一般的なPAとER(Electric Recorder) どこが違う
例えば体育館などで小編成のリコーダー合奏を演奏するとして、音量が不足で会場全体に行き届かないと判断される場合、PA屋さんにお願いすることになるわけです。楽器ごとに マイクスタンドを立て、その音をミキサーで集約し、パート間の音のバランスをとり、場合によっては少しリバーブ(残響)を加えるなどしてL/R ステレオ音としてアンプに送り、増幅した音を左右のスピーカーから出す。
音質は特に手を加えることはなく、原音に忠実が原則だ。
ERの場合 演奏者個人の要求から出発する。「リコーダーと少し異なる音質が欲しい」「音量をアップしてクラリネットと合奏したい」「バスパートなどをパワーアップしたい」などエフェクター装置が必須となり、操作は演奏者個人の責任で行うことになる。
その為PAの場合スピーカーから出力される音はPA屋さんにお任せで自分たちは演奏に専念できるのだけれど、ERの場合音色も音量も演奏者に任されているので、音をしっかり聞き取りバランスを取ることが必要になる。スピーカーの音を演奏者に聞き取れるようにすれば当然ハウリングの危険が増大する。それを防ぐのはスタンドに立てたマイクでは無理で、発音源から数センチで集音できる極小タイプのマイクが必要となる。
SAMSON PM6 と fet Ⅱ |
ERに使用するマイク
このブログを訪れて下さる方はマイクの内部構造などには興味が無いかもしれないし、通常のラベリアタイプのマイクでもERに使うことが十分に可能なはずで、その上私のオリジナルではないのだけれど、私として興味がありエネルギーを注いだ項目なので、記録しておきます。
fet Ⅱ 内部 |
ラビュームから数センチほどの位置に取り付け固定するのだから、極めて小型でなくてはならない。エレクトレットマイクのように電池の使用が必要だと保守が必要、演奏中に電池切れではエライことになる。ラベリアタイプと呼ばれる衣服に取り付けて使用するコンデンサーマイクが目的に合致するが、結構高価な上、リコーダーにはクリップで挟み込むような場所がない。いっそ自作でと。「ShinさんのPA工作室」のブログで紹介されているファンタム式パナ改マイクロホン fet Ⅱを使ってみることにした。
写真では左が市販品サムスンのマイク 右がfet Ⅱ (先端のピックアップ部分は8φ 20mmのアルミのパイプに収めてある)
先端のピックアップ部分は直径6mmのエレクトレットマイク、これのパターンをカットして改造し、ニ芯シールド線で引き出し、コネクタに接続する。実はこのコネクタはコネクタとしての機能は残しつつ、内部に電子回路を構成してあり、先端のピックアップ部を含む全体でコンデンサーマイクとして動作する。まさにマニアックな作りにもかかわらず完成してしまえばプロ機材として十分通用する完成度なのだ。コネクタから先は通常のプロ仕様バランスケーブルに接続すればOK
測定器が無いので両者並べて比較してみた
ミキサーの2つのチャンネルにそれぞれのマイクを接続し、一つの音源で比較する
サムスンの方は残留ノイズが多く、感度も少し低いようだ。聴感上の比較だけでも両者の差が判る。
低価格の市販品では使用パーツや組み立て構造にも色々制限があり仕方が無いのかもしれない。
fet Ⅱは十分に吟味されたパーツを使い組み立てにも気合が入っている。 例えばピックアップ部と本体をつなぐ二芯 シールド線にしてもモガミの3031と指定されているが固さとしなやかさを兼ね備えているようで実に扱いやすい。
パーツも音質へのこだわりや、コネクタの中に電子回路を入れるなどサイズにも制限があり、指定のパーツをあつめるのに苦労する。
回路図や詳細は、「ShinさんのPA工作室」のブログを見てもらうとしてパーツの調達は結構大変だった。小型の金属皮膜抵抗やフイルムコンデンサーは秋葉原を歩き回って入手できた。ピックアップ部分のマイクもほぼ同等の代用品を使用した。問題はFETで東芝ではすでに生産中止品目であり流通在庫だけとなるが、ほぼ店頭から姿が消えてしまった。
取り寄せを業者にお願いしたが少し高くなったかもしれない。一番高いのがノイトリック社のコネクタ400円程度これは仕方が無い。その他のほとんどのパーツが10〜100円で入手できるのだ。全部合わせても1000円を少し超える程度、予備のマイクも必要だからこれは助かる。
プロの録音技術者であるShinさんのblogは他にも興味深いページがあるのでぜひ訪れてみて下さい。
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