前回はモーレンハウアー社タラソフ氏によるElodyの講義受講を紹介したが、いま手元で実験しているER(Electric Recorder)を紹介します。
写真はアルトリコーダーに取り付けた状態です。
機材の紹介
コンデンサーマイクロホン 自作品 「Shinさんの工作室」で紹介されている DIRECT-3
ギター用マルチエフェクター BOSS GT-001
アクティブPAシステム MACKIE SRM150
システムの結線
マイクのピックアップ部分をマジックテープでラビュームの右下付近に固定する。
マイクのコネクタにケーブルを接続し、エフェクタ(GT-001)のMIC IN へ入力,
エフェクタ アウトよりアクティブスピーカーへ
マイク部分の詳細
中央のピックアップ部は直径6mm程のバックエレクトレットコンデンサマイクロホンの素子を改造し、極細のシールド線を半田付けして8φ 20㎜程のアクリルパイプに封入してある。写真ではさらに楽器への取り付けのための薄いネオプレンゴムのスポンジで挟み込んである。シールド線のもう一方の端はNEUTRIK 社のXLRコネクタに接続されている。ここではコネクタとしての機能は残しつつ、内部に電子回路を組み込んである。これにより全体が高性能なコンデンサマイクロホンとして動作する。
左の青いケーブルはXLRコネクタ付きのケーブルでマイクロホンのコネクタに接続し、エフェクタまで信号を伝達する。ケーブルの長さは自由に延長できる。
このように並べてみると分かることだが、マイクロホンに一部工夫が見られるものの、リコーダーにしろエフェクタ、アンプなど一般に売られている製品を組み合わせただけだ。また専用マイクは取り外し自由だから、アルトリコーダー以外の、テナー、バス、ソプラノなどにも取り付けられ、応用を広げることができる。
Elody は形状やプリントデザインなどから考えて、リコーダーとは別な楽器を目指しているように思える。歴史的な古楽を再現するための楽器を離れて、もっと自由に簡単に演奏そして表現できる楽器。あの奇抜すぎるデザインはそのための必然であったのかもしれない。
その点今回実験しているERは音色に関してはElodyと同じ音が出るので同様に扱うことが可能なわけだが、私はもう少しリコーダーに近い位置を守備範囲にしても良いと思う。リコーダーには古楽の再現という本来の使命があるわけだけれど、近年はそれを離れて、音楽を聴くだけではなく、自ら演奏して楽しむことを可能にする楽器としての役割もかなりの部分を占めてきたように思える。リコーダーオーケストラなどはその典型的な例ではないだろうか。その中にちょっと音色を変えたERが加わるのは面白いのではないだろうか。
リコーダーの音量をマイクロホンやアンプを使用して拡大するのはだれでも考えることだと思うが、意外と多くの問題が発生するのだ。近接してピックアップしたリコーダーの音は意外と単純でつまらない音、実はいつも聴いているのは部屋の残響分も加えた音なのだ。 室内の残響音もピックアップしようとマイクをリコーダーから離すと残響音より先にスピーカーの音をとらえてしまい「ギャー」とハウリングを起こしてしまう。
その点ERでは発音源(ラビューム)から数cmの位置で音をピックアップするのでリコーダーの音量とスピーカーからの音量に圧倒的な差があり、ハウリングに対して安全性が高まる(ハウリングマージンが稼げる)
そのため音色に関してはエフェクターを利用する。
エフェクトの簡単な説明
「コンプレッサー」 音のバラつきを圧縮し、小入力を増幅することで音量を均一化して整える。
「オーバードライブ、ディストーション」 音に歪を加え味のある、あるいは芯のある音にする。
「リバーブ」 音に残響を加える
その他いろいろのエフェクトがあり通常はそれらを組み合わせて使用する。
ここで使用しているエフェクター GT-001 はそれらの組み合わせが200も登録されている。全く信じがたいほどなのだが、エレキギターの長い歴史と多くのミュージシャンの努力の集積だろう。ギター用のエフェクトだからリコーダーでも同じ効果があるとは限らない、個別に試してみるしかないだろう。まるで巨大な森に迷い込んだような気がする。
アイデアを2つほど。
1、バスの補強
リコーダーオーケストラにコントラバスが1本しかないとする。低音部にもう少しパワーが欲しい
コントラバスリコーダー あれだけの躯体を十分鳴らしきるには2倍3倍のパワーが必要だが、人間が演奏する楽器であるからそれは無理、だから極端な省エネ設計なのだ。だから音も弱々しいし、音自体に芯がない。
バスリコーダーに取り付けて実験してみたが、朗々と鳴り響いて実に気持ちがよい。石頭の純血主義者でなければ十分実用性があることを認めるはずだ。
2、リコーダーコンチェルト
サンマルティーニ、ヴィヴァルディなど面白いコンチェルトが存在する。しかしソナタなどはチェンバロ、ガンバをお願いすれば何とか実現するが、コンチェルトのため弦楽合奏などをお願いするのはほとんど無理な話だろう。
リコーダーオーケストラは最近あちこちにできている。リコーダーオーケストラで弦楽合奏の部分を演奏する。ソロリコーダーは音が埋没してしまわないように、ERを使用し音を輝かしく音量もアップする。腕自慢の奏者に演奏させれば、少し変化に乏しく退屈なプログラムに活気をもたらし盛り上がること間違いなし。
現役のプロ音響技術者Shinさんのブログ
音響専門家としてのこだわりやバランスが魅力。Panasonic のエレクトリックコンデンサマイクロホン(ECM)を使用したコンデンサマイクロホンの設計をそのまま使用させてもらった。FETを2個使用する「パナ改fetV」を作るべきなのだが、部品調達の関係で「DIRECT-3」を作ってみた。
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