3/12/2016

PAとER どこが違う

一般的なPAとER(Electric Recorder) どこが違う
例えば体育館などで小編成のリコーダー合奏を演奏するとして、音量が不足で会場全体に行き届かないと判断される場合、PA屋さんにお願いすることになるわけです。楽器ごとに マイクスタンドを立て、その音をミキサーで集約し、パート間の音のバランスをとり、場合によっては少しリバーブ(残響)を加えるなどしてL/R ステレオ音としてアンプに送り、増幅した音を左右のスピーカーから出す。
音質は特に手を加えることはなく、原音に忠実が原則だ。

ERの場合 演奏者個人の要求から出発する。「リコーダーと少し異なる音質が欲しい」「音量をアップしてクラリネットと合奏したい」「バスパートなどをパワーアップしたい」などエフェクター装置が必須となり、操作は演奏者個人の責任で行うことになる。
その為PAの場合スピーカーから出力される音はPA屋さんにお任せで自分たちは演奏に専念できるのだけれど、ERの場合音色も音量も演奏者に任されているので、音をしっかり聞き取りバランスを取ることが必要になる。スピーカーの音を演奏者に聞き取れるようにすれば当然ハウリングの危険が増大する。それを防ぐのはスタンドに立てたマイクでは無理で、発音源から数センチで集音できる極小タイプのマイクが必要となる。

SAMSON PM6 と fet Ⅱ

ERに使用するマイク
このブログを訪れて下さる方はマイクの内部構造などには興味が無いかもしれないし、通常のラベリアタイプのマイクでもERに使うことが十分に可能なはずで、その上私のオリジナルではないのだけれど、私として興味がありエネルギーを注いだ項目なので、記録しておきます。

fet Ⅱ 内部


ラビュームから数センチほどの位置に取り付け固定するのだから、極めて小型でなくてはならない。エレクトレットマイクのように電池の使用が必要だと保守が必要、演奏中に電池切れではエライことになる。ラベリアタイプと呼ばれる衣服に取り付けて使用するコンデンサーマイクが目的に合致するが、結構高価な上、リコーダーにはクリップで挟み込むような場所がない。いっそ自作でと。「ShinさんのPA工作室」のブログで紹介されているファンタム式パナ改マイクロホン fet Ⅱを使ってみることにした。
写真では左が市販品サムスンのマイク 右がfet Ⅱ (先端のピックアップ部分は8φ 20mmのアルミのパイプに収めてある)


先端のピックアップ部分は直径6mmのエレクトレットマイク、これのパターンをカットして改造し、ニ芯シールド線で引き出し、コネクタに接続する。実はこのコネクタはコネクタとしての機能は残しつつ、内部に電子回路を構成してあり、先端のピックアップ部を含む全体でコンデンサーマイクとして動作する。まさにマニアックな作りにもかかわらず完成してしまえばプロ機材として十分通用する完成度なのだ。コネクタから先は通常のプロ仕様バランスケーブルに接続すればOK
測定器が無いので両者並べて比較してみた
ミキサーの2つのチャンネルにそれぞれのマイクを接続し、一つの音源で比較する
サムスンの方は残留ノイズが多く、感度も少し低いようだ。聴感上の比較だけでも両者の差が判る。
低価格の市販品では使用パーツや組み立て構造にも色々制限があり仕方が無いのかもしれない。
fet Ⅱは十分に吟味されたパーツを使い組み立てにも気合が入っている。 例えばピックアップ部と本体をつなぐ二芯 シールド線にしてもモガミの3031と指定されているが固さとしなやかさを兼ね備えているようで実に扱いやすい。



パーツも音質へのこだわりや、コネクタの中に電子回路を入れるなどサイズにも制限があり、指定のパーツをあつめるのに苦労する。
回路図や詳細は、「ShinさんのPA工作室」のブログを見てもらうとしてパーツの調達は結構大変だった。小型の金属皮膜抵抗やフイルムコンデンサーは秋葉原を歩き回って入手できた。ピックアップ部分のマイクもほぼ同等の代用品を使用した。問題はFETで東芝ではすでに生産中止品目であり流通在庫だけとなるが、ほぼ店頭から姿が消えてしまった。

取り寄せを業者にお願いしたが少し高くなったかもしれない。一番高いのがノイトリック社のコネクタ400円程度これは仕方が無い。その他のほとんどのパーツが10〜100円で入手できるのだ。全部合わせても1000円を少し超える程度、予備のマイクも必要だからこれは助かる。

プロの録音技術者であるShinさんのblogは他にも興味深いページがあるのでぜひ訪れてみて下さい。

3/09/2016

リコーダーのブロック抜きーその2



最初にアルトリコーダーのブロックを抜いたのだが、結果がよかったため他のリコーダーにも次々と手を下してしまった。

オーボエ奏者はいつもリードの話ばかりしているなどと聞いたことがある。ひとくくりには出来ないが、常に音色のことを考えているのだろう。オーケストラが始まる直前にオーボエがA音をだすが、音程よりもコンサートマスターを納得させる音色が大切と言った奏者がいた。それ程音色には神経を尖らせ常に最良のリードを用意しているのだ。クラリネットやサキソホーンなどのリードを使用する楽器も同様だろう。それに比べてリコーダー奏者達の無頓着ぶり、確かにリードは使わなくても音は出るが、その分 より精密な内部構造なのだ。
構造が複雑微妙なので定期的にブロックを抜いて清掃するのはおすすめできないが、常に構造の複雑さを認識し問題があったらウインドウエイをクリーニングし場合によってはメーカーに修理依頼することは大切なことだ。

<写真説明>
ブロックを抜いた状態の頭部管(アルト) 「左」
抜いたブロック 

ブロック抜きのあて木 2種
      あて木小(10φ 130mm  )  ソプラノ用   「上」
      あて木大  (15φ 260mm   )アルト、テナー共用  「中」
ブロック打ち込み用のあて木  「右上」
        (30φ 50mm    ) 共用
小型の木槌、         「下」
金槌は避けたい、木槌も小型のもの、あて木はブロックにダメージを与えないため、柏材のような硬い木材は避ける。

ブロックが水分を含んでいると膨張して事故の可能性があるので丸一日は乾燥させた方が良いだろう。頭部管の下側から丸棒を差し込み、ブロックに触れた状態で木槌で丸棒を軽く叩く。
少しづつブロックがせり出して来るのでそのまま続けてブロックを取り出す。

ブロックはシーダーと呼ばれる針葉樹の材料で。木工と言うより金属加工のような精度で削り出されている。これが管材(ローズウッドなどの広葉樹)などにぴったりはまり込み、一部はウインドウエイを形成する。
ウインドウエイの部分を素早くぬるま湯あるいは水で洗って清掃する。タオルなどで拭き取り自然乾燥する。

ブロックの位置を合わせて慎重に手で押し込む。これで定位置まで収まった楽器もあったが、通常は1/3ぐらいで止まるので再度位置を確認して問題なければブロックに30φほどの「あて木」を当てて木槌でコンコンコンと軽く叩くとピタリ定位置に収まるはずだ。ブロックとあて木の間に布切れ一枚挟んでも良いかもしれない。   ・・皆様の幸運を祈ります・・

3/07/2016

第12回フレンドシップコンサート


第12回フレンドシップコンサート
開演まであと2週間を切りました、出演するグループは最後の仕上げの段階ではないでしょうか。
グループの演奏順番も決定したので掲載しておきます。
     
  演奏団体名     開始
1.ジャスミー        12:30
2.フェリーチェ       12:50
3.Gクレフ           13:10
4.たま音平日トリオ 13:30
5.ぴぽ                 13:50
 <休息15分>
6.Ricco Suono       14:25
7.ねころびと          14:45
8.ペッパーミューズ 15:05
9.厚木リコーダーオーケストラ 15:25
10.全体合奏       15:45
 <休息15分>
11.アンサンブル奏  16:20
12.ヴィア・モンテビアンコ 16:40
13.平尾リコーダークラブ  17:00
14.ゲスト演奏      17:20

曲目はそれぞれ確定しているとは思いますが当日のプログラムでのお楽しみ。

HRCはER(Electric Recorder)を前面に押し出した演奏を行います。公民館の視聴覚室では何回か実験できているのですが、実際の舞台で演奏した場合、小型のアンプとスピーカーでどの程度の効果があるのか、クラリネットなど他の楽器に対抗できる力を出せるのか、など実際にやってみなければわからない部分が多いのです。

涙のパヴァーヌ  ダウランド
昔マルチン・リンデの使用したリコーダーとリュートの楽譜に今回はバスとテナーのリコーダーを加えてみました。 ここではERを使用しません。

コンチェルトヘ長調第1楽章 サンマルティーニ 
バックの弦楽合奏部分をリコーダーで演奏し、ソプラノのソロリコーダーを目立たせる為ERを使用する。アイデアとしては面白いのですが、コンチェルトとなれば演奏自体が大変で、それを演奏する羽目になってしまって四苦八苦です。ERの開発などとノンビリ構えていられなくなりました。

知床旅情、浜辺の歌
主旋律はクラリネットにタップリ歌ってもらいます。伴奏はアンプ付きのサイレントギター

そこへERのテナーリコーダーが割って入ります。クラリネットの音に対抗できるか。

2/12/2016

リコーダーのブロックを抜く

ブロックの抜けた頭部管とブロック

アルトリコーダーを頻繁に使用するが、しばらくメンテナンスしていないせいか、最近音の立ち上がりに違和感を感じる事が何回かあった。それに吹き口の部分のブロックが手前に少し抜け出て来たのか笛本体とわずかな段差も出来ている。楽器はモダンピッチ竹山アルト ローズウッド製

本来ならメーカーに送り返してメンテナンスをするべきなのだが、平尾リコーダーリコーダークラブの練習が週2回も有り、Ricco Suonoの練習もフレンドシップコンサートを控えて練習が増えてきた。他のグループにも顔を出したりもしているので。リコーダーの休みが無いのだ。

しかしそんなことを言っている場合ではないので、禁断のブロック抜きに挑戦することにした。4日間リコーダに触れてないので、ブロックも乾燥しているはずだ。頭部管に太めの木材を差し入れ、先端がブロックに触れた状態で、木槌で木材をコンコンコンとたたいた。ブロックが数ミリせり出してきた。これでよし。更に叩くと更にせり出すが、簡単にスポンと取れない。叩くとせり出す状態がしばらく続く。ワー長い! かなりあせって来たが今更戻れない。やっと外れた。かなり細くて長い、特に吹き口部分が薄く長く削られているので、元どおりに戻せるか心配になってしまう。
ウインドウエイの部分、(ブロックの上部分、管の溝部分)を手早く水洗いする。
それほど汚れてはいないようである。急いでタオルで水分を拭き取り、1時間ほど乾燥、予定では安全のため半日放置するつもりだったが、元に戻せるかどうか不安をかかえたままでは落ち着かない。見た目はかなり乾燥したようなので、ブロックをそっと差し込んでみる。スルリと入るかと思ったがかなり抵抗がある。無理をして押し込み途中でにっちもさっちも行かなくなったらえらいことになる。
慎重に位置決めをしながら親指でぐっと力を込めて押し込んだ。1/3弱押し込まれたがそれ以上は動かない、位置関係を慎重に確認したけれども問題なさそう。あて木として直径4cmほどの丸棒を布一枚を挟んでブロックのカーブに合わせ木槌で数回たたいたらピッタリ定位置に収まった。


とりあえずホッとしたが明日の練習で結果はわかるでしょう。

追加

本日練習で使用してみた。ちょっとの音出し程度では違いが判らないが、細かい音符の曲だと音の粒立ちが違う。今までただ通過していたフレーズも陰影をつけて演奏しようとしている自分を発見してちょっと驚いている。

2/08/2016

第36回昼下がりのコンサート

プログラム

2016.1.31 「喫茶ポーポーの木」
回数が36回となるとよく続けてきたと思う。
多分最初の頃はプログラムを埋めること。とりあえず演奏出来ることが中心だったり、
自分たちのやりたい曲を一方的に演奏する。あるいは逆に観客が好むであろう曲を並べる。しかし回を重ねるうちに、いかに自分たちの思いを表現してお客さんに理解してもらえるか。そこの共有部分の大切さが徐々にわかってきたような気がする。
これは演奏上の表現だけではなく、新規の楽器への挑戦や、新技術による新たな表現の獲得なども含まれると思う。

私として今回の課題はERを実戦で使うこと。

「浜辺の歌」でクラリネット、アンプ付きサイレントギター、そしてERテナーリコーダー、

クラリネットが独特の癒し感を持って鳴り響き、ギターがリズムを刻む、そこにERのテナーリコーダーがオブリガートで絡む。音量的には十分、あと演奏法にひと癖欲しいところ。通常クラリネットは抑えた演奏をしているが、今回は遠慮なく自由に歌っているようだ。

ERのバス
前半の4曲はバスリコーダーをERとして演奏してもらった。弱目のブーストだったが、バスの音が心地よく響いて演奏が活性化する。
ここで私は「グリーンスリーブス・・・」と「平和」でソプラノを担当した、演奏中最良の響きを求めて演奏している自分に気が付き少しびっくりした。いつもは抑え気味に演奏していたのに。多分他のパートもそのように感じて演奏していたはず。ひょっとして観客までバスのリズムに取り込まれていたのではないだろうか。

涙のパヴァーヌ  この曲は40年ほど昔 私が所有していた数少ないLPレーコードの中にあった。ハンス・マルティン・リンデの演奏、遠い外国のプロの演奏として聴いていた一曲、それが平尾リコーダークラブ結成に誘われ、ギターを演奏していたKさんがリュートを購入し、楽譜も見つかり、偶然の連続で、演奏することができた。それが5年ほど前のこと、今回は再演ということになるが、リュートは平尾在住の製作家の楽器に変わり、低音の補強にバスリコーダーにも加わってもらった。私も少し余裕を持って演奏出来たから、更に前進できたのではないかと思う。まだ改善の余地だらけなのだけれど。

「浜辺の歌」の演奏

楽器構成
グリーンスリーブスによる主題と変奏・・ソプラノ、アルト、テナー、バス(ER)
聖なる乙女・・アルト1、アルト2、テナー、バス(ER)
平和・・・ソプラノ、アルト、テナー、バス(ER)
希望のささやき・・ソプラノ1、ソプラノ2、アルト、バス(ER)
二つの小品・・・リュート
涙のパヴァーヌ・・・アルト、リュート、バス
雪がふる・・・クラリネット、サイレントギター、マラカス
あいつ・・・クラリネット、サイレントギター
浜辺の歌・・・クラリネット、テナー(ER)、サイレントギター、
雪のふる街を・・・テナー1、テナー2、バス、バス
虹と雪のバラード・・・アルト1、アルト2、テナー、バス
童謡メドレー(雪、たきび、冬景色、冬の夜、春よこい、うれしいひな祭り)
アルト1、アルト2、テナー、バス


今回はそれぞれの演奏者が課題を持って臨むことが出来たし、お客さんもそのことを理解してくれたと思う。

1/29/2016

ERのテスト

ソプラノリコーダーにERのマイクを取り付けた状態

ER(エレクトリック リコーダー)をHRCの練習に持ち込んでテストしてみた。
機材はいつもの
コンデンサーマイクロホン 自作品 DIRECT-3
ギター用マルチエフェクター  BOSS GT-001 
アクティブPAシステム MACKIE SRM150

1、浜辺の歌
クラリネットが主旋律で、サイレントギターが伴奏、ギターは小型のアクティブスピーカー(アンプ付のスピーカー)を使用している。
これにテナーリコーダーがオブリガートで加わるのだが、クラリネットの音量に負けてほとんど聞こえない。ここでテナーリコーダーに特製マイクを取り付けて、ERとしてスピーカーから音を出してみた。クラリネットと対等とは言えないが、十分に渡り合える音量になった。ただ自信無く遠慮しながら演奏すると遠慮も拡大されてしまうので、自信を持った演奏が必要。しかし力む必要は全くない。

2、グリーンスリーブス
ソプラノ、アルト、テナー、バスのリコーダー四重奏、本来はそのままで良いはずだが、私はテナーやバスのパワーが不足しているように感ずる。楽器が大きくなった分、息の量もそれなりに増大させるべきだが、人間が演奏するので理屈通りにはいかない。そこで大型の楽器は省エネ設計なのだと思う。ソプラノやアルトのパワーに比べてテナーやバスがパワー不足なのはそのためだろう。
そこでバスリコーダーだけマイクを取り付け音量を上げてみた。
音量のアップはそれほど多くなかったので、演奏者は音量の増大をそれほど感じなかったらしいが、周りで演奏していた他のパートからはバスの響きがはっきり聞き取れ、リズム感よく演奏しやすかったと好評だった。
オーケストラのコントラバスなどはエンドピンを介して床が「グワン」と鳴るほどパワフルだ。それに比べてリコーダーバス群の非力な事、ERを使う理由は十分ある。

3、サンマルティーニ コンチェルト ヘ長調 第1楽章
「ERでコンチェルトを」 などと大風呂敷を広げたので挑戦してみたが、肝心のソロリコーダー(私)がメロメロでは話にならない。ソプラノリコーダーに小型マイクを取り付けた場合、(写真)マイクケーブルが運指の邪魔になるかもしれない。少し工夫が必要になると思う。
何とか練習時間を確保して形をつけたいが、ERの改良とソロリコーダーの両立は難しいかも知れない。

蛇足になるかも知れないが、今回のテストを解説してみる。

本来このエフェクターを使用するエレキギターでは、このエフェクターから出た音のみがスピーカーから増幅されて発音される。
ところが、リコーダーにマイクを取り付けたERはまず通常のリコーダーとしての音が室内に広がり、同時にマイクで拾われた音がエフェクターで加工されて室内に鳴り響く。そのため両者の混合音として聞こえる事になる。

2、グリーンスリーブスの四重奏ではバスをERとして補強している。
ERのスイッチを切れば通常の四重奏として室内に響く事になる。

エフェクターの基本動作では「コンプレッサー」で音量のバラツキを整え、「オーバードライブ」などで音色に変化を付け、「リバーブ」で潤いを追加する。ERのスイッチを入れて音量を現在鳴っているバスと同じ強さとすれば、第2のバス奏者が出現する。この奏者は第1の奏者よりちょっぴり上手い、音色が特徴的で潤いがあり音量が安定している。 観客やソプラノ、アルト、テナーの奏者には二人分の奏者の音が混合されて聞こえ、あたかも第1番目のバス奏者が演奏している音のように聞こえる。

バス奏者だけは少し状況が異なる。直近で自分のバスが鳴っている。場合によっては骨伝導のような形で直接身体に伝わってくる。そのため2番目の奏者の音がブロックされ聞きづらいのだろう。もちろん全体としてのバスの音が聞こえるべきなので、スピーカーを近づけるなどの補正が必要になるが、ハウリングが発生する恐れがあるため十分な注意が必要となる。

Elodyのように変化をつけた音色で独自の楽器としての方向も面白いが、今回のようにリコーダー+αのような使い方もあると思う。
まだ詰めなければならない問題も多いが、全体としては好印象なので、HRCの協力を得てさらにテストを続けるつもり。
31(日)の昼下がりコンサートでは何曲かはこのERを使用することになるだろう。実際に使用してみれば新たな問題点も浮上するかもしれない。

ピックックアップとしての小型マイクロホンは予備も含めいくつか必要になると思う。コネクターの中に電子回路を組み込むという構成上、小型で特殊なパーツも多いけれども調達もめどがついたので、組み立て開始できそうだ。

1/11/2016

エレクトリックリコーダー(ER)



前回はモーレンハウアー社タラソフ氏によるElodyの講義受講を紹介したが、いま手元で実験しているER(Electric Recorder)を紹介します。
写真はアルトリコーダーに取り付けた状態です。

機材の紹介
コンデンサーマイクロホン 自作品 「Shinさんの工作室」で紹介されている DIRECT-3
ギター用マルチエフェクター  BOSS  GT-001 
アクティブPAシステム MACKIE SRM150

システムの結線
マイクのピックアップ部分をマジックテープでラビュームの右下付近に固定する。
マイクのコネクタにケーブルを接続し、エフェクタ(GT-001)のMIC IN へ入力,
エフェクタ アウトよりアクティブスピーカーへ


マイク部分の詳細
中央のピックアップ部は直径6mm程のバックエレクトレットコンデンサマイクロホンの素子を改造し、極細のシールド線を半田付けして8φ 20㎜程のアクリルパイプに封入してある。写真ではさらに楽器への取り付けのための薄いネオプレンゴムのスポンジで挟み込んである。シールド線のもう一方の端はNEUTRIK 社のXLRコネクタに接続されている。ここではコネクタとしての機能は残しつつ、内部に電子回路を組み込んである。これにより全体が高性能なコンデンサマイクロホンとして動作する。
左の青いケーブルはXLRコネクタ付きのケーブルでマイクロホンのコネクタに接続し、エフェクタまで信号を伝達する。ケーブルの長さは自由に延長できる。

このように並べてみると分かることだが、マイクロホンに一部工夫が見られるものの、リコーダーにしろエフェクタ、アンプなど一般に売られている製品を組み合わせただけだ。また専用マイクは取り外し自由だから、アルトリコーダー以外の、テナー、バス、ソプラノなどにも取り付けられ、応用を広げることができる。
Elody は形状やプリントデザインなどから考えて、リコーダーとは別な楽器を目指しているように思える。歴史的な古楽を再現するための楽器を離れて、もっと自由に簡単に演奏そして表現できる楽器。あの奇抜すぎるデザインはそのための必然であったのかもしれない。

その点今回実験しているERは音色に関してはElodyと同じ音が出るので同様に扱うことが可能なわけだが、私はもう少しリコーダーに近い位置を守備範囲にしても良いと思う。リコーダーには古楽の再現という本来の使命があるわけだけれど、近年はそれを離れて、音楽を聴くだけではなく、自ら演奏して楽しむことを可能にする楽器としての役割もかなりの部分を占めてきたように思える。リコーダーオーケストラなどはその典型的な例ではないだろうか。その中にちょっと音色を変えたERが加わるのは面白いのではないだろうか。

リコーダーの音量をマイクロホンやアンプを使用して拡大するのはだれでも考えることだと思うが、意外と多くの問題が発生するのだ。近接してピックアップしたリコーダーの音は意外と単純でつまらない音、実はいつも聴いているのは部屋の残響分も加えた音なのだ。 室内の残響音もピックアップしようとマイクをリコーダーから離すと残響音より先にスピーカーの音をとらえてしまい「ギャー」とハウリングを起こしてしまう。
その点ERでは発音源(ラビューム)から数cmの位置で音をピックアップするのでリコーダーの音量とスピーカーからの音量に圧倒的な差があり、ハウリングに対して安全性が高まる(ハウリングマージンが稼げる)
そのため音色に関してはエフェクターを利用する。

エフェクトの簡単な説明
「コンプレッサー」 音のバラつきを圧縮し、小入力を増幅することで音量を均一化して整える。
「オーバードライブ、ディストーション」 音に歪を加え味のある、あるいは芯のある音にする。
「リバーブ」 音に残響を加える
その他いろいろのエフェクトがあり通常はそれらを組み合わせて使用する。
ここで使用しているエフェクター GT-001 はそれらの組み合わせが200も登録されている。全く信じがたいほどなのだが、エレキギターの長い歴史と多くのミュージシャンの努力の集積だろう。ギター用のエフェクトだからリコーダーでも同じ効果があるとは限らない、個別に試してみるしかないだろう。まるで巨大な森に迷い込んだような気がする。


アイデアを2つほど。
1、バスの補強
リコーダーオーケストラにコントラバスが1本しかないとする。低音部にもう少しパワーが欲しい
コントラバスリコーダー あれだけの躯体を十分鳴らしきるには2倍3倍のパワーが必要だが、人間が演奏する楽器であるからそれは無理、だから極端な省エネ設計なのだ。だから音も弱々しいし、音自体に芯がない。
バスリコーダーに取り付けて実験してみたが、朗々と鳴り響いて実に気持ちがよい。石頭の純血主義者でなければ十分実用性があることを認めるはずだ。
2、リコーダーコンチェルト
サンマルティーニ、ヴィヴァルディなど面白いコンチェルトが存在する。しかしソナタなどはチェンバロ、ガンバをお願いすれば何とか実現するが、コンチェルトのため弦楽合奏などをお願いするのはほとんど無理な話だろう。
リコーダーオーケストラは最近あちこちにできている。リコーダーオーケストラで弦楽合奏の部分を演奏する。ソロリコーダーは音が埋没してしまわないように、ERを使用し音を輝かしく音量もアップする。腕自慢の奏者に演奏させれば、少し変化に乏しく退屈なプログラムに活気をもたらし盛り上がること間違いなし。

現役のプロ音響技術者Shinさんのブログ
音響専門家としてのこだわりやバランスが魅力。Panasonic のエレクトリックコンデンサマイクロホン(ECM)を使用したコンデンサマイクロホンの設計をそのまま使用させてもらった。FETを2個使用する「パナ改fetV」を作るべきなのだが、部品調達の関係で「DIRECT-3」を作ってみた。


12/27/2015

タラソフ氏のElody講座を受けてみた




リコーダーの音量や音色にちょっとばかり不満を持っているためかもしれない。
1、笛膜を使用して音にビビり音を加えたり。2、楽器に小型マイクを取り付けアンプで音量を拡大してみたり"ER"(Electric Recorder) 、3、EWIと呼ばれる木管楽器風なシンセサイザーを導入したりしているが、いまのところ決定打がない。そんな中ヤマハのリコーダーフェアにモーレンハウアー社のタラソフ(Nik Tarasov)氏が来日し、Elodyの講座を行うのだという。

Elody はモダンリコーダーにピックアップを仕込んであり、その電気出力をエフェクターで加工しアンプで出力する。
楽器自体にいろいろデザインされたペイントがほどこされているが、原理的に見れば、リコーダーに近接マイクを取り付けたと考えることができる。ここまでだと私の実験している"ER"(Electric Recorder)と同じことになるが、YouTube など見てみるとギター用のエフェクターを使いいろいろな音を出している。これは使えるかもしれない。
ヤマハに講座の聴講ができるのか問い合わせたら、聴講はやらないが、講座はまだ空きがあるとの事、この際とばかり思い切って申し込んだ。平日で仕事だけれど早めに切り上げて駆けつければ間に合いそうだ。

当日は思ったより早めにヤマハに到着、少し時間に余裕があったのでリコーダーフェアの会場に行ってみた、リコーダーがずらりと並ぶ中、モーレンハウアー社のモダンリコーダーを手に取ってみる。外観は装飾を取り去った簡素な感じ、足部管は円筒形で延長したような形。フルートにHまで出る足部管というものがあるが、それと同じ発想のような足部管だ。大口径の孔をふさぐためのキーが並んでいる。試しに全部の孔を塞いで息を入れると低音がバリバリ鳴ってびっくりしてしまった。
昔フルートを吹いていた頃最低音の"C"は鳴りにくい音で、弱々しい音しか出なかった、ところが上手い人が吹くとバリバリ鳴るのでいつかはそんな音を出してみたいと思ったが結局果たせないままフルートは断念したのだ。
憧れの音が簡単に出てしまうので嬉しくなって何度もバリバリを鳴らしてしまった。テレマンなどのオリジナルな曲の演奏にはそれ程有効とは思えないが、他の楽器のための曲をアレンジして演奏する場合は、絶大な力になるだろう。Elody はこの延長線上にあるのだ。

講座は小さな演奏室で行われた。片側の壁が鏡になっているのでちょっと恥ずかしい。
半袖のTシャツ姿のタラソフ氏は気さくに招き入れてくれた。とりあえず握手したが、挨拶まで通訳さんにお願いする始末。実に情けない。通訳の方は私の高校時代の先生に似ている方だったが、丁重で好感の持てる通訳で、私もビビる事なく質問できた。
エフェクターはiPadをドッキング式のインターフェイスにつなぎ、アプリはダウンロードしたとのこと。(多分 iTrack Dock , Ampkit +  )アンプは小型のスピーカー付きギターアンプを使用していたが、出力は十分出ていた。


タラソフ氏はどんどん演奏してくれる。出てくる音と曲種が合えばかなり面白い結果が得られる。オクターブ低くなるエフェクタもありこれも使えるかもしれない。備え付けのElodyであなたも演奏どうぞ。ということなので「ダニーボーイ」をニニロッソ風に演奏、音はトランペットでと注文すると、それは出来ないとのこと。「最初から音を合成するわけではなく、元の音に変化を付けるだけだから。」了解!
「そういうことならEWIがありますよ」とタラソフ氏 ありゃ!ここでEWIの話が出るとは思わなかった。

ハウリングマージンはどれくらいかと聞くと通じない、和製英語かもしれない。通訳さんも解らなかったのかも、私の説明を翻訳してくれている。タラソフ氏がフィードバック フィードバックなどと言っている 通じたんだ。早速エフェクトを指定し音量を上げて行くと、ビビビと発振しはじめた。そうかElodyでもハウリングがあるんだ。妙に納得。
ピックアップは何を使っていますか? 答えマイクロホンではない、ピックアップであるとのこと。ここは詰め切れなかった。出力は一芯シールドのフォンプラグ。コンデンサーマイクではないし、電池は使っていないようだからエレクトレットマイクでもない。まさかダイナミックマイクではないだろう。ラビュームのちょっと下側、右側面にコネクタがあるのだが、ピックアップは内管部まで貫通していないらしいのだ。表面側から採音しているのだろうか?これ以上は自分で調べるしかないだろう。
ピックアップ位置について意見を交わした。私の実験しているERはラビユームのちょっと下側右と伝えると、タラソフ氏はウインドウェイの上側が良いと言う。多分Elody開発でいろいろ実験した結果だろう。私が持参したER用小型マイクを見せると、興味深そうに手に取ってモダンリコーダーに取り付け実験してくれた。
ちょっと心配したが、問題なく動作し、音質もなかなか良いとの評価をしてもらった。ただハウリングマージンはElodyより劣っている。
リコーダーの表面に取り付けられたマイクは周りの空気の音を拾いやすいのは当然の結果と納得できる。しかしまだ改善の余地は十分あると思う。

Elody への私の評価
リコーダーの音を電気を利用して拡大することは、だれでも考えそうなことであるが、一歩進めてピックアップを楽器に埋め込みハウリングマージンを稼ぎ、巷に数多く出回っているギター用のエフェクタを使用して若者にも好まれる音色と演奏しやすさを実現できていることは大いに評価してよいと思う。そのための奇抜なデザインもある程度は理解できるけれども少しやり過ぎのような気がするし、価格もちょっと高すぎないかな。

注、ハウリング
マイクで音を拾いアンプで拡大してスピーカーを鳴らすわけだが、スピーカーから出た音をまたマイクで拾ってしまうと信号がアンプ回路の中を駆け巡り、発振してしまう、スピーカーにマイクを近づけるとキーンと音が出ることがあるが、それがハウリング。
一般的にはスピーカーとマイクを離せば解決する。スピーカーの音がほとんどマイクに届かなければよいのだ。

ところがElody やERの場合かなり条件が異なる。演奏者にはリコーダーの音が聞える、しかしそれはただのリコーダーの音色、スピーカーから発せられるエフェクトの効いた音が同等あるいはそれ以上に聞こえてこそElody を演奏していることが実感できるのだ。だからより高度な耐ハウリング対策が必要になる。