譜面台に取り付けられたチューナーCA-40 |
合奏の前に各楽器で音出しをするのだが、他人の音を「高い!高い!低い!低い!」などと決めつける人がいる。男性に多いような気がする、よほど自信があるのだろうと思うが、リコーダーで常に正しい音程を維持するのは、結構難しいと思う。
一般的に楽器が冷えていると音が低く、温まると高くなるといわれているが、これは正確な表現ではない。
楽器としての管の長さは、温度が上がれば、理屈上は少し伸びるはずだが、微小なのでここでは無視できる範囲と考えられる。ところが空気の中を走る音の速さは温度上昇の影響を大いに受けてしまう。これが音程の変わる主原因なのだ。
また寒い季節など、楽器が冷えているので、442ではなく440で合わせましょう。などと言われることがある。しかしこれも正確に言えば。楽器の中の空気が冷えているので・・と言うべきだ。音の高さを決定するのは、管の中の空気である。
まあ管が冷えていれば空気も冷えていると考えるのが一般的ではあるが。
ではなぜ空気が冷えていると音が低くなるのか。そしてどのくらい変化があるのだろう。
音の速さと温度の関係は 音速(m/sec)=331.5+0.61t (t は摂氏)の近似式を使用する。
また 音速(m/sec)÷周波数(Hz)=波長(m) の関係である。
気温は20℃ 話を簡単にするためA管のリコーダーを考えてみる。(穴を全部ふさいで音を出すとA音442Hzと考える。実際には存在しない楽器)
20℃での音速は、331.5+0.61x20=343.7 m/sec
したがって442Hzの波長は 343.7÷442=約0.778(m)
管の長さは開管の場合波長の1/2 で有るから 0.778÷2=0.389(m) この楽器の管長は0.389(m)であるはずだ。
開端補正などはここでは無視する。
ここで気温が急激に下がり、10℃になったとする。
10℃の音速は、331.5+{0.61x10}=337.6 m/sec
この楽器(管長0.389m)の出す音の高さは、337.6÷{0.389x2}=433.9(Hz)かなり低くなってしまう。
もし気温10℃でも442Hzを出すためには、7mm管長を短くすれば良い。
337.6÷442=0.764 0.764÷2=0.382 0.389-0.382=0.007(m)=7(mm)
あるいは440Hzで妥協できるのであれば5mmの縮小でも良い。
337.6÷440=0.767 0.767÷2=0.384 0.389-0.384=0.005(m)=5(mm)
いかがでしょう実際の感覚に近いのではないでしょうか。
したがってリコーダーの音程は常に変動していると思って間違いない。
最初の音合わせだけで音程が定まるのではなく、温度変化に伴い常に変動しているわけだ。もちろん自分の耳で聞き分けるのが基本だけれども、
チューナーの指示は大いに参考になる。
私はKORGのクロマチックチューナーを使用している。メトロノームのような余計な機能がなくチューナーのみに徹しているのが使いやすいと思う。金具で譜面台の下側に吊るせるようにしてあるので楽譜が隠れることはない、電池は充電出来るニッケル水素電池を使用しているので電源を入れっぱなしにしても、電池代金の心配は不要。
これで演奏中も音程を確認できる。ただこの方式にも少し問題があって、チューナーのマイクが周囲の音も拾ってしまうので、リコオケなど多くのリコーダーが鳴っている場合は、他の楽器の音を測定している場合もあり混乱してしまう。
KORGにコンタクトマイクロホン CM-200 があり、これはピエゾ素子を使用して空気の振動ではなく楽器の振動を直接拾うマイクなので他の楽器の音はシャットアウトできる。 このような目的にはぴったりのアクセサリーと思えるので、次回はこれを使用した報告をする予定。
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