。ピックアップ部分のマイクもほぼ同等の代用品を使用した。問題はFETで東芝ではすでに生産中止品目であり流通在庫だけとなるが、ほぼ店頭から姿が消えてしまった。

取り寄せを業者にお願いしたが少し高くなったかもしれない。一番高いのがノイトリック社のコネクタ400円程度これは仕方が無い。その他のほとんどのパーツが10〜100円で入手できるのだ。全部合わせても1000円を少し超える程度、予備のマイクも必要だからこれは助かる。

プロの録音技術者であるShinさんのblogは他にも興味深いページがあるのでぜひ訪れてみて下さい。

3/09/2016

リコーダーのブロック抜きーその2



最初にアルトリコーダーのブロックを抜いたのだが、結果がよかったため他のリコーダーにも次々と手を下してしまった。

オーボエ奏者はいつもリードの話ばかりしているなどと聞いたことがある。ひとくくりには出来ないが、常に音色のことを考えているのだろう。オーケストラが始まる直前にオーボエがA音をだすが、音程よりもコンサートマスターを納得させる音色が大切と言った奏者がいた。それ程音色には神経を尖らせ常に最良のリードを用意しているのだ。クラリネットやサキソホーンなどのリードを使用する楽器も同様だろう。それに比べてリコーダー奏者達の無頓着ぶり、確かにリードは使わなくても音は出るが、その分 より精密な内部構造なのだ。
構造が複雑微妙なので定期的にブロックを抜いて清掃するのはおすすめできないが、常に構造の複雑さを認識し問題があったらウインドウエイをクリーニングし場合によってはメーカーに修理依頼することは大切なことだ。

<写真説明>
ブロックを抜いた状態の頭部管(アルト) 「左」
抜いたブロック 

ブロック抜きのあて木 2種
      あて木小(10φ 130mm  )  ソプラノ用   「上」
      あて木大  (15φ 260mm   )アルト、テナー共用  「中」
ブロック打ち込み用のあて木  「右上」
        (30φ 50mm    ) 共用
小型の木槌、         「下」
金槌は避けたい、木槌も小型のもの、あて木はブロックにダメージを与えないため、柏材のような硬い木材は避ける。

ブロックが水分を含んでいると膨張して事故の可能性があるので丸一日は乾燥させた方が良いだろう。頭部管の下側から丸棒を差し込み、ブロックに触れた状態で木槌で丸棒を軽く叩く。
少しづつブロックがせり出して来るのでそのまま続けてブロックを取り出す。

ブロックはシーダーと呼ばれる針葉樹の材料で。木工と言うより金属加工のような精度で削り出されている。これが管材(ローズウッドなどの広葉樹)などにぴったりはまり込み、一部はウインドウエイを形成する。
ウインドウエイの部分を素早くぬるま湯あるいは水で洗って清掃する。タオルなどで拭き取り自然乾燥する。

ブロックの位置を合わせて慎重に手で押し込む。これで定位置まで収まった楽器もあったが、通常は1/3ぐらいで止まるので再度位置を確認して問題なければブロックに30φほどの「あて木」を当てて木槌でコンコンコンと軽く叩くとピタリ定位置に収まるはずだ。ブロックとあて木の間に布切れ一枚挟んでも良いかもしれない。   ・・皆様の幸運を祈ります・・

3/07/2016

第12回フレンドシップコンサート


第12回フレンドシップコンサート
開演まであと2週間を切りました、出演するグループは最後の仕上げの段階ではないでしょうか。
グループの演奏順番も決定したので掲載しておきます。
     
  演奏団体名     開始
1.ジャスミー        12:30
2.フェリーチェ       12:50
3.Gクレフ           13:10
4.たま音平日トリオ 13:30
5.ぴぽ                 13:50
 <休息15分>
6.Ricco Suono       14:25
7.ねころびと          14:45
8.ペッパーミューズ 15:05
9.厚木リコーダーオーケストラ 15:25
10.全体合奏       15:45
 <休息15分>
11.アンサンブル奏  16:20
12.ヴィア・モンテビアンコ 16:40
13.平尾リコーダークラブ  17:00
14.ゲスト演奏      17:20

曲目はそれぞれ確定しているとは思いますが当日のプログラムでのお楽しみ。

HRCはER(Electric Recorder)を前面に押し出した演奏を行います。公民館の視聴覚室では何回か実験できているのですが、実際の舞台で演奏した場合、小型のアンプとスピーカーでどの程度の効果があるのか、クラリネットなど他の楽器に対抗できる力を出せるのか、など実際にやってみなければわからない部分が多いのです。

涙のパヴァーヌ  ダウランド
昔マルチン・リンデの使用したリコーダーとリュートの楽譜に今回はバスとテナーのリコーダーを加えてみました。 ここではERを使用しません。

コンチェルトヘ長調第1楽章 サンマルティーニ 
バックの弦楽合奏部分をリコーダーで演奏し、ソプラノのソロリコーダーを目立たせる為ERを使用する。アイデアとしては面白いのですが、コンチェルトとなれば演奏自体が大変で、それを演奏する羽目になってしまって四苦八苦です。ERの開発などとノンビリ構えていられなくなりました。

知床旅情、浜辺の歌
主旋律はクラリネットにタップリ歌ってもらいます。伴奏はアンプ付きのサイレントギター

そこへERのテナーリコーダーが割って入ります。クラリネットの音に対抗できるか。

2/12/2016

リコーダーのブロックを抜く

ブロックの抜けた頭部管とブロック

アルトリコーダーを頻繁に使用するが、しばらくメンテナンスしていないせいか、最近音の立ち上がりに違和感を感じる事が何回かあった。それに吹き口の部分のブロックが手前に少し抜け出て来たのか笛本体とわずかな段差も出来ている。楽器はモダンピッチ竹山アルト ローズウッド製

本来ならメーカーに送り返してメンテナンスをするべきなのだが、平尾リコーダーリコーダークラブの練習が週2回も有り、Ricco Suonoの練習もフレンドシップコンサートを控えて練習が増えてきた。他のグループにも顔を出したりもしているので。リコーダーの休みが無いのだ。

しかしそんなことを言っている場合ではないので、禁断のブロック抜きに挑戦することにした。4日間リコーダに触れてないので、ブロックも乾燥しているはずだ。頭部管に太めの木材を差し入れ、先端がブロックに触れた状態で、木槌で木材をコンコンコンとたたいた。ブロックが数ミリせり出してきた。これでよし。更に叩くと更にせり出すが、簡単にスポンと取れない。叩くとせり出す状態がしばらく続く。ワー長い! かなりあせって来たが今更戻れない。やっと外れた。かなり細くて長い、特に吹き口部分が薄く長く削られているので、元どおりに戻せるか心配になってしまう。
ウインドウエイの部分、(ブロックの上部分、管の溝部分)を手早く水洗いする。
それほど汚れてはいないようである。急いでタオルで水分を拭き取り、1時間ほど乾燥、予定では安全のため半日放置するつもりだったが、元に戻せるかどうか不安をかかえたままでは落ち着かない。見た目はかなり乾燥したようなので、ブロックをそっと差し込んでみる。スルリと入るかと思ったがかなり抵抗がある。無理をして押し込み途中でにっちもさっちも行かなくなったらえらいことになる。
慎重に位置決めをしながら親指でぐっと力を込めて押し込んだ。1/3弱押し込まれたがそれ以上は動かない、位置関係を慎重に確認したけれども問題なさそう。あて木として直径4cmほどの丸棒を布一枚を挟んでブロックのカーブに合わせ木槌で数回たたいたらピッタリ定位置に収まった。


とりあえずホッとしたが明日の練習で結果はわかるでしょう。

追加

本日練習で使用してみた。ちょっとの音出し程度では違いが判らないが、細かい音符の曲だと音の粒立ちが違う。今までただ通過していたフレーズも陰影をつけて演奏しようとしている自分を発見してちょっと驚いている。

2/08/2016

第36回昼下がりのコンサート

プログラム

2016.1.31 「喫茶ポーポーの木」
回数が36回となるとよく続けてきたと思う。
多分最初の頃はプログラムを埋めること。とりあえず演奏出来ることが中心だったり、
自分たちのやりたい曲を一方的に演奏する。あるいは逆に観客が好むであろう曲を並べる。しかし回を重ねるうちに、いかに自分たちの思いを表現してお客さんに理解してもらえるか。そこの共有部分の大切さが徐々にわかってきたような気がする。
これは演奏上の表現だけではなく、新規の楽器への挑戦や、新技術による新たな表現の獲得なども含まれると思う。

私として今回の課題はERを実戦で使うこと。

「浜辺の歌」でクラリネット、アンプ付きサイレントギター、そしてERテナーリコーダー、

クラリネットが独特の癒し感を持って鳴り響き、ギターがリズムを刻む、そこにERのテナーリコーダーがオブリガートで絡む。音量的には十分、あと演奏法にひと癖欲しいところ。通常クラリネットは抑えた演奏をしているが、今回は遠慮なく自由に歌っているようだ。

ERのバス
前半の4曲はバスリコーダーをERとして演奏してもらった。弱目のブーストだったが、バスの音が心地よく響いて演奏が活性化する。
ここで私は「グリーンスリーブス・・・」と「平和」でソプラノを担当した、演奏中最良の響きを求めて演奏している自分に気が付き少しびっくりした。いつもは抑え気味に演奏していたのに。多分他のパートもそのように感じて演奏していたはず。ひょっとして観客までバスのリズムに取り込まれていたのではないだろうか。

涙のパヴァーヌ  この曲は40年ほど昔 私が所有していた数少ないLPレーコードの中にあった。ハンス・マルティン・リンデの演奏、遠い外国のプロの演奏として聴いていた一曲、それが平尾リコーダークラブ結成に誘われ、ギターを演奏していたKさんがリュートを購入し、楽譜も見つかり、偶然の連続で、演奏することができた。それが5年ほど前のこと、今回は再演ということになるが、リュートは平尾在住の製作家の楽器に変わり、低音の補強にバスリコーダーにも加わってもらった。私も少し余裕を持って演奏出来たから、更に前進できたのではないかと思う。まだ改善の余地だらけなのだけれど。

「浜辺の歌」の演奏

楽器構成
グリーンスリーブスによる主題と変奏・・ソプラノ、アルト、テナー、バス(ER)
聖なる乙女・・アルト1、アルト2、テナー、バス(ER)
平和・・・ソプラノ、アルト、テナー、バス(ER)
希望のささやき・・ソプラノ1、ソプラノ2、アルト、バス(ER)
二つの小品・・・リュート
涙のパヴァーヌ・・・アルト、リュート、バス
雪がふる・・・クラリネット、サイレントギター、マラカス
あいつ・・・クラリネット、サイレントギター
浜辺の歌・・・クラリネット、テナー(ER)、サイレントギター、
雪のふる街を・・・テナー1、テナー2、バス、バス
虹と雪のバラード・・・アルト1、アルト2、テナー、バス
童謡メドレー(雪、たきび、冬景色、冬の夜、春よこい、うれしいひな祭り)
アルト1、アルト2、テナー、バス


今回はそれぞれの演奏者が課題を持って臨むことが出来たし、お客さんもそのことを理解してくれたと思う。

1/29/2016

ERのテスト

ソプラノリコーダーにERのマイクを取り付けた状態

ER(エレクトリック リコーダー)をHRCの練習に持ち込んでテストしてみた。
機材はいつもの
コンデンサーマイクロホン 自作品 DIRECT-3
ギター用マルチエフェクター  BOSS GT-001 
アクティブPAシステム MACKIE SRM150

1、浜辺の歌
クラリネットが主旋律で、サイレントギターが伴奏、ギターは小型のアクティブスピーカー(アンプ付のスピーカー)を使用している。
これにテナーリコーダーがオブリガートで加わるのだが、クラリネットの音量に負けてほとんど聞こえない。ここでテナーリコーダーに特製マイクを取り付けて、ERとしてスピーカーから音を出してみた。クラリネットと対等とは言えないが、十分に渡り合える音量になった。ただ自信無く遠慮しながら演奏すると遠慮も拡大されてしまうので、自信を持った演奏が必要。しかし力む必要は全くない。

2、グリーンスリーブス
ソプラノ、アルト、テナー、バスのリコーダー四重奏、本来はそのままで良いはずだが、私はテナーやバスのパワーが不足しているように感ずる。楽器が大きくなった分、息の量もそれなりに増大させるべきだが、人間が演奏するので理屈通りにはいかない。そこで大型の楽器は省エネ設計なのだと思う。ソプラノやアルトのパワーに比べてテナーやバスがパワー不足なのはそのためだろう。
そこでバスリコーダーだけマイクを取り付け音量を上げてみた。
音量のアップはそれほど多くなかったので、演奏者は音量の増大をそれほど感じなかったらしいが、周りで演奏していた他のパートからはバスの響きがはっきり聞き取れ、リズム感よく演奏しやすかったと好評だった。
オーケストラのコントラバスなどはエンドピンを介して床が「グワン」と鳴るほどパワフルだ。それに比べてリコーダーバス群の非力な事、ERを使う理由は十分ある。

3、サンマルティーニ コンチェルト ヘ長調 第1楽章
「ERでコンチェルトを」 などと大風呂敷を広げたので挑戦してみたが、肝心のソロリコーダー(私)がメロメロでは話にならない。ソプラノリコーダーに小型マイクを取り付けた場合、(写真)マイクケーブルが運指の邪魔になるかもしれない。少し工夫が必要になると思う。
何とか練習時間を確保して形をつけたいが、ERの改良とソロリコーダーの両立は難しいかも知れない。

蛇足になるかも知れないが、今回のテストを解説してみる。

本来このエフェクターを使用するエレキギターでは、このエフェクターから出た音のみがスピーカーから増幅されて発音される。
ところが、リコーダーにマイクを取り付けたERはまず通常のリコーダーとしての音が室内に広がり、同時にマイクで拾われた音がエフェクターで加工されて室内に鳴り響く。そのため両者の混合音として聞こえる事になる。

2、グリーンスリーブスの四重奏ではバスをERとして補強している。
ERのスイッチを切れば通常の四重奏として室内に響く事になる。

エフェクターの基本動作では「コンプレッサー」で音量のバラツキを整え、「オーバードライブ」などで音色に変化を付け、「リバーブ」で潤いを追加する。ERのスイッチを入れて音量を現在鳴っているバスと同じ強さとすれば、第2のバス奏者が出現する。この奏者は第1の奏者よりちょっぴり上手い、音色が特徴的で潤いがあり音量が安定している。 観客やソプラノ、アルト、テナーの奏者には二人分の奏者の音が混合されて聞こえ、あたかも第1番目のバス奏者が演奏している音のように聞こえる。

バス奏者だけは少し状況が異なる。直近で自分のバスが鳴っている。場合によっては骨伝導のような形で直接身体に伝わってくる。そのため2番目の奏者の音がブロックされ聞きづらいのだろう。もちろん全体としてのバスの音が聞こえるべきなので、スピーカーを近づけるなどの補正が必要になるが、ハウリングが発生する恐れがあるため十分な注意が必要となる。

Elodyのように変化をつけた音色で独自の楽器としての方向も面白いが、今回のようにリコーダー+αのような使い方もあると思う。
まだ詰めなければならない問題も多いが、全体としては好印象なので、HRCの協力を得てさらにテストを続けるつもり。
31(日)の昼下がりコンサートでは何曲かはこのERを使用することになるだろう。実際に使用してみれば新たな問題点も浮上するかもしれない。

ピックックアップとしての小型マイクロホンは予備も含めいくつか必要になると思う。コネクターの中に電子回路を組み込むという構成上、小型で特殊なパーツも多いけれども調達もめどがついたので、組み立て開始できそうだ。

1/11/2016

エレクトリックリコーダー(ER)



前回はモーレンハウアー社タラソフ氏によるElodyの講義受講を紹介したが、いま手元で実験しているER(Electric Recorder)を紹介します。
写真はアルトリコーダーに取り付けた状態です。

機材の紹介
コンデンサーマイクロホン 自作品 「Shinさんの工作室」で紹介されている DIRECT-3
ギター用マルチエフェクター  BOSS  GT-001 
アクティブPAシステム MACKIE SRM150

システムの結線
マイクのピックアップ部分をマジックテープでラビュームの右下付近に固定する。
マイクのコネクタにケーブルを接続し、エフェクタ(GT-001)のMIC IN へ入力,
エフェクタ アウトよりアクティブスピーカーへ


マイク部分の詳細
中央のピックアップ部は直径6mm程のバックエレクトレットコンデンサマイクロホンの素子を改造し、極細のシールド線を半田付けして8φ 20㎜程のアクリルパイプに封入してある。写真ではさらに楽器への取り付けのための薄いネオプレンゴムのスポンジで挟み込んである。シールド線のもう一方の端はNEUTRIK 社のXLRコネクタに接続されている。ここではコネクタとしての機能は残しつつ、内部に電子回路を組み込んである。これにより全体が高性能なコンデンサマイクロホンとして動作する。
左の青いケーブルはXLRコネクタ付きのケーブルでマイクロホンのコネクタに接続し、エフェクタまで信号を伝達する。ケーブルの長さは自由に延長できる。

このように並べてみると分かることだが、マイクロホンに一部工夫が見られるものの、リコーダーにしろエフェクタ、アンプなど一般に売られている製品を組み合わせただけだ。また専用マイクは取り外し自由だから、アルトリコーダー以外の、テナー、バス、ソプラノなどにも取り付けられ、応用を広げることができる。
Elody は形状やプリントデザインなどから考えて、リコーダーとは別な楽器を目指しているように思える。歴史的な古楽を再現するための楽器を離れて、もっと自由に簡単に演奏そして表現できる楽器。あの奇抜すぎるデザインはそのための必然であったのかもしれない。

その点今回実験しているERは音色に関してはElodyと同じ音が出るので同様に扱うことが可能なわけだが、私はもう少しリコーダーに近い位置を守備範囲にしても良いと思う。リコーダーには古楽の再現という本来の使命があるわけだけれど、近年はそれを離れて、音楽を聴くだけではなく、自ら演奏して楽しむことを可能にする楽器としての役割もかなりの部分を占めてきたように思える。リコーダーオーケストラなどはその典型的な例ではないだろうか。その中にちょっと音色を変えたERが加わるのは面白いのではないだろうか。

リコーダーの音量をマイクロホンやアンプを使用して拡大するのはだれでも考えることだと思うが、意外と多くの問題が発生するのだ。近接してピックアップしたリコーダーの音は意外と単純でつまらない音、実はいつも聴いているのは部屋の残響分も加えた音なのだ。 室内の残響音もピックアップしようとマイクをリコーダーから離すと残響音より先にスピーカーの音をとらえてしまい「ギャー」とハウリングを起こしてしまう。
その点ERでは発音源(ラビューム)から数cmの位置で音をピックアップするのでリコーダーの音量とスピーカーからの音量に圧倒的な差があり、ハウリングに対して安全性が高まる(ハウリングマージンが稼げる)
そのため音色に関してはエフェクターを利用する。

エフェクトの簡単な説明
「コンプレッサー」 音のバラつきを圧縮し、小入力を増幅することで音量を均一化して整える。
「オーバードライブ、ディストーション」 音に歪を加え味のある、あるいは芯のある音にする。
「リバーブ」 音に残響を加える
その他いろいろのエフェクトがあり通常はそれらを組み合わせて使用する。
ここで使用しているエフェクター GT-001 はそれらの組み合わせが200も登録されている。全く信じがたいほどなのだが、エレキギターの長い歴史と多くのミュージシャンの努力の集積だろう。ギター用のエフェクトだからリコーダーでも同じ効果があるとは限らない、個別に試してみるしかないだろう。まるで巨大な森に迷い込んだような気がする。


アイデアを2つほど。
1、バスの補強
リコーダーオーケストラにコントラバスが1本しかないとする。低音部にもう少しパワーが欲しい
コントラバスリコーダー あれだけの躯体を十分鳴らしきるには2倍3倍のパワーが必要だが、人間が演奏する楽器であるからそれは無理、だから極端な省エネ設計なのだ。だから音も弱々しいし、音自体に芯がない。
バスリコーダーに取り付けて実験してみたが、朗々と鳴り響いて実に気持ちがよい。石頭の純血主義者でなければ十分実用性があることを認めるはずだ。
2、リコーダーコンチェルト
サンマルティーニ、ヴィヴァルディなど面白いコンチェルトが存在する。しかしソナタなどはチェンバロ、ガンバをお願いすれば何とか実現するが、コンチェルトのため弦楽合奏などをお願いするのはほとんど無理な話だろう。
リコーダーオーケストラは最近あちこちにできている。リコーダーオーケストラで弦楽合奏の部分を演奏する。ソロリコーダーは音が埋没してしまわないように、ERを使用し音を輝かしく音量もアップする。腕自慢の奏者に演奏させれば、少し変化に乏しく退屈なプログラムに活気をもたらし盛り上がること間違いなし。

現役のプロ音響技術者Shinさんのブログ
音響専門家としてのこだわりやバランスが魅力。Panasonic のエレクトリックコンデンサマイクロホン(ECM)を使用したコンデンサマイクロホンの設計をそのまま使用させてもらった。FETを2個使用する「パナ改fetV」を作るべきなのだが、部品調達の関係で「DIRECT-3」を作ってみた。