11/26/2017

エセックス伯のガリアード

リュート 全音新ブレッサン 竹山アルト

本日HRCの練習 2人だけだったので、Kさんがリコーダーをリュートに持ち替えて、リコーダーとリュートの二重奏。
曲はJohn Dowland " The Earl of Essex his Galliard"(ジョン・ダウランド 「エセックス伯のガリアード」)
編集 コンラート・ラゴスニック  編曲 ハンス・マルティン・リンデ これは以前「涙のパヴァーヌ」でも使用した曲集に含まれている一曲。
短い曲だが拍子が変化していくので合わせるのが大変、というか拍子そのものの概念が現代と違うのに、無理をして五線譜に押し込んだような感じ。
楽譜表面の拍子をぎくしゃく追いかけるのではなく、曲本来の流れに乗らなければならない。それが結構難しい。たぶん暗譜が必要かもしれない。
YouTube などでは歌詞付きで歌っている動画もあるので大いに参考にできそうだ。何とか仕上げて年末のクリスマス会のプログラムに加えたいと思う。

リュートの音はギターとはかなり違う、難しそうだが雰囲気があり演奏していて楽しめた。
リコーダーを全音の新ブレッサンに持ち替えてみた。細かい動きの音符が少ないので「取り回しが楽」が有利に働く場面はそれほどないが、問題なく演奏することができる。リュートのKさんの感想は木製の楽器に比べて音に透明感があるそうで、これは演奏している私もわかるような気がする。ただこの曲の場合、音にキシミやニゴリ成分が少し含まれているほうがより適しているのではないかと私は思う。

練習会場は残響もありよく響く、リュートとリコーダーの練習はたっぷり3時間ほど出来た。これはかなり恵まれている環境かもしれない。不満を言ったら罰が当たる。

YouTube の演奏を紹介しておきます。 Julian Bream Consort
The Earl of Essex his Galliard

11/19/2017

新ブレッサン本番で使ってみた

上 新ブレッサン  下 旧ブレッサン

左 新ブレッサン  右 旧ブレッサン

先週後半に待ちに待った全音新ブレッサンが送られてきた。8月末の新作発表会でアンケート用紙に「提出された方には楽器を進呈」とあったので10月末の発売日にもガマンしてひたすら待ち続けていたのだ。
自宅では音をほとんど出すことはできなかったが、表面の梨子地仕上げもしっくり手になじみ、アンダーカット(内エグリ)を施した指孔も押さえやすい配置で、単独パーツで形成されたウインドウエイもしっかり収まっているように見える。・・・・ひょっとしてこれは行けるのではないだろうか。
最終練習で使ってみて問題なければ翌日の本番で使用してみることにした。
曲はパッヘルベルのカノン
演奏者が3人しか確保できないので、通奏低音のパートはiPadのGarageBandでチェロとコントラバスで自動演奏、PA用のアンプとスピーカーで拡大。
上声部の3本のアルトのうち第一アルトをこの新ブレッサンで演奏することにした。
ほぼ同じ楽譜を2小節ズレて演奏するのだが、やはり第一アルトが一番目立つ。
とりあえず演奏してみると音のレスポンスが早く指孔が押さえやすく取り回しが楽な感じ。これは指孔に内エグリを施したことにより音の鳴り始め、鳴り終わりの反応が早くなった。またこの内エグリが副次的に指孔間隔の縮小をもたらしたらしく指の押さえがより楽になった。この結果の為だろう32分音符の連続する場所でいつも少しもたつき気味になるのだが、この楽器だと余裕でクリアできてしまう。ちょっぴり上手くなった様な気持ちになれる。

あまり調子に乗って口先だけでパラパラ吹き飛ばすと、音が軽くなってしまうが、しっかり息を入れるとちゃんと鳴ってくれる。
低音部もよく鳴り全体に揃っている。音色も隣り合った音の差は少ない様だ。ただこの件に関してはまだ2会場でしか演奏していないので、残響の異なる会場でも演奏した上で答えを出したいと思う。


10/14/2017

ウインドウエイ無しのリコーダー


例えばテレマンのリコーダーソナタを演奏する場合、当然の事だがブレッサンのコピーのような楽器が適しているのは言うまでもないだろう。
テレマン自身もリコーダーを演奏し、また良い楽器も所持していたらしく、彼の曲は限界ギリギリの音を要求してくる。それを次々とクリアしていく演奏は爽快だろうと思う。もちろん私の演奏がその境地に達しているわけではないけれど。確かにリコーダーの運動性能は同じエッジトーンの楽器の中では一番だろう。フルート、尺八、ケーナなど運指上特に差異はないとすれば、ウインドウエイの有無が決定的な差を生み出している。
エッジに吹き付ける空気の流れを唇や口蓋で形成しなければならないフルート等と異なり、リコーダーの場合はこの部分がすでにウインドウエイとして形成されている為、発音が素早く簡単にできるのだ。
しかし良い事だけではない、ウインドウエイが固定化されていることは、変化させる事が難しい、
リコーダーの最低音と最高音ではエッジに当たる空気の流れの角度、太さ、速さ等の最適値が異なるだろう、これを固定化するのだから両者の平均値的な設計とするしかなく、さらに言えば最低音最高音を含む全ての音に対しても最適値ではなく近似値でしかないわけだ。
さらに細かく・・吹き出し口とエッジとの距離も変化が必要
音の 鳴り始め、途中、鳴り終わりにも変化が必要・・キリが無い!・・
そして実際の演奏は表現として最適値以外の音もバンバン使う。
リコーダー奏者には息の強弱コントロールのみ残されている。これでかなりの部分が解決可能性かもしれないが、当然不満は残る。

テレマンではなくダニーボーイをソロかギター伴奏で演奏すると考えてみる。
低音部の充実、中音部の歌うような柔軟性とメリハリ、最高音は感情の詰まったピアニシモ
これをアルトリコーダーで表現するとなると困難が見えてくる。

いっそリコーダーからウインドウエイを取り去ってみたら。との思いで組んでみたのが写真の楽器  アルトリコーダーの頭部管を取り去り、代わりにケーナの発音部分を取り付けた。

ケーナはG管と呼ばれ、音域も足部管のないアルトリコーダーと考える事ができるので、そのまま利用した。
リコーダーは全音のブレッサン(旧)、ケーナはマルセロ・ペーニャ(ボリビアタイプ)を使用

接合部では両者の内径の差が1.5mmほどあるが今回は無視する。(ケーナの方が太い)
接合方法も真鍮パイプなどで抜き差し調整可能な方法が必要だが、とりあえずガムテープで固定した。

試奏
音程 エッジの位置をリコーダーとほぼ同じ位置としたが、大きく外れることは無く、リコーダーと同じ運指で演奏できる。
音色 ボリビアタイプケーナ特有の大口径指孔の明るい大音量ではないが、ちょっとくすんだ音でリコーダーとは明らかに違う。音の変化はつけやすい。

評価するにはもう少し習熟する時間が必要、再度報告するつもりです。

8/31/2017

ブレッサン415Hz予想は大外れ


新ブレッサン発表演奏会にバロックピッチ(415Hz)に違いないと
期待を持って出かけたのだが、残念ながらモダンピッチであった。トーンホールのアンダーカットやウィンドウェイの一体成型、複雑な内径の再現、外観もオリジナルに似せて曲面を使用、ツヤ消し仕上げ。G-1AのGはGiglio (百合)の略で発音は「ジリオ」で良いのかな。新しいシリーズになるらしく、担当者に確認したところ A はアルトの意味らしい、するとSとかTの文字が付くことになるわけだ。
ヴォイシングが間に合わなかったとの事でずらりと飾られていた新ブレッサンは全てモックアップで試奏できなかったのは残念。

バロックピッチだ!などと軽薄に騒ぎ立てていたのは私だけだったようで、ちょっと恥ずかしい、しかし商品コンセプトの説明の中で「バロックピッチの替管も考慮している」との発言には思わず拍手してしまった。

平尾重治氏、竹山宏之氏など出席した開発秘話では、トーンホールの内管側をえぐるアンダーカットの有効性。複雑に変化する内径の再現の難しさ、木管の内径修正は削って太くなる方向での修正となるが、プラスチックは金型を削るので、逆に細くなる方向での修正となる。など現場に直接かかわっている方達の話は興味深かった。

後半の演奏はこれだけの豪華奏者を揃えて楽しくないわけがない、タップリ楽しませてもらいました。前面に並んだプロの奏者達、皆微妙に演奏スタイルが異なるのでこれも実に興味深かったデス。

最後にアンケートを書いていたら「提出された方には楽器を進呈」とある。 これはすごい!期待します。

8/25/2017

新ブレッサンG-1A

発端は樹脂製モダンピッチのアルトリコーダーにバロックピッチの替管を3Dプリンターで作ることを検討していた。そのためベースとする楽器に全音ブレッサン1500BNを選び、モダンピッチの楽器としての性能を確認してみた。
前回のブログでも書いたが、ブレッサン1500BNの性能は十分に高いと考えられる。高音域の音も苦労することなく出せるし音程も正確。プラスチック製であることによって音質が少し異なる(聞き分けるのが簡単ではない)
手触り感が木製より劣る、などの点はプラスチック製の楽器であることから仕方のないことだ。そんなところへ新ブレッサン発表のニュースが飛び込んできた。

8月29日に発表される新ブレッサン1600Bはどこが違うのだろう?私は非常に興味があったので、「お披露目演奏会」を聴きたいと思った。「季刊リコーダー」で席を確保できるということで早速申し込みOKとなった。

何が変わるのかいろいろ想像してみる。
1、楽器の色やデザインが変わる
2、形状を再設計して音がさらに出しやすくなる
3、プラスチックの材質を変えてより高級感を持たせるとともに音質も改善する
4、音域をさらに広げたスーパーリコーダー
5、モダンピッチではなくバロックピッチ( 415Hz)の楽器

1〜3は現行のブレッサン1500BNの性能がそれなりに充実していると思うのであまり意味がない。
4のスーパーリコーダーは面白いが「ブレッサン」の名前を引き継いでいるし、演奏プログラムを見ても、それらしい曲が見当たらない。
結局 5 のバロックピッチではないだろうか。そう考えてみると、プログラムではチェンバロやヴィオラ・ダ・ガンバ    を揃えているし、リコーダー奏者のそうそうたる顔ぶれも納得できる。曲もW.Williams J.Ch.Shickhardt などいかにもそれらしい曲が並んでいる。ただW.A.Mozart の「私は鳥刺し」・・・など5曲はソロではなく多分四重奏で演奏されるだろう。アルトパートは当然新ブレッサン(415Hz)他のパート ソプラノ、テナー、バスはバロックピッチの既存の楽器、しかしこれではパンチが足りない。
想像をさらに一歩進めてみる

ソプラノ、テナー、バスは全音が開発中の(415Hz)シリーズ試作品ではないだろうか。新ブレッサンG-1A   「G-1A」の部分が新たなシリーズを思わせる。

Facebook でHK氏が全音に問い合わせたところ10月25日発売で ¥3200 とのこと。この価格だとモダンピッチかもウーン!


期待が大きいだけに想像もどんどん膨らむが、あとは当日のお楽しみ。

8/05/2017

全音ブレッサンの評価


全音ブレッサン(1500BN)を入手した。415Hzの替管を3Dプリンターで作るつもりなのだが、そのベースとなる楽器として選んだ。
替管を付けての評価は、元の楽器自体の評価がちゃんと確認されていなくては意味がない。

樹脂製アルトリコーダーも色々な種類があるが、これはバロック時代の製作家ブレッサンの楽器を採寸して設計に反映させているそうだ。

音程をチューナーで確認してみるとほぼA=442Hzでほとんどの音がセンターを示す。オクターブ高くしても高い方にズレたりせずほぼセンターを示すのは優秀と言える。
高音域の音も比較的安定して出しやすいようだ。(個々の音の最適な息の量や速さは現行の楽器とは微妙に異なる)
指穴もそれほど不自然なところがなく、現行の楽器から大きな違和感なく持ち替えて可能。
楽器本体がプラスチックなため、手で持って構えると少し滑りやすい
唇にも違和感。
音の鳴るポイントが少し遠いような気がする(右手の薬指付近)
音によっては楽器自体がブルリと振動するように感じることがある。
高音域の音が比較的バラつきなく出るせいだろうか、それに安易に頼って発音するせいか、高音の連続するフレーズの音の輪郭が竹山ほどハッキリしない。言い換えれば「ソフトに聞こえる」これは材質の違い(竹山はローズウッド)が原因かもしれない。以上演奏してみて感じた点をまとめてみた。

早速HRCの練習に持ち込んで試してみた。

コレッリのソナタ (アルト2本とバスリコーダーの編曲) の第一アルト
スタートからブレッサンで演奏してみる。楽器が滑りやすく、音の立ち上がりが少し異なり、あせりながら演奏した。ところが他の2人の奏者はいつもの楽器と異なっていることに気付かない様子。第一楽章が終わってからそのことを告げると「楽譜に気を取られて気付かなかった」と言い訳めいた発言だったが、今までの演奏とほとんど同じに聞こえたと言うことだろう。演奏している方からすれば、苦労して演奏しているわけだし、発音ポイントも異なるし音色も違っているはずなのに納得出来ない。

簡単なブラインドテストをやってみた。
目をつぶってもらい、適当な曲を演奏し、楽器を交換して同じ曲をもう一度演奏し、楽器を当ててもらう。意外にと当たらない。
演奏する方からするとこんなに違うのにとの思いがあるが、聞く方からすればそれほど差は無かったことになる。  

楽器に習熟すれば克服できる部分
指や唇の違和感、個々の音の最適な息の量や速さ、サミングのやり方、などは楽器に慣れればほとんど解決できる。
しかし材質が木であることによる安定した触感、「音の輪郭、音の粒立ち。音の芯」など表現感じ方の違いはあるが「音色」に関する部分は違いとして残ると思われる。
発音ポイントが(右手の薬指付近)などと書いたが、竹山はもう少し近く左手の中指付近)と感ずる。双方の楽器の音響的構造はほとんど同じはず、つまり発音される場所は、ラビユーム付近、各指孔、先端の穴であり、音量や音色の差がそのような遠近を感じさせていると考えられる。

リコーダーオーケストラ
リコーダー演奏において音色などの音の個性、は非常に重要な要素だと思える。しかしリコーダーオーケストラなどの集団ではそれぞれの楽器の個性はなるべく抑え込んで集団としてのハーモニーが優先される。だとすれば個々の楽器の個性を抑え込む努力をするくらいならいっそアルトパートは全員「ブレッサン」を使用する。ついでにソプラノやテナーパートも性能の良いABS樹脂の楽器選んでを選んで統一を図れば美しいハーモニーへの近道かもしれない。

・・・・この文章をまとめている時びっくりするニュースが飛び込んできた。全音が新ブレッサン(1600B)を出すとのこと。山岡重治氏と竹山木管楽器製作所との共同設計だそうだ。8月29日には近江楽堂で新製品発表会がある。聴いてみたいですね。今のままでもかなりいい線なのに音色や音の粒立ちまで踏み込んでの改良なのだろう。 大いに期待しましょう。

追加
今日もブレッサン1500BN と竹山(ローズウッド)を比較してみた。かなり高性能、付属の運指表には載っていないが先端の穴を塞ぐ いくつかの高音も出すことができる。これ以上何を変える? 樹脂の材質を変える?・・考えにくい
ひょっとしてブレッサン1600Bはバロックピッチ(415Hz) の楽器ではないだろうか。
新製品発表会は近江楽堂、ガンバ、チェンバロ、錚々たる演奏家たち・・これだけそろえばやはりバロックピッチしかないだろう。



7/30/2017

3D プリンターとリコーダー


リコーダーを愛好し、工作が好きとなれば、リコーダーを自分で作ってみたいと思うのは当然の流れかもしれないが、旋盤などで木を削って作るのは極めて敷居が高い。しかし最近は3Dプリンター が使えるので色々な造形が可能となる。これを利用してリコーダー関連のgoodsを楽しむことも出来そうだ。プリンターは自身で購入しなくても。3Dプリンターやレーザーカッターなどを備えた工房で請け負ってくれるようだ。
シェードのような三次元の図面を作れば発注できるらしい。
細目は工房との打ち合わせが必要になるが、とりあえずやってみたいことを列挙してみる。
1.バロックピッチ用替え管 
バッロック期のソナタなどの演奏はバロックピッチと称するA=415Hzで演奏するのが一般的になっている。これは当時バロックピッチの標準が決められていたわけではなく色々なピッチが存在していたらしい。モダンピッチをA=440Hzと決めた時にそれに対応するかたちでバロックピッチをA=415Hzとした。これだとチェンバロなどバロックピッチからモダンピッチに変更する時、弦と鍵盤の関係を半音分ずらすだけで良い(実際はそんなに簡単ではないが)
 リコーダーでもモダンピッチの楽器からバロックピッチへ持ち替えてみるとガラリと雰囲気が変わる。もちろんバロックピッチの楽器を購入すれば良いのだが、使用頻度と費用を考慮すると尻込みしてしまう場合も多いと思われる。ヤマハ、アウロス。ゼンオンなどがバロックピッチのプラ管を出してくれれば良いのだが数量が望めないので、腰が重いようだ
 そこでバロックピッチ用替管が浮上する
リコーダーは通常3分割できる。頭部管、中部管、足部管である。 このうち中部管だけでサイズを変更して長めに作り、頭部管、足部管はそのまま流用する。これを組み立てれば全長がバロックピッチの楽器と同じになる。本当は頭部管も足部管も少し大きく作り変えるべきなのだが、構造が複雑だったりして困難なのでそのまま流用し、大きさの不足分は中部管で補うわけだ。
ヤマハのバスリコーダーではバロックピッチの替管が存在しているし、アルトリコーダーでも中部管が長短2種類付属していて、モダン/バロック両対応の楽器も見た事がある。

2.アルトリコーダー頭部管を利用したルネッサンスタイプのG管  円筒状の中部管を作れば良い。
3.バスリコーダー直吹き用キャップ。 ・・・・その他

想像だけなら色々アイデアはあるが、実際に体験してみなくてはわからない。まず三次元の図面を作れなければ(道は遠いネ!) さらに3Dプリンターに過大な期待はもってはいけない。市販のABS樹脂の射出成型品と3Dプリンターで固めた樹脂品では、強度、仕上がりとも後者が劣るのは必然だろう。

とりあえずABS樹脂製のリコーダーを購入した。全音のブレッサン、この楽器に合わせてバロックピッチ替管を作る予定。この楽器の性質を知るためしばらく現行の竹山(ローズウッド)と並行して使ってみるつもり。

写真は私の現役楽器 竹山(415Hz),竹山(442Hz),新規ゼンオン ブレッサン
バロックピッチは少しサイズが長いのがわかる。

7/11/2017

ペルーの歌手と「花祭り」


次の16日(日)はワープの発表会だ。以前のブログにも書いたことがあるが、ウクレレやリコーダー、歌や踊りなど、もちろんピアノやヴァイオリンなどもある。実に多方面の方たちが集っているのだ。発表会は昼過ぎから開始で、夜の8時頃まで続く。

私もフォルクローレグループの一員として参加させてもらっている。私たち今回の演奏は「ペルーの太陽」、「花祭り」の2曲のみ、練習時間の関係もあり、ちょっと寂しいかもと思っていたが、ニュースが飛び込んできた。
なんとペルーの歌手が花祭りを歌ってくれることになったのだ。もちろん私たちのグループだけの為ではなく他のグループとも共演することになっている。このあたりがワープのすごいところ。
9日は1週間前の最終練習だった。ギターのIさんに来てもらい、事前準備、「花祭り」は間奏を含む少し凝った構成だったが、「単純な方が良い」とのIさんのアドバイスに従って変更、前奏を含んで2回繰り返すことにする。あとキーを変更する可能性ありとのことで、楽譜はC major(ハ長調)だったので急遽G major(ト長調)も練習してみた。急に変えるのは大変!バタバタしている所へ歌手のSさん到着、通訳の方を伴っている。歌手らしいがっちりした体型だが気さくな「おばさん」という感じもある。
とりあえず「花祭り」を演奏してみる。彼女も声を出して歌っていたが、低くて歌いにくそうだ。通訳の方も音楽に精通していないのでいまいちはっきりしないのだが、日本語も少し交えて話すSさんはキーを上げてほしい、「私は ✖︎✖︎✖︎か(聞き取れない)ラ✖︎✖︎です。」のように私には聞こえた。ラ✖︎✖︎はA major の意味ではないだろうか。
ならばGmajorでもいけるのではないか。演奏してみると調子よく歌っている。当たり前のことだけど我々がカタカナで歌うのと別な世界。
声がきれいとか迫力がある、とか単純に表現できるわけではなく、本物の世界としか言いようがない。ケーナは力むことなく、ゆっくり流れに乗ればよいのだ。終わったらSさんも拍手している。これで良いのかもしれない。
ほかの歌もやりませんか。ということで2曲提案があった。コンドルパサすぐわかった。「コンドルは飛んでゆく」だ。もう一曲はよくわからない。説明ではくちばしの長い鳥だそうだ。鶴、サギ、それともコウノトリ?・・わからない。コンドル・・・を歌ってもらった。これもなかなか良い。でももう時間切れ。他のグループとの練習があるとの事。本番はきっとうまくいくはず。別れ際にペルーの観光パンフレットを頂いた。大きな地図や観光地の写真が載っている。ペルーに行ってみたいね。説明文の日本語がちょっと「つたない」のがかえって興味をそそるようだ。

写真は頂いたパンフレットの地図の部分を広げた。ケーナは本番で使用する大福印

6/18/2017

フレンドシップコンサートを終わって

リハーサル風景

今回で13回だそうで、練習の合間にお茶を飲みながら、クリスマス会から独立して開催するコンサート名を「フレンドシップ・・・」と決めていたのが、ほんの先日のような気がします。もう13年も経ってしまったのですね。皆勤賞のグループもいくつかのあるわけで、その積み上げの上に今回の演奏があると思うと充実感のある演奏が目白押しだったのもわかる気がします。HRCも今回はアルト2本と通奏低音はバスで演奏してそれなりの成果は出せたし、一歩前進できたと思います。しかし、この分野で先行しているグループの実力を思い知らされることにもなりました。

新しい会場
今回より会場が新しくなりました。
建て替えでは無く、内装とか椅子が変わりました。
観客席の椅子は新しくなりました。また観客席の舞台に近い部分は移動式の椅子になり、空間を作ったり、オーケストラビットのように使用できます。ただ今回この移動した椅子を演奏用として使用するつもりだったのですが、使い勝手が良くない。右側にひじ掛けがあるため演奏の邪魔になてしまう。それを避けるため浅く腰掛けてみたのですが、座面が傾斜しているためなのでしょう、おしりが奥に滑ってしまう。やはり演奏用の椅子は別途必要でしょう。今回に関しては、舞台下に置いてあった古い椅子を使用しました。
残響は悪くないと思います。舞台後方の音響反射板や場内壁面の材料が変わったため改善されたのでしょう。観客席後方でも音は良く聞き取れたと聞きました。
会場の規模も大きすぎることは無く、リコーダー演奏にはちょうど良い大きさと思います。

録音
今回も録音の担当でした。
初期の頃は自分たちの演奏がカセットテープやMDの録音では無くCDに焼かれるのは少し先端でカッコいいことでした。お年寄りのグループから「CDは使えないのでカセットテープに出来ないだろうか」との依頼をうけたことがあります。時代は移り、今ではインターネット上のサーバーに演奏のデーターを入れておき、各自でダウンロードして聴くということになるのでしょうが、PCが使用できない方も当然いるわけで、やはり今まで通りCD-Rに焼き付けて参加グループに配ることになります。

今回から録音の方針を変更しました。
今までは残響を伴った美しい音を録音すべく、舞台から少し離れた位置に高いマイクスタンドを立てコンデンサーマイクやミキサーも併用して録音していた。しかしこれは場内の騒音や空調の音を拾いやすく、必ずしも良い結果になるとは限らない。この際残響を伴った優美な音はやめてリアルな音に徹してみよう、自分達や他のグループの演奏をを色々評定する場合、その方が良いと考えたわけです。
録音の位置は観客席最前列、録音の入力レベルはなるべく高く、録音機付属のマイクもこの条件だとご機嫌です。
CDへの編集作業も簡略化しました。音量が小さめの録音はノーマライズ(正規化)で標準のレベルに揃え、あとは演奏部分をバサバサ切り取り順番に並べて完了。
以前は曲間の時間とかノイズを適正に処理していましたが、CD全体を通して鑑賞することなど多分ほとんど無いであろうとの思いからこの種の処理は大幅にカットしました。

演奏の録音データを頒布するという意味では前述のダウンロード、あるいはDVDなどより大容量の媒体や圧縮技術を使えば簡単になると思うのですが、音楽愛好家の間では一般的ではないような気がします。今回は偶然に太陽誘電"That's" ブランドのCD-Rが入手できました。国産最後のCD-Rで残念ながら既に生産中止になっています。参加グループに一組(3枚)配られます。
また今回初めての試みですが、DVD-Rによるデータデスクも作成しました。各グループの演奏データ(wav)を順番に並べただけです(動画はありません)。CDプレイヤーでは使用できないのでパソコンでの使用が前提となりますが、1枚で全てのデーターが収まるのは便利です。容量に余裕があるのでプログラムのPDFやリハーサル中の写真なども入れてみました。

使用機材
録音 Roland R-05
サウンド編集ソフトウエア Audacity 2.0.6
データー書き込みソフトウエア Nero 9
CD-R     太陽誘電
DVD-R  三菱化学メディア


写真はリハーサル風景、観客席は一部移動式、録音機は最前列中央

舞台上ではメック社の最新コントラバス(我々の命名したあだ名は「アナコンダ」)が見える。

5/28/2017

スタンド製作

楽器に取り付けた状態

フレンドシップコンサートにドルネルの組曲2番を予定している。私はバスリコーダーを担当するが、楽譜が簡単ではないだけに、楽器の保持に問題がある。専用のストラップで吊ってあるが、押さえ方によって微妙に楽器が回転してしまうのだ。一緒にクルークの角度もズレてしまう。
練習を重ねて楽器に慣れるのも大切だが、この際楽器を床に立てる事ができるスタンドを作ってみることにした。このスタンドについては某家具製作所が注文を受けていて私の周囲でも使っている方が何人かいるようだ。がっしりして使いやすそうだ。しかし値段が少々・・・
そこで工作人間を自認する私としては自作してみる事とした。
制作の条件として
・形状は独自のものとする
・木製とし、ビスや蝶番の金属類は使用しない
・最低音(F) に影響を与えない
・折りたたんで楽器ケースに入れられる。
構造の概略
側板3枚(二等辺三角形)で楽器底部とセンターブロック部分を挟み込み、輪ゴムと紐で固定する。
最終仕上げを待たずとりあえず練習で使用してみた。きわめて良好。
指が楽器を支える業務から解放されるためだろう。バスリコの腕が上がったように感じるほどだ。
また楽器のセンターで支える構造も安定感に寄与していると思われる。

スタンド製作
材質 航空ベニア  厚さ 2mm(フィンランド樺材)
木製パイプ 外形15φ内径9φ(ブナ材)
丸棒 9φ  (ヒノキ材)
テトロンロープ 3mm

単板では窓をあけると割れる事があるので、2mm厚の航空ベニア(4枚張り)を3枚貼り合わせ6mmとした。そのため12枚張り合わせた合板ということになる。ちょっと贅沢だが、安心感は増大する。国産のシナベニアでも問題はないと思う。
リコーダーの先端部分は曲面であり、そこを3枚の側板で挟み込む構造のため、図面でその部分のサイズを決める事は困難なので、ダンボールで側板を試作し、側板の大きさを決定した。リコーダーを挟み込む部分は概寸として作業を進め、最後は楽器を当てながらヤスリなどで微調整する。同様に側板のセンター軸への取り付けも組み立てやすさやガタつきの許容度を考慮しながら決める。
側板の概寸
側板の概寸
側板の板取  2mm厚でもカッターでの切り取りに苦労するから直線で切る。9枚必要
中の窓は3枚貼り合わせてから糸鋸で切り取る。
補強リングも三角スペーサーも端材より切り取る、糸鋸で良く切れる

センター軸は外径15φに内径9φの穴が貫通している(ブナ材)長さ90mm これに航空ベニア3枚を張り合わせた補強リングと三角スペーサーをボンドで固定する。
ポールは10φのヒノキ材を用い、片方の端4cm程度を9φ程度に削りセンター軸にはめ込めるよう加工する。
側板のセンター軸への取り付けは試行錯誤の結果
下側はゴムバンドで弾力をもたせて軽く締め付け、上端は楽器への取り付けを確実にするため、ロープで締める。
ゴムバンドは100mm×6mm×1.1mmを100円ショップで購入、
ロープは3mmのテトロン、それにロープのストッパーを使用した。
パーツ一式

楽器と接触する部分にフエルトを使用することも考えているが、合板によって強度は十分だが、表面の樺材は当たりが柔らかく、フエルトなしでも良いのではないかと思う。最終仕上げは表面硬度をあまり上げないためオイルフィニッシュとする予定。




5/27/2017

ドルネル 組曲2番

ドルネル 組曲第2番 表紙

フレンドシップコンサートの演奏は事情により3名での演奏となった。
以前ドルネルの組曲の一部をやった事があるので、3名ならできそうだ、そんなことで決まったドルネル 組曲2番
組曲なのでいくつかの小曲が並んでいる
 1プレリュード  2アルマンド  3ロンド  4サラバンド  5ファンタジー  6シャコンヌ  7リゴドン
このように並べると難しそうな大曲に思えるが、みんな短い曲ばかり、単独で演奏するには短すぎる、このような組曲であってこそ、その存在価値がある。前奏曲があり、小手調べ、自己紹介・・シャコンヌがメインデッシュだろう、最後リゴドンは終曲 「終わりました、いかがでしたか!」 途中ちょっと短調になり反省もある。フルコース料理のようだ。

私は今回バスパートを志願した。以前やった時はアルト 1のパートだったが、今回バスに挑戦してみたくなったから。
楽譜の表紙を見ると2本のフルートあるいはオーボエあるいはヴァイオリンと通奏低音とあり、楽器の限定はない。だからリコーダー2本で演奏しても一向に構わないのだ。原調はシャープ3つのイ長調それをハ長調に転調してある。これは問題ない。
しかし通奏低音をバスリコーダー1本で演奏する・・・これが多くの問題をはらむことに気がついた。通奏低音はヴィオラ・ダ・ガンバやチェロのような大型絃楽器とチェンバロを想定していると思われる。チェンバロがしっかり低音部を補強しチンジャラ、チンジャラとリズムも刻んでくれる。ガンバはたっぷりした持続音でそれに応え、高音域に駆け上がって上声部と絡みあっても相手を圧倒することなく、音色や音量を自在にコントロールできる。
ところがバスリコーダーだと高音のフレーズが倍音を含まない妙に薄っぺらな音になってしまう。さらに最低音に下がりFとかGを「ボン!」と鳴らしたいのに「スカ」情けない、ガンバやチェロだと「グワン!」と胴鳴りで響くのに。
先日演奏を録音して聴いてみた。
まだ所々にミスが出るのは仕方ないとして、上声部2本のリコーダーを通奏低音がしっかり支え引き立てる構図ではなく、リコーダー3重奏のように聞こえる。低音で支える部分がごっそり抜け落ちているからだろう。
通奏低音をバスリコーダー1本で代用するのは無理なのだ。
今回は3重奏で行くしかないだろう。

参考のためドルネルを調べてみたが、あまり情報は伝わっていないようだ。残された曲もあまり多くはないらしい。
素晴らしいテクニックで演奏して聴衆の賞賛を浴びるような曲では無く、音楽好きな仲間が楽器を持ち寄り演奏を楽しむ。そのような目的で作曲されたように思える。

それは演奏をどれだけ楽しんでいるかを問われることでもあり、私たちにとって難題かもしれない。当日の演奏プログラムで私たちの演奏は一番最初、会場の設営などでバタバタした直後だけれど、気持ちをサッと切り替えて、できれば遊び心を持って演奏開始したいと願っています。

5/20/2017

第13回フレンドシップコンサート


6月3日 はフレンドシップコンサートです。
本来なら3月に開催されてきたのですが、今回は会場改修のため6月になったのです。
今までは観客席の椅子が古かったりエアコンの音が聞こえたり いろいろ不具合もあったのですが、かなり良くなっているのではないでしょうか。楽しみです。
チラシと各グループの演奏順を掲載します。演奏開始時間も書きますが、これはあくまで目安と考えて下さい

1 平尾リコーダークラブ                         13:00
2 Le☆Jupiter                                     13:20
3 ウインドベル                                     13:40
4  たまの音楽家                                   14:00
5  ジャスミー                                    14:20
6  厚木リコーダーアンサンブル       14:55
7  リコーダーアンサンブル チエルアルコ      15:15
8  Ricco Suono                                     15:35
9  全体合奏                                          15:55
10 リコーダーアンサンブル Gクレフ          16:30
11 アンサンブル”奏”                                      16:50
12  リコーダーアンサンブル ぴぽ                   17:10
13  ゲスト演奏                                       17:30
  <<順番訂正しました>>

演奏曲目は「秘密?」各グループ練習中と思われます。
HRC(平尾リコーダークラブ)は
ドルネルの「組曲2番」を演奏します。これに関しては別途ブログでも書く予定です。

5/10/2017

「ハートソング」:作曲家アントニオ・ヴィヴァルディとある少女の物語

 

「ハートソング」:作曲家アントニオ・ヴィヴァルディとある少女の物語 / ケビン・クロスリー=ホランド/文 ジェーン・レイ/絵 小島希里/訳 

爛熟期(1700年代)のベネツィアには貧しさなどの為、産まれた子供を育てられない母親が、子供を捨てる施設があった。
その一つが救貧院ピエタ(注1)、そこには音楽院も併設され、才能を認められた少女たちは教育を受け「音楽隊の娘たち」として演奏活動を行うのだ。
少女達のヴァイオリン教師としてアントニオ・ヴィヴァルディは40年近く色々な資格で教えたが、彼の他にもフランチェスコ・ガスパリーニ、ドメニコ・スカルラッティ、ベネデット・マルチェロ、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツなど当時一流の音楽家達が名を連ねている。ヴィヴァルディだけではなく多くの音楽家が関わっていたのだ。
外部から音楽のレッスンを受けに貴族の娘なども通っていて、音楽学校のような役割も果たしていたらしい。
ヴィヴァルディは当然超一流であるが、当時の他の一流音楽家に混じってしまうと特別に目立った存在ではなかったのかもしれない。ヴァイオリン教師としての契約も一時途切れた事が知られている。
しかし現代の我々からすれば40年近く関係を持ち、ピエタで演奏したであろう多くの曲を残しているのだからピエタとヴィヴァルディの関係は絶大であり、ヴィヴァルディを通してピエタを理解するのも、決して的外れではないと思う。
以前書いた「ピエタ」 大島真澄 ポプラ文庫ではヴィヴァルディとヴァイオリン協奏曲集「調和の霊感」そしてエミーリアとアンナ・マリーアの2人の女性を中心として話が進められたが、今回の「ハートソング」では口のきけない少女ラウラとリコーダーそしてアントニオ神父(ヴィヴァルディ)を中心として話は展開して行く。
楽器をヴァイオリンでなくリコーダーとしたところに、この小説の性格が定まり、
もし他の楽器、例えば ヴァイオリン、ファゴット、オーボエでは別の流れになったと思われる。
もちろん実際にリコーダーを教えたのはヴィヴァルディ以外のリコーダー教師だろう。

あとがきによれば当時ピエタには800人ほどの子供が収容されていた、そのうち男子は60人ほどでやはり女子が圧倒的に多く捨てられていたのだ。
そんな中で音楽の才能を認められ「音楽隊の娘たち」として教育を受け演奏活動が出来るのは     ほんの一握りでしかない訳で、選ばれなかった子達の羨望や妬みは当然だし、「音楽隊の娘たち」に選ばれたとしても今度は内部の序列競争が激烈なのだ。 第1リコーダー スザンナ、第2リコーダー シルヴィア そして新たに加わったラウラ、彼女の上達でシルヴィアが嘆く場面がある。しかしそのような緊張感だけではなく、彼女たちを育てる事を断念するしかなかった親への思いは全ての子に存在し、それが一種の連帯感のような友情を生み出していたに違いない。
ピエタは外部には簡単には出られなかったが、施設の中では800名もの少女たちのおしゃべりや場合によっては喧嘩そして楽器の練習の音が満ちていたのだろう。

最初に読んだ時、比較的短い本なので、リコーダーを練習するラウラとアントニオ神父の物語として簡単に結末まで進んだ。しかし結末が少しピンボケのような気がした。
少し時間を置いて読み返してみた。なんだ裏側の流れもしっかり書き込んである。これなら納得。表面の流れを追うあまり、裏の流れが全く読み取れてなかった。私も石頭の頑固ジジイに近づきつつあるのだ。

気になる場所があった、「アルカンジェロ・コレリのカンタータを練習している」との記述だ。
あれ?コレッリにカンタータなどあったっけ? 確か楽譜は存在していないと思う。
しかしこのような記事を読んだことがある。・・・・・以下引用
コレッリの指揮
バッハと同年生まれのジョージ・フリデリック・ヘンデルは、弱冠23歳であったイタリア時代にオラトリオ《復活》(正式には《われらが主イエス・キリストの復活》)を発表しています。この作品は1708年の復活祭(4月8日)にローマのボネッリ宮で初演され、好評を博したため再演されていますが、初演で指揮をしたのはほかならぬアルカンジェロ・コレッリであったと伝えられています。

キリスト教と音楽  ヨーロッパ音楽の源流をたずねて  金澤正剛 音楽之友社
《メサイア》誕生物語  ・・引用ここまで

コレッリがヘンデルのオラトリオの指揮をしたという事だとすると、コレッリ作曲のカンタータというのも十分あり得る話だと思う。作者の想像力だけで書いたのではなく、何か文献の裏付けがあるのだろう。

当時のヴェネツィアの様子をもっと書き込んで欲しいとの思いはあるものの、最小限の記述に止め、ピエタとヴィヴァルディとの確執もバッサリ切り捨て、
ピエタそのものについての記述、全体の規模とか男女の比率、入所の方法、など細かいようだけれども、それを知る事により、ピエタがぐっと身近に感じられてくる、そして「後書き」で知ったのだが、ヴィヴァルディの生家とピエタが100mぐらいしか離れていないとの事、不思議な気持ちにさせられる。
添えられている絵が秀逸 、実は文章よりも絵の方が先行したとのこと、納得できる。
ヴィヴァルディのリコーダーコンチェルトも他の楽器と同様にソロ奏者に至難の要求をしている。口うるさいヴェネツィア市民の喝采を取るにはそれが必要だったし、それを演奏できる少女たちが存在したと言うことだろう。
現代の私たちがこのリコーダーコンチェルトを演奏するのは余程の覚悟が必要だが、この本を読むのは比較的簡単。ピエタがぐっと近づいて来る。おすすめです。

(注1)
正確には「ピエタ病院附属音楽院 Seminario musicale dell' ospidale della Pieta」

当時ヴェネツィアにはこのような施設はピエタを含めて4つあった。

3/10/2017

電子打楽器を演奏会で使用してみた

iPADmini  plugKEY  青いマイクケーブル

3月5日 個人のお宅での演奏会に出演させてもらった。二部屋つなげて演奏会場としたが、20名以上お客さんが入っていたから、ギッシリという感じ、音の響きは少なく、手前の部屋はともかく、奥の部屋までしっかり音が届いたかは少し心配。
次回はフルートの演奏とか紹介していたから、定期的に演奏会を開催しているらしい。
羊は安らかに・・とか日本民謡メドレーのような少し難しい曲もあったが、最近、他でも演奏したので、まとめる事が出来た。
私にとって今回の課題は電子打楽器を成功させる事。
EWIやEL(エレクトリックリコーダー)電子打楽器など機材を揃え、練習でちょっと使い、blogに書いても、それだけではあまり意味がない。実際の演奏で使用し、他の演奏者や観客にその価値を認めてもらう事が大切。

プログラム
愛の挨拶・・・エルガー作曲 積志リコーダークラブ編
羊は安らかに草を食む・・・J.S.バッハ
アニーローリー・・・スコットランド民謡 C.Yazawa 編
ロンドンデリーエアー…アイルランド民謡 C.Yazawa 編
りんご追分 米山正夫 作曲  高梨編 (クラリネット、ギター)
鈴懸けの径・・・灰田有紀彦 作曲 (クラリネット、ギター)
ナツメロメドレー  高梨編
青い山脈  服部良一 作曲
知床旅情 森繁久弥 作曲 菊池雅春編
浜辺の歌・・成田為三作曲 菊池雅春編
一匁の一助さん・・広島地方民謡 北爪やよひ編
日本民謡メドレー  金子健治編

機材
iPad mini  そして新兵器 plugKEY
アプリは
GarageBand (Chinese Kit) (Classic Drum Machine)
を使用した。
アンプ、スピーカーはMACKIE SRM150 アクティブPAシステム

plugKEYの導入でiPadの出力を標準6.3mmプラグとマイクケーブルでPAシステムにつなげるのが心強い。
現場での機材の配置の自由度が増すし、動作も安定する。
そしてiPadのバッテリー残量を気にしなくてもよい。

「1匁の一助さん」
アプリはGarageBandの(Chinese Kit)中央に「木魚」が5個もならんでいるので使ってみた。他に中国の太鼓やシンバル、そして大きなドラも、しかしこの曲は一番目立つのが打楽器パート、そして全体の骨格も打楽器が決定する。だからかなりの打楽器スキルが要求され、私にはまだ荷が重いのは当然かもしれない。最後に「グァーン!」とドラを鳴らして笑いを取ったが、まだ修行不足でした。

「りんご追分」「鈴懸の径」
アプリは(Chinese Kit) (Classic Drum Machine)を使用
クラリネットソロにギター伴奏だから必要だと思える場所に「木魚」「シンバル」「拍手」などを小さめの音で加えてみた。本物の打楽器のように目立ったり音が大きかったりはしないが、曲にしっかりメリハリはつけることが出来たと思う。
plugKEY自体に出力可変のVRがあるので曲がフェードアウトで終わる場合もしっかり対応できた。
演奏者からは「演奏しやすかった」との言葉ももらえたし、観客から打楽器への質問も出たので、効果は十分あったと思う。


実際の打楽器・・マラカス、シンバル、拍子木などの代用品ではない、比較的音の小さいリコーダー合奏に微小な電子音のリズムを加える効果について新しい世界が開けているように感じた。もう少し実験を続けてみましょう。

2/03/2017

iPadを楽器に


打楽器用機材の結線

北爪やよひさん編曲の民謡に「一匁の一助さん」がある。S,A,Tと打楽器の組み合わせで軽快な曲だが、11月地域の文化センター演奏会で演奏した。打楽器パートが私に割り当てられていた。
私としては電子打楽器を利用するとの目論みはあったのだが、演奏日までの時間的余裕が少なくアプリや機材などに不足もあったので、wood blockなどを借りて演奏した、複雑なリズムを要求される編曲で、焦って演奏していると膝の上に置いた楽器が滑って移動してしまう。焦りまくってモタつく様子が受けたらしく、拍手をもらったが、名誉なことでは無い。
今回リベンジの機会が訪れた。 
1月末の「昼下がりのコンサート」でもこの曲を演奏する事になったのだ。パートは同じ打楽器。今度は電子打楽器でやった。
機材
iPad mini  、KORG nanoPAD2、
USB HUB(電源供給タイプ) Lightning-USBカメラアダプタ、USBケーブル
アプリは
KORG Gadget-London (PCM Drum Module)
を使用した。

アンプ、スピーカーはMACKIE SRM150 アクティブPAシステム

iPadの液晶を叩いてもアプリは動作するが、小さく叩きずらいし、場所が狂うと画面が変わってしまったり、muteがかかってしまったりするので、nanoPAD2を導入した。
結果は とりあえず条件付きでなんとか打楽器デビューできたかな?
しかしこれだけ打楽器が活躍する曲では便利な電子打楽器を導入すればそれでOKというわけではなく当然打楽器のスキルが要求されるのは言うまでもなく、楽器としてのアピールは出来たものの演奏はかなりガタガタだったと思う。
KORG Gadget-London の画面

また
クラリネットの「りんご追分」にシンバルをワイヤーで叩く「シャ・シャ・シャ」のような音をのせてみたがタイミングもそれほど難しくなく悪くはないと思った。
自在にテンポが変化するこの演奏においてマラカスの上下運動で追従しようとすると結構難しそう。とりあえず指先だけの動きの方が簡単だ。しかしリズムの安定性という観点から見ると、マラカスやスティックを振ったりする事は、一種の振り子運動とも考えることが出来、安定感にかなり寄与しているとも思われる。いずれにせよもう少し習熟した後でなければ、結論は出せないだろう。

打楽器としての性能はnanoPAD2のパッドが硬いスポンジのようでわずかなディレイ感を伴うが、慣れてしまえば何とか克服出来そうな気がする。それに音色の種類は無限に近いし、音の強弱も自由なので、これまでの打楽器の代用に止まらず、さらに広いリズムの世界を切り開く可能性を秘めているような気がする。(例えばバッハの曲に使ってみるとか)

同じアプリKORG GadgetでTokyoという打楽器のシンセサイザーもあるし、他のシンセサイザー 例えばMarseilleでは"PIPE ORGAN" や"GLOCKNSPIEL" があるからnanoPAD2を鍵盤式キーボードに交換すればパイプオルガンや鉄琴の演奏が出来るわけで、リコーダー合奏に気軽に色々な音色を持ち込むことが可能となる。他のアプリ例えばGarageBand でも同様に使用でき、弦楽器なども鍵盤キーボードで操作出来る。

・・バッハのコラールの演奏にパイプオルガンの音を加えることが出来たら楽しいと思いませんか・・・

iPad が簡単に楽器に変身してしまうところが魅力だ。キーボードやパッドとiPadをつないでいる要が「Lightning-USBカメラアダプタ」で、これは本来カメラとiPadをつなぐためのパーツなのだが、裏技としてキーボードなどをつないで使用することが出来た訳で、Appleが動作保証しているわけではない。その後「LightningーUSB3 カメラアダプタ」が発売され Appleの保証もあり、使用しながらの電源供給も可能らしい。KORGでもより高機能のplugKEYを発売予定(訂正、すでに発売済み)としているので、かなり期待をしている。

例えば出力もiPadのヘッドホーンジャックから3.5mmステレオプラグでひきださなければならないが、これはかなりの制約だ。plugKEYでは2個の標準 6.3 mmのプラグが使われている。これがあれば特別扱いされなくともPAの世界に入れるパスポートだ。
Erody、電気ギター、コンデンサーマイク、などと対等に勝負できるのだ。

plugKEYを入手しテストして実際の演奏に使用してみたいと思う。

1/28/2017

「ピエタ」 ポプラ文庫

「ピエタ」 ポプラ文庫


18世紀 地中海貿易で利益を得て大きく発展したヴェネツィアだが、その後貿易は地球規模に広がり、それに遅れをとったため経済は傾きかけている。しかし音楽や絵画の巨匠たちがキラ星のように並び文化は爛熟期

爛熟期のヴェネツィアに生まれたヴィヴァルディは、そこのピエタ(注1)と40年近く関係を持ち、多くの協奏曲を発表し、オペラも手がけ、ヨーロッパにその名を轟かせたが、最後はウイーンで病死し貧民のように葬られた。まさにドラマチックな人生だったと思われるのだが、正確にたどるのは難しい。仲間や崇拝者によって活動が記録されたのちの時代の作曲者たちとちがい、資料が少ないらしい。しかしヴィヴァルディの曲は背後にあるヴェネツィアの爛熟した文化とそこから派生したピエタ音楽院という特殊な集団を抜きにしては語ることが出来ないだろう。 この小説「ピエタ」はそんな疑問に答えてくれると思う。

「ピエタ」 大島真澄 ポプラ文庫

綿密な考証を積み上げたのだろう。実在の人物を何人か登場させている。私がわかった範囲では
アンナ・マリーア     : ピエタ出身とされるヴァイオリンニスト
アンナ・ジロー嬢    : ヴィヴァルディと行動を共にすることが多かった歌手
カナレット  : 画家
など
作者の創作と思われる
エミーリア : 親友アンナ・マリーアと一緒にピエタで育てられた。現在は書記を任されている。 彼女の口からこの物語が語られる。
ヴェロニカ : 貴族の娘、以前ピエタに通いヴィヴァルディの指導をアンナ・マリーアやエミーリアと一緒に受けたことがある。
クラウディア : コルティジャーナ (高級娼婦)
ジーナ  : ピエタ出身の薬屋

Vivaldi L'estro Armonico ル エストロ アルモニコ(調和の霊感)
12曲の協奏曲集、ヴィヴァルディはこの曲集を全ヨーロッパに向けて出版する事により、一躍注目を集める事になる。協奏曲の基礎を確立したと言われるこれらの曲はピエタの「合奏の娘たち」と呼ばれた合奏団での経験の蓄積があったからこそで、その経過が小説開始直後に熱く語られる。途中「合奏長」アンナ・マリーアの指導による練習もL'estro Armonico   でありエピローグで演奏されるのも、この曲集なのだ。ヴィヴァルディといえば「四季」を持ち出したくなるが、敢えてL'estro Armonico だけに焦点を絞っているのは作者の考証の自信からだろう。

物語は一枚の楽譜をめぐって展開してゆく。それによってピエタやヴェネツィアのようすが浮かび上がってくる。
「貴族の娘」や「高級娼婦」を登場させ爛熟したヴェネツィアの裏の世界も見せてくれる。

エミーリアとアンナ・マリーアとの関係、ピエタとヴィヴァルディの、
ピエタとヴェネツィアの関係が徐々に明らかになっていく。

ヨーロッパでは戦乱が始まり、イギリスでは産業革命ののろしが上がり、時代は大きく動き出した。 

L'estro Armonico  を再度通して聴いてみる。どの曲も個性的かつ野心的でさえある。
熱心さと好奇心に富んだ若い生徒たちが主体となっているピエタの合奏団との共同作業がなければ、生まれてこなかった作品群かもしれない。
派手好みで飽きっぽいヴェネツィア市民、その心をとらえるべく画期的なニューサウンドを生み出しヴェネツィア市民の喝采を浴び、ヨーロッパでも注目を集めたのだ。

某評論家が「ヴィヴァルディの音楽の品のなさが耐えられない・・・イタリアのテノール歌手のように歌いさわぐだけで・・云々」などとかなり「的外れ」な発言をしているが、むしろ「ピエタ」の作者大島さんの方がL'estro Armonico  だけにピシリと照準を合わせている事を頼もしく感ずる。
ヴィヴァルディの伝記にはない部分も十分に説得力がある。お勧めします。

注1 ピエタ 「公立の捨て子養育院、音楽院も併設されていた」当時のヴェネツィアには同様の施設がピエタも含めて4つあった。