11/24/2016

テレマン リコーダーソナタ ヘ短調 (TWV41:f1)


テレマンのリコーダーソナタ ヘ短調 (TWV41:f1) を初めて聴いたのはかなり昔のことではっきりしない、確かブリュッヘンの演奏だったような気がする。出だしが雄大でなかなかカッコいい曲と思った。ヤマハの楽譜売り場で偶然この曲を見つけた。 リコーダーと通奏低音のための「4つのソナタ 」ベーレンライター版 だった。演奏することなど考えてもいない、楽譜を見たいだけ、でも購入したのだ。当時はHRCを立ち上げて間もない頃でソナタの演奏なんて実力も環境もなかった。せめてサワリだけでもと思ったが、フラットが4つも並んでいるので恐れをなして、本棚行きとなってしまった。

その後渡辺清美先生のところで、チェンバロやガンバ付きの演奏会にHRCの3兄弟を加えてもらい、(刺身のツマ?)ソナタを演奏する機会ができたのだ。その後細岡師匠も独奏会を始められたのでそちらに参加、シックハルトやヴァルサンティの曲を楽章を落としたりして(表向きは時間の都合、実は指が回らない)演奏させてもらった。
今回も近江楽堂での演奏会が決まり曲目を聞かれた時に、いつかはテレマンをやりたいとの思いがあったので、この曲名を伝えたのだった。「いざとなったらできない楽章を落とせばいい」・・・

リコーダーでは有名な曲らしく多くの奏者が演奏している、私はPamera Thorby などをよく聴く。
 YouTubeで演奏例などを探しているうちに珍しい録音を見つけた。ファゴットでの演奏だ。これが実に名演で惚れ惚れしてしまう。リコーダーの演奏とは趣がちょっと違うけれども表情豊かで気持ちがよい。よほどの名手の演奏だろう。リコーダのお株を取られると心配になるほどだ。・・・ 最近になって楽譜を調べようとペトルッチの楽譜ダウンロードサイトで探すとテレマンのリコーダーソナタの中にこの曲が見つからない。??? さらに捜索範囲を広げて探したらファゴットのソナタで TWV41:f1 を発見した。このサイトではアレンジ譜も載せるからそいう場合もあり得ると自分を納得させるも、なにかスッキリしない。
何か手がかりはないかともう一度ベーレンライターの原譜に戻ってみる。序文がドイツ語なので無視していたのだが、よく見ると半分は英語なのだ。・・テレマンは2週間ごとに音楽レッスンのための刊行物シリーズ "Der getreue Musikmeister"「忠実な音楽の師」を発刊していた。(事業家としての才能も優れていたらしい)その中にいろいろな楽器のための楽譜が載っていて、もちろんリコーダーの楽譜もあるのだがこの曲(TWV41:f1)は低音部記号で書かれファゴットのソナタとして考えられている。しかし最終楽章でテレマンが「このソロはリコーダーで演奏することができる」と書いてあるのだそうだ。・・・・納得・・・曲の出だしの雄大さはファゴットに由来するのだ。テレマンはファゴットのために作曲したのだろう。しかし当時でもファゴットよりリコーダー奏者が圧倒的に多かった。そこで彼は営業上の配慮から「リコーダーでも演奏できる」と書き加えたと想像する。

曲の出自は解ったけれども演奏が進歩したわけではない。演奏が難しい場所がいくつかあり未だ克服できない。テンポを落としてもたもたすると制限時間を超過してしまう

実は演奏日が迫っていて、12月4日 オペラシティ近江楽堂 通奏低音を演奏して下さるチェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバの奏者にはすでに楽譜を送ってある。
楽章を省略する案も検討してみたがこれが意外と難しいのだ、第1楽章の"Triste"は短いけれどもこのソナタの看板みたいなもので下ろすことはできない。第2楽章の"Allegro"は長大でおまけにダカーポまである。しかしこの曲の中核をなす部分で省けない。第3楽章"Andante"と第四楽章"Vivace"は短いのだがペアになっているような感じでどちらか一方だけでも外すとバランスが悪くなる。
結局どの楽章も省略できないかも知れない。昨夜はHRCの夜練習だったのだが、私がソナタをヒイヒイ練習しているのを見て、練習を切り上げて会場を私の為に空けてくれた。ありがたいことだ。

こうなるとセロ弾きのゴーシュの心境だが、結果は彼と同じとはいかないだろう。

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