結露への対策
気温が下がってくるとリコーダーの内管に水滴が溜まり、場合によっては微妙なサミングを邪魔してしまい、とんでもない音が出たりする。原因は窓の結露と同じことで、肺の中に溜まっていた水分をタップリ含んだ暖かい空気が冷えたリコーダーに吹き込まれると、空気が急冷され、含まれていた水分が内管に凝結する訳だ。
本題の前にこの現象にまつわる話を2つ
HRCを立ち上げたころだからかなり昔の話ではあるが痛みを持って思い出す。
新入部員の加入に伴い新規の楽器が届いたばかりの頃だった。国産の木管アルト。結露のため音が出にくくなったらしい。遠心力で水を抜こうとしたのだろう。管をつかんでビュンと力強く振ったのだ。勢いで頭部管がスポンと抜け、運の悪い事にその方は和太鼓の演奏者でもあったので、並の力をはるかに超えていたのだろう。さらに床がコンクリートにリノリューム張りで、絨毯や畳でなかったことも悲劇性を強めた。カッキーン! と鋭い音で床にぶつかりコロコロと転がった。あわてて拾い上げてみると吹き込み部分とブロックがひどく損傷していた。・・・その後修理は完了したとの話は聞いたが、演奏に使っているのを見たことが無いから、当初の性能に復帰できなかったのでお蔵入りとなってしまったのだろう。
次はかっこいい話だが、残念ながらクラリネットだ。
クラリネット協奏曲を聴きに行った、確かモーツァルトだったと思う、新進気鋭といった感じの奏者。第1楽章が終わった時、片手を上げて指揮者に何かアピールした。
ン!何だろう と思う間もなく、2本のネジを緩めてリードを外し、手品のように取り出した深紅の絹のマフラーのような布をリード部分の穴に差し入れ、そのままスッと先端のベル部分から引き出した。ネジを締めてリードを取り付け、そのまま何事も無かったように第2楽章を開始した。・・・
試し吹きもなく慌てる様子もない、それでいて早く、あざやかさに拍手したくなる程だった。
いつかリコーダーでもやってみたいと思ったが、木槌でコンコンコンとブロックを抜かなければできないだろう。
さて本題 リコーダーの内管の水分を取り除く方法
通常は頭部管を外し、ガーゼのような布を巻き付けた掃除棒を差し込んで水分を取り除き、中部管、足部管も同様にして水分を取り除き、再度組み立てる。
この作業を楽器をバラす事なくやってしまうのが今回の趣旨。
写真1 クリーニングスワブ、掃除棒 モダンピッチアルト |
準備するもの
・ヤマハ クリーニングスワブ S
・木製掃除棒
クリーニングスワブ 昔はガーゼ製だったが現在はマイクロファイバー製 薄くて滑りが良い。
木製掃除棒 全長は32cmは必要、楽器のケースには収まらないかもしれない。(写真の掃除棒はバロックピッチの楽器にも対応するため 38cm)
既存の金属やプラスチックの掃除棒は長さが不足しているし、管内を傷つけるおそれがある。太すぎるのもスワブを押し込むには不適格。5φ(アガチス材)の丸棒、一端にゼムクリップをカットした金具が取り付けてある。(この金具はオイル塗布などに使用)
写真2 押し込んだ状態 |
足部管の下側の穴からスワブを掃除棒の木製部分で押し込んで行く。布の部分がほぼ押し込まれたら、掃除棒でスワブを押し上げる
布の先端がブロックに触れたら(写真2)の状態、掃除棒を引き抜く。
ウインドウエイに強く息を吹き込み中の水分を吹き飛ばす。
スワブの紐を静かに引き出すと管内の水分が除去され完了
クラリネットの新進気鋭氏ほどスマートではないが、楽器をバラさなくても良いので位置関係の再調整が不要になる。かなり完璧に水分除去が出来るので、楽器の鳴りも良い。