9/23/2013

リコーダー発音の過渡現象

フルート、リコーダー、ケーナの発音部

リコーダーやフルートの材質と音色の関係を議論する前に、どのような原理で音が出るのか、今一度確認しておくことも大切と思う。

議論するにあたり範囲を定めておく必要がある。もちろん中心はリコーダーであるが、もう少し広げてエアリード楽器全般で考えてみる。(エッジトーン楽器もほぼ同じ意味)リコーダー、ケーナ、尺八、フルート等、いわゆる笛類と考えて良い。

この楽器の特徴としては、まず一定の長さの管がある。そしてその管の一方の側が少し削ってあり、エッジ状になっている、その部分に息を吹きかけると発音することができる。この部分を発音部と呼ぶことにする。この部分に空気の振動が発生するのだ。あたかもクラリネットのリードが取り付けてあるかのように。 また発音部とは逆の側つまり管の終端は開放されていることとする。

ケーナや尺八は典型的なエッジを有する。
フルートなどの横笛類はエッジ部が鈍角でありまた管の方向に対して直角に息を吹き付けるが、ここでは同類として扱う。またリコーダーは口で息の流れを作るのではなく、ウインドウエイと呼ぶ細い通路があらかじめ作られていて、これで細い息の流れが作られる。しかしこれもエアリード楽器の仲間である。

音の発生状況を考えてみる。(私は音響学者ではないので、不正確な言い回しになるが、それほど大外れではないと思う)
エッジ部に息を吹きつけると空気の渦が発生する。それは空気の振動でもあるわけだ。しかしそれは特定の音程を持つわけではなく、いわゆるホワイト ノイズと呼ばれる音で多くの振動を含む音だ。但し低周波から超高周波まで含む必要はない、多分その楽器の音域の範囲が含まれていれば良いのだと思う。そしてそれは決して大きい音ではない。

その振動の一部は拡散し残りの大部分は付属している管の中を進行してゆく。
もし管の長さが無限大であれば、振動はどんどん進み徐々に減衰してしまい結局何も起こらない。しかし実際は有限の長さだから、進んできた音は先端に達し管が突然途切れ音響インピーダンスが大きく変化するので、拡散したり、通過したり、あるいは反射して管の中を逆走して戻って行く。

この反射が重要ポイントになる。反射して逆走した音は発音部(エッジ付近)に戻っていくが、こちらの端では息が吹き込まれ空気が振動している。これとぶつかり合い相互に干渉しながら音は再度反射されて先端に戻って行く。

ちなみにかかる時間を計算して見る。仮に1フィート(約30cm)の長さであるとすると、音速は一秒間に340m、管の長さを0.3mとすれば0.3÷340=0.0008823  約0.001秒。つまりエッジ部で発生した音は、片道0.001秒で管の終端に達し、また反射する。そして往復を繰り返すのだ。

しかし大部分の音は、相互に打ち消しあったりしながらすぐに減衰して行く、これに関しては無限大の長さの管で述べたと同様である。但し例外がある。管の両端つまりエッジ部と管の終端でエネルギーが最大となる音だけは、次々に送られてくる空気の振動が、重なって、急激に大きな一つの振動が立ち上がる。この振動は管内部だけではなく、発音部の空気の振動もこれに同調する。この時出る音はピアノの中央の”ド”より1オクターブ高い”ド”(523Hz)にほぼ近い音  ソプラノリコーダーの指穴を全部ふさいだ状態を思い出していただきたい。
このように安定した状態で振動する波を「定在波」あるいは「定常波」と呼ぶ。

また「吹き込んだ息」が管の中を往復しているわけではない。ことも指摘しておきたい。振動エネルギーは空気分子の振動が次々と伝わって行くのであって(音速340m/秒)、息のスピード(たかだか2m/秒)は、ほぼ無視できる。

ここまでの現象を時系列でまとめてみる
1 息を吹き込み、エッジまで到達する時間 息のスピード(2m/sec) 距離(1cm)とすれば0.005秒
   この時間は多分無音
  
2 エッジで発生した音が管の終端まで達する時間0.001秒だから、仮に5回の往復で定在波になったとすれば0.005秒
  定在波以外の音(ホワイトノイズ)が減衰し、定在波が立ち上がっていく。

3 演奏者の調整時間 前項では触れなかったが、演奏者による調整時間も当然発生する。
  定在波の発生による吹き込み圧力の変化や耳による音程、音量、音色は演奏者にフィードバックされ、ほとんど無意識のうちにに修正される。この部分は上記1、2、の物理的な反応ではなく人為的な行為であるからかなり時間を要すると想像できるが、具体的な時間を示すことはできない。
特定の音(たとえばA)を発音するとき、定在波を立ち上げる時の息のスピードとその音を持続するのに最適なスピードはおそらく異なっており、優秀な奏者はそれを吹き分けているに違いない。
  

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