5/05/2011

MACKIE 402-VLZ3を分解する


マッキーのMixer 402-VLZ3 が手元に届いたので早速分解してみる。
まだ一度も実戦で使用しないうちに分解するのは少し気の毒な気がするが、仕方がない
べリンガーUB802の分解でもちょっと触れたが、実売価格で2倍以上するこのミキサーにはどんな部品が使用されているのだろう。

分解
ツマミは引き抜けば外れる構造だが、固いので竹製の冶具を作り「てこ」の原理でもちあげる。
フォンジャックの管用ナットはべリンガーより一回り大きい対辺13mm
キャップスクリューを使用しているので六角レンチも必要となる


写真は分解した基板の上側と下側。
基板は2枚に分割されていて、両面スルーホールのガラスエポキシ製2枚の基板は20本ほどのジャンパー線でつながっている。
下側は表面実装タイプの抵抗、コンデンサ、ダイオードなど
上側はXLRコネクタ、ジャック類、スイッチ類、VR、その他トランジスタ、3端子レギュレーター、LED、抵抗、コンデンサー類、そしてオペアンプなどのIC類。

回路構成はマイクプリアンプ部分がデスクリート構成、トランジスタは東芝の2SA970 4本、3桁表示の抵抗など

オペアンプはNJM4580,NJM2068(JRC)とTL072(TI) を使用している。
VR類は密閉型で(AE103Da) 等の捺印があったが、メーカーは確認できなかった。プッシュSWも確認できず、ただマッキーの人型マークのような刻印があったのでどこかのメーカーに特注しているのかもしれない。

電解コンデンサはマイク入力部分にELNA(エルナー株) が数本使われ、その他は容量により"HITANO","Jamicon" が使用されている。どちらも台湾の会社で、それなりの生産規模がある会社だと思われる。

イコライザーやフィルターに使用されているフィルムコンデンサーはメーカーは確認できないが誤差±5%の精度の高いタイプ

表面実装のチップ抵抗、チップコンデンサーなどは表示が無いのでメーカーが確認できない

評価
オペアンプはOPA2604等を使用しているのではないかと思っていたがそれは素人の浅はかさだった。実際はNJM4580,NJM2068(JRC)とTL072(TI)の3種類を 使用している。
実は4580は業務用機器では定番で現在でも多数使用されているらしい。現にべリンガーのUB802では全数この4580を使用してまとめていた。
またTL072はFET入力の古典的なオペアンプと言われているが、MACKIEではない某プロ機器の技術者の話として、「いろいろ試聴した結果TL072の方が新規のオペアンプよりも自然なサウンドを実現する」との記事を読んだことがある。
結局3種類のオペアンプを使い分け、音作りに関係する場所はTL072と吟味したコンデンサ、抵抗を使用し、それ以外の場所は4580と2068でまとめている。
MACKIEを愛用して音作りの基準にしているミュージシャンも多数いるはずだから、その音作りはしっかり継承されているのだろう。

また機構も大切な要素である。
ガラスエポキシの丈夫な基板を2分割することにより、上面操作パネルを手前に傾斜させ、かつ製品の厚さを薄くすることが可能となる。
このことは操作性を向上させ、副次的には外からの衝撃に対して基板の強度を増やすことになるが、2枚の基板を20本のジャンパー線でつなぐ等、工数は確実に増える。
また底板と左右の側板を一体化してアールを付けたシェル構造の筺体は強度を増し、手にも馴染みやすい。
その他パワーSWの設置、左右 8個のLEDによるピークメーター等も使いやすさを考慮している。
機能的にも大型ミキサーの縮小ではなく、実際の使用形態を吟味した上での機能の取捨選択が行われ、それがマニアルにも反映されている。

少し値は張るが内容はそれ以上の価値を持つ製品だと思う。

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