3/04/2019

リコーダー頭部管の交換1


本体は竹山アルト、頭部管はブレッサンG-1A

平尾リコーダークラブを立ち上げて間もなくのことだが、もう15年以上昔のことになる。新品のリコーダーを割ってしまった。
リコーダーの「慣らし」が終わるまでは長時間吹いてはいけないといわれていたが、練習に持ち込んだらそんなことは言っていられない。
ローズウッドのアルトだったがその日割り当てられたパートがたまたまアルトパートだったので懸命に吹いた。よく鳴る楽器だった。心の中では吹きすぎではないかと心配だったが、やめるわけにもいかない、練習が終わり仔細に観察すると吹き口の少し下、ブロックを囲ってある部分の裏側に縦に黒い線が認められた。木目のようでもあり、そのように思いたかった。
しかしその夜心配になりそっとケースを開けてみた。なんと割れていたのだ。黒い線があった位置に割れ目が走り、奥にはブロックが見えた。ガーン!! 修理してもらうしかない、可能だろうか? ガックリして楽器店に持ち込むと・・なんと新品と交換してくれたのだ! 天にも昇る心地とはまさにこの事。以来その楽器は私の最も愛用する楽器として現在に至っている。

練習所として地元の公民館の視聴覚室を借りているが、先日は一人で使うことになった。4時間以上ある。コレッリのソナタを練習することにしたが、そうなるとアルトだけをを酷使することになってしまう。危険を分散するため415Hzの楽器や全音ブレッサンG-1Aも持ち込んだ。
取っ替え引っ替え吹くつもりだったが、右手の押さえ具合がそれぞれ少し異なる。ふと思いついて、竹山のアルトモダンピッチの本体部分に全音ブレッサンの頭部管をはめ込んでみた。驚いたことにほぼピタリと合う。わずかにガタがあったが、小さな紙片を挟むことで問題なし。

逆も試してみた、全音ブレッサンの本体に竹山の頭部管は僅かな差ではめ込めなかった。
しかし両者はほぼ同寸法で設計されて結果の違いは誤差範囲ではないかと思った。
両社の嵌合部の写真を示す。ほぼ同じ設計であることが見て取れる。

全音ABS製の頭部管と竹山ローズウッドの本体の組み合わせは、チューナーでチェックしてみたが問題なし。木製頭部管の長時間使用はビビる部分があるのだが、ABS製では心配することなしにいくらでも使える。 ありがたい。これは大発見だ!

3/02/2019

失われた手稿譜



失われた手稿譜
ヴィヴァルディをめぐる物語
フェデリーコ・マリア・サルデッリ
関口英子・栗原俊秀 訳  東京創元社

ヴェネツィアを離れウイーンで不遇の最期を遂げたヴィヴァルディ、
当時は著作権など確立してなかったので、楽譜は作曲者の元にしっかり保管されていたのだ。ヴィヴァルディ自身は忘れ去られてしまったが、
残された膨大な手稿譜は数奇な運命を辿り、愛書家の貴族やイエズス会士の司祭などを転々として1920年代に発見されるまでの物語。

作者のフェデリーコ・マリア・サルデッリは多方面に活躍する才人で、文学だけで無く、風刺画家としても音楽学者としても評価が高いらしい。バロック音楽のオーケストラ、モード・アンティクオを立ち上げ指揮者を務める。

ヴィヴァルディ研究家としても定評のある人物で、作者自身の「出典に関する注記」によれば、書かれている事象は、ほとんど史実に基づくそうで手稿譜の運命に関しては一部不明の部分があるも大部分は研究者たちの地道な調査によって明らかにされた史料に基づいている。
かなりの部分は司法関係の書類らしいが、それをそのまま使用するわけではなく、実際に目の前で起こっているように物語化されている。
年代順に記述されるのではなく、時代を行きつ戻りつしながら興味深い史実を交えて進行する。   食事の描写や料理のレシピ、イタリア車などにも作者のこだわりがある。具体的な内容を書くことはルール違反になると思うが、1つだけ書きたいことがある。この部分は史実ではなく作者の創作とのことだ。
愛書家の貴族マルチェッロの館へ無政府主義者が追われて逃げ込んでくる。マルチェッロは偶然の成り行きで彼を「かくまう」ことになってしまう。翌日、男がマルチェッロの為、図書室で楽譜を開き口笛で旋律を奏でる、ヴィヴァルディのリコーダーコンチェルトだ。明るく爽やかな曲だった・・・訳者あとがきによればサルデッリ自身もリコーダーを演奏するらしい。

手稿譜は
長い旅路の末に音楽学者により発見されトリノの図書館に収まり、一件落着と思いきや、今度はムッソリーニ率いるファシズムに翻弄されるのだ。



Apple Music 
月額980円で登録してある曲が聴き放題とのこと。ポピュラー系の音楽ならともかく
クラッシックそれもバロック系中心ではメリットはほとんど無いと思っていた。
Vivaldiの曲は
日本でCD中心に聴いても「調和の霊感」」「四季」などが中心でそれほど種類も多くないが、
Apple Musicで”Vivaldi” を検索してみると続々ヒットする。リコーダー、ファゴット、チェロ、オーボエなど多彩な楽器がめじろ押し、サルデッリが指揮する曲も聴ける。これらは再発見された楽譜がかなりな部分を占めるのではないだろうか。「プレイリスト」と称して、良いとこどりで寄せ集めた様な聴き方もできる、気合の入った演奏、多彩な音色で楽しめる。見事なリコーダー、ファゴットの咆哮、暴れまくるチェロ・・・これは多分ヴィヴァルディの曲には観客を喜ばせる要素が込められていて現代の演奏家たちがそれを引き出しているのだろう。

アーノンクールの言葉も引用してみる
「ヴィヴァルディの作品は時にすべての楽器のソロ奏者に至難な要求をしているが、そうした箇所からは、これらの作品が最高の腕をもつ娘たちのために書かれたことがうかがえる。この楽団のレパートリーであった作品が印刷される場合、たいていヴィヴァルディは徹底的にこれを書き直した。手稿譜と印刷譜を比較してみると、たぶん男性向きにするためだろうが、印刷版の方では大幅に技術的な簡略化が行われていることが多いのがわかる。」(古楽とは何か)音楽の友社



第15回フレンドシップコンサート





フレンドシップコンサートも15回目となりました。
私たちHRCは都合により演奏に参加できませんが、次回はぜひ演奏でも参加したいと思います。

今回は、11グループが参加し、途中、会場全体合奏あり、ゲスト演奏ありと、一日、リコーダーの音色をお楽しみ頂けます。
是非、お好きなリコーダーをご持参の上、お気軽に足をお運び下さい。楽譜は当日受付で配られます。

第15回フレンドシップコンサート
演奏団体名 (演奏開始時間)

1.ねころびと--------12:30
2.チエルアルコ------12:50
3.フェリーチェ------13:10
4.ウインドベル------13:30
  休息(15分)
5.厚木リコーダーオーケストラ--14:05
6.TRET--------------14:25
7.Gクレフ-----------14:45
8.Ricco Suono------15.05
9.全体合奏-----------15:25
  休息(15分)
10.アンサンブル奏---16:00
11.リコーダーアンサンブルぴぽ--16:20
12.ジャスミー-------16:40
13.ゲスト演奏-------17:00
辺保陽一、細岡ゆき

 2019年3月16日(土)
会場:稲城中央文化センターホール
    稲城市東長沼2111番地 Tel. 042-377-2121
開場:12:00
開演:12:30
入場無料
最寄駅:京王相模原線稲城駅下車、徒歩10分

(リコーダーの広場、Facebookにも、ほぼ同じ内容で載せてあります。) 




12/21/2018

光るリコーダー



クリスマスの演奏でリコーダーを光らせて見ようと考えた。当然LEDを使用するが、ただ光ったり点滅するだけでは面白くない、演奏に合わせて変化することが必要だ。
1.音の高さを検出して青とか赤に発光する。
2.音量の変化に応じて明るさや点灯数が変化する
私自身で作るのは手に余るので、知人に制作をお願いした。
リコーダーは当然透明な楽器が良いわけで、ヤマハのアルトとソプラノがスケルトンタイプとして売り出された時ピンクのソプラノ バロック運指を一本購入したのだ。通常は木製の楽器を使用するが、曲の内容によってはピンクのスケルトンも効果的で時々使用して来た。今回アルトリコーダーが欲しかったので、楽器屋に寄ってみたらアルトが無いのだ。それにソプラノも色は3色ほどあるが、ドイツ運指のみでバロック運指は無いとのこと。
最初にスケルトンタイプが売り出されたのはもう10年以上前になるかもしれない。その時はソプラノ/アルト、運指もバロック/ドイツ、色も3色ほどあった。時代は変わりモデルチェンジしてソプラノのドイツ運指のみに縮小されてしまったのだろう。
慌ててあちこち探してみたが、痕跡も見つからず、中古市場もスケルトンタイプ自体が出てこない。とりあえずピンクのソプラノ1本でやってみるしかない。

先日電気回路部分のテストを行なったので簡単に紹介します。
シリコンマイクにより音声を感知し、周波数によりLEDが青、緑、黄、橙、赤に発光する。LEDはテープ状のフルカラーだ。
また音量の変化に応じて光量や点灯数が変化する。
電源は小さなリチュウムイオン電池を内蔵している。
最初の設定では、低音から高音になるにしたがって赤→青であったが、感覚的には高音が赤だと思うので、低音→高音 青→赤に変更してもらった。
私の世代の感覚からすると回路や乗数の変更など必要と思うが、パソコンによるプログラム変更だけで出来てしまう。またリコーダーの音域に合わて上手く色配置にしないと発光しない色ができてしまう。
動画ではLED光を直接撮影すると光が強すぎて露出オーバーになり色再現が難しいので紙に反射させて撮影している。
とりあえず再調整して23日のクリスマス演奏会で使ってみるつもりです。


12/17/2018

近江楽堂で演奏した



フラウト・カンタービレ・プレゼンツ
〜細岡ゆき門下生リコーダー発表会〜
2018/12/08(土)  近江楽堂  

近江楽堂でプロ奏者の通奏低音で演奏した。
チェンバロは矢野薫さん、ヴィオラ・ダ・ガンバ は なかやまはるみさん
今回はYさんと二重奏をやりたいと思い何曲か物色してコレッリの二重奏を選んだ。楽譜はRJPでチェンバロ伴奏付きの楽譜を利用させてもらった。
低価格で楽譜や伴奏音源など簡単にダウンロードできるので選曲するのも簡単。 曲は ソナタ Op.1-3 
原曲はヴァイオリンの二重奏だけれどもリコーダー用としてイ長調からハ長調に移調してある。当初は単純に通奏低音付きの二重奏ソナタと考えていたが、原曲をCDなどで聴いてみるとバロックチェロ?も十分に自己主張しているので、トリオソナタと考えてよいと思われる。

トリオソナタ3番 Op.1-3   A.コレッリ
1.Grave   2.Allegro   3.Adagio  4.Allegro 

ペトルッチ楽譜ライブラリーで調べてみると、2台のヴァイオリンとチェロそしてオルガンが指定されているようだ。チェロのパートを通奏低音とは別立てとして(かなりの部分は共通しているが)ヴィオラ・ダ・ガンバにお願いし、チェンバロにもビシビシ決めてもらうことにした。
楽譜はfinale Print Musicを使用して作り直した。チェンバロはレアリゼーションなし、ガンバも別立てのパート譜が必要となる。リコーダーもブレス位置や音符の大きさなど修正した。全曲入力するのは手間もかかったが、一度入力してしまえばスコアもパート譜も自在だし一段に収める小節数も調節できるので、曲の流れに合わせた楽譜がプリントできるのだ。

肝心のYさんとの練習は互いの日程が合わなくて2回しか出来なかった。

本番一週間ほど前の伴奏合わせでは、リコーダーの2人は緊張しているのか少しぎこちない部分もあるが、ガンバとチェンバロがビシリと寄り添ってくれるので、すごく気持ち良い。 Allegro の早い楽章に不安をもっていたが、細岡師匠に指摘されたのはむしろGrave Adagioなどのゆっくりした楽章での息のテンポが速すぎる、「会場の空気をしっかり鳴らしてください」とのこと。

当日のプログラムは私たちが1番目なのでコケるわけにはいかないのだ。
朝から狭い控え室にひしめき、超過密のリハーサル、あっという間の本番、残響が豊富でかつ柔らかいのは、全て曲面壁からの反射だからだろう。しかし冷静に全曲演奏できたわけではない、音をミスすれば「シマッタ」難しい箇所が近づくと「ヤバイ」などの思いが頭に走る。それを打ち消しつつ、流れる音楽に集中する。Yさんのリコーダーの音が聞こえる、ガンバが迫力でグオーと押し、チェンバロがザザーンと決めてくる。・・この流れに乗っかれば良いのだが腰砕けになってしまいそう。今までの練習の貯金がものを言う筈なのだが、貯金の額が不足気味、でも何とか終わりまで漕ぎつけた。

自分の演奏が終われば一気に解放されて、後続のプログラムを楽しむことが出来た。
かなり緊張された演奏者もいたけれど、それぞれ自分の壁を乗り越えているのだ。演奏終わった直後のホッとした表情がいいですね。ガッツポーズの方もいて思わず大拍手した。こちらまで嬉しくなってしまう。

私達の演奏は「思っていたより良かった」との感想をいただいたが、録音(ちょっと失敗)を聴いてみてもとりあえず最後まで繋がったけれど、あまり冴えない感じ。
しかしコレッリの古い楽譜を自分で調べたり、優秀な相棒が手伝ってくれたり、プロのチェンバロとガンバがしっかり支えてくれ、その上 近江楽堂、観客あり・・「贅沢の極み」なのだ。
コレッリはリコーダー奏者にとって宝の山かもしれない。まだしばらくお付き合いさせてもらいます。





9/25/2018

コレッリで上がって演奏止まる

本番前の練習



リコーダーでコレッリのソナタOp.5-9 を演奏していたのだが、めちゃくちゃに上がってしまい、演奏が途中でストップしてしまった。
演奏中に上がってしまう事などここ10年ほど無かったのに。

学生時代の部活のOGOB会で演奏できることになった。
当時指揮者をしていたO君が今はオーケストラでチェロを弾いているので、合奏をお願いした。演奏曲はコレッリのソナタOp.5-9 本来はヴァイオリンでト長調の曲なのだが、リコーダー用にハ長調とし6月にフレンドシップコンサートで演奏したことがある。その時はリコーダー四重奏の編曲だった。練習も比較的時間をかけたので、そこそこの仕上がりで、なんとなく自信があったのだろう。今回は変ホ長調として音が少し高くなりチェロの通奏低音付きだが、お互いに忙しかったので合わせる練習は本番当日の午前中だけだった。それが最大の問題だったと思う。
調が異なるとはいえ以前やった曲なので気楽に考えていたのだ。本番が近づいたので練習を始めたらヤバイ! なめらかに演奏できないのだ。知った曲とはいえフラットが3つもあると難度がかなり高くなる。時間がないので多摩川河川敷練習所でも数回練習したがそれでもモタつく場所が残った。
本番当日の練習場は残響が多く何となく上手くなったような気分、一部指がモタつく箇所があるが何とかなるだろうと本番に臨んだ。
ところがこの会場はやけに残響が少ないのだ、音楽演奏ではなく講演などを目的に作られているのだろう。だから練習会場に比べるとリコーダーの音がやけに貧相に聞こえる。
会場には昔怖かったOBや後輩たちがいる、更に現役の部員まで聴きに来ている。その上プログラムで我々の直前のギター演奏がやけに完璧だった。
演奏は第1楽章第2楽章のみ
第1楽章 Prelude はゆっくりなので余裕しゃくしゃくの筈なのだが、余裕のない演奏でとりあえず終わり。
第2楽章 Giga ではテンポが早くなりリコーダーとチェロで三連音符の掛け合いのように進行するのだが、チェロの三連音符が思っていたリズムと少し異なるような気がして気になってしょうがない、多分チェロの方も違和感があったのではないだろうか。双方の違和感がどんどん増幅し、自分の演奏に集中できない! リズムが乱れ指がもつれて音をいくつか出し損ねた・・・しかし楽譜だけはしっかり目で追っている・・繰り返し・・「よしリベンジだ!」と思ったが、呼吸まで乱れて来てもうメロメロ・・ついに楽譜まで見失い バンザイ!  一旦止めて途中からやり直させてもらってガタガタ状態のまま終了。穴があったら入りたい 
同期の友人が「難しそうな曲だね」などと声をかけてくれるのも、かえって心苦しい。
演奏終了後の立食パーティーではニコニコしながら声をかけてくれた先輩が多かったが、これは失敗が招いた「成果」だったのかもしれない。




9/23/2018

ピンキージョ、モセーニョ

モセーニョ


今回はピンキージョ、モセーニョについて考察してみる。
このブログではスペイン、ポルトガルの統治時代 南米にリコーダーが持ち込まれたと主張してきた。(中南米におけるルネッサンスリコーダーの痕跡)それはワマン・ポマ 「新しい記録と良き統治」(2013/12/16)のイラストであったり、モトリニーア神父「ヌエバ・エスパーニャ布教史」(2013/11/29)あるいはガルシラーソ「皇統記」(2014/2/16)などであったりする。

ピンキージョ、モセーニョの発音構造から考えてリコーダーの模倣あるいはリコーダーそのものではないかとの推定は「南米の謎の笛タルカ」に書いたのでそちらも併せてお読みいただきたい。

ピンキージョは現在ケーナ代用品のみやげ物として多くつくられていると思われる。ケーナとほぼ同じサイズでリコーダーと同じ吹き口があり、楽器の表面には模様が描かれたり彫刻があったりする。ペルーなどに行った観光客がケーナの音に魅せられ1本欲しくなっても音を出すのは簡単ではないけれど、ピンキージョなら簡単に音が出せるし値段も手頃に作られている。
「アンデスの家ボリビア」には装飾がない質素なピンキージョがあったから現地では実際に使用されているのだろう。以前テレビで(NHKと思う) 南米の街の紹介で3人ほどの男性が大型のピンキージョと思われる楽器を構える画像があったが、音が聞こえる寸前で画像が切り替わり残念ながら音は聞けなかった。
ストリートミュージシャンなどによって近代に(多分1950年頃から)作り上げられたフォルクローレではケーナが使用されピンキージョの出番は無いように思われるが、いわゆるアウトクトナと呼ばれている伝統的な民謡には使われているらしい。

モセーニョ
楽器が大型になるので本体の管に細い管が添えられていて息を誘導する。通常はこのクルーク(吹き込み管)のある楽器を見ればファゴットを連想するだろう。だからファゴットの影響を指摘することが多いけれども、リコーダー奏者から見たら、バスリコーダーそのものである。これもいわゆるフォルクローレには使用されないが、伝統的なアウトクトナには使用されているらしい。

以下は私の想像です
タルカと同じく教化村崩壊後、関係者によって再度リコーダーが作られた。木材を円筒状に削る旋盤が無いので、最初から円筒状である竹とか葦を使って作った。
一般的にはこのように想像することができるが、更に一歩進めて教化村でリコーダーとして使われていた可能性も十分考えられる。
教化村でリコーダーの合奏をしていたが、数多くのリコーダーが必要になるので、このときすでに代用リコーダーとして竹などを使用したリコーダーが作られていた。それが後世のピンキージョやモセーニョになり民族音楽にも使用されるようになった。

代用の材料を使用することは笛類に限らずチャランゴなどの弦楽器でも行われている。
もともと南米には弦楽器が無かったと言われている。そこへヨーロッパからギターやマンドリンの先祖のような楽器が持ち込まれた時、もちろんちゃんと複製も作られたと思うが、アルマジロの甲羅を楽器の筐体に用いたのだ。それがフォルクローレには欠くことが出来ない楽器チャランゴとなった。教会ではオルガンは必要なためかなり早い時期に南米で作られている。パイプを鋳る材料の錫などが不足しているので竹筒や杉の薄板を巻いたパイプ(セップ神父)を使用したらしい。

このように機転を利かせて手に入る材料で楽器を作ることは日常的に行われていたらしいので、竹や葦でリコーダーを作ることはほとんど抵抗が無かったのではないか。

先に挙げた文献の著者  ワマン・ポマ、モトリニーア神父、ガルシラーソなどは観察者としての能力は卓越しているのだが、実際にリコーダーを作ったり演奏した当事者ではない。
 オーストリア出身のイエズス会士 セップ神父は正に当事者だろう。彼の著作にはまだ直接出会ってないのだが、少年時代ウイーン少年合唱団に所属し後にイエズス会士となって南米に渡り 現地の少年たちに音楽を教え、楽器も作った。
「彼の指導で竪琴、バイオリン、クラヴィコード、ファゴット、縦笛、横笛、そしてついにはオルガンまでもつくられるようになった」(注1)
と紹介されているから是非彼の著作を見たいと思う。

巻頭の写真はモセーニョ、吉祥寺時代のアンデスの家ボリビアで撮影させてもらった。サイズは2種類あるようだ。下側の短い楽器はピンキージョだと思う。
セップ神父については別項で解っていることだけでもまとめるつもりです。

(注1)「幻の帝国」南米イエズス会士の夢と挫折  伊藤滋子

8/19/2018

ケーナ+リコーダー

中央がケーナ+リコーダー

写真 左から 全音ブレッサン、ケーナ+リコーダー、ケーナ(アハユ)

うろ覚えだし、作り話と思うが、今回妙に符合するような気がして思い出してしまった。

かのアインシュタインが肉体派の某女優に言い寄られた話
「あなたの頭脳で私の身体のような子供は素晴らしいじゃない」
「やめておきましょう、貴女の頭で私の身体だったらマズイでしょう」・・・

リコーダーはよくできた楽器で微妙なバランスの上に成立していると思うが、もう少し表現力を広げたいと思うことがある。音量にしても音程の変化にしても。

私はフォルクローレのグループにも参加していてケーナも少し演奏することが出来る。ケーナはボリビア式で指穴は内径に匹敵するほどの大口径、そのため音は明快でデカイが
クロスフィンガリングがほとんど不可能なのだ。そのため音程は多少ラフな点がある。
多分昔のケーナは指穴は小さかったと想像する。アルゼンチン式のケーナはクロスフィンガリングを前提としているようだし、「アンデスの家ボリビア」に在庫していたピンキージョのようなリコーダータイプの笛類も皆指穴は小さかった。
多分60年代ごろストリートミュージシャン達によってフォルクローレが作り上げられている頃ケーナも街頭でより存在感を出せるよう太くそして指穴は大きくなったのだろう。
(ベームフルートにおけるニコルソンの大指穴フルートの影響を思い出す)

そこで冒頭のアインシュタインではないが、ケーナの歌口を利用した発音の自在さとリコーダーの本体部分を使用した運指の確実さ、を併せ持った楽器を目指した。

以前このブログで紹介した時はガムテープによる仮止めであったが今回は ABS樹脂のパイプによる結合である。

この結合部分はガナッシタイプのリコーダーのように真鍮パイプを使用するつもりであった。
歌口部分に発生するエアリードの振動と管の中に発生する定在波との間で大きなエネルギーのやりとりが行われるので、やわな作りだとエネルギーをロスしてしまうから。

28φ,1mm 厚の真鍮パイプがカタログ上存在しているので、某製作所に見積もりをお願いして見たけれど相手にもされない。少量すぎるのだろう。まあ当然と思うけれど。仕方がないので新宿東急ハンズへ行ってみた。サイズ、材質共に選択肢が限られるが、① アルミパイプ30φ 1mm厚  ② 樹脂パイプ 30φ 2mm 厚 の2種類が使えそうだ。アルミのパイプでは変形の恐れがあるので、樹脂パイプに決定。
ケーナの歌口部分は マルセロ・ペーニャの竹製ケーナを使用
本体部分は全音ブレッサン旧 の中部管と足部管
結合パイプは 樹脂パイプ 30φ 2mm厚 50mm 長
結合部分の処理は樹脂パイプの内径が26mm ケーナ歌口部分の外径が約27mmなので全周を0.5mm程度削り、はめ込んだ。リコーダーの結合部は凧糸を巻いて樹脂パイプの内径に合わ
せた。

性能
音量  大口径大指穴のケーナのような大音量ではなく、リコーダーより少し大きい程度
音程  リコーダーの運指でほぼ全ての音が発音可能、ただしチューナーでドンピシャとなるわけではなく細部の見直しが必要と思われる。
発音の立ち上がり特性  ケーナのように少し遅れる、音量が小さくなったため余計目立ちやすいかもしれない。

楽器自体に習熟することで印象を改善することは期待できるが、使用できる場所が限定される。フォルクローレのグループに持ち込んでもチャランゴなどの個性に圧倒されるだけ。
さりとてリコーダー用のソナタなどではモタついてしまう。

ダニーボーイのような曲が向いているかもしれない、以前リコーダー合奏でナツメロメドレーを演奏したことがある。その中の一曲に美空ひばりの「りんご追分」がありケーナで演奏し尺八風な演奏を目指したが、周囲のリコーダーに音程を合わせるのに苦労した。このような場合かなり有効だろう。

中部管と足部管のリコーダー部分も簡単に交換可能なので、他のリコーダーを試してみるとより良い組み合わせがあるかもしれない。あるいはさらに進めて樹脂パイプで円筒内径のルネッサンスタイプを作るのも試す価値は十分ありそうだ。