全音ブレッサン(1500BN)を入手した。415Hzの替管を3Dプリンターで作るつもりなのだが、そのベースとなる楽器として選んだ。
替管を付けての評価は、元の楽器自体の評価がちゃんと確認されていなくては意味がない。
樹脂製アルトリコーダーも色々な種類があるが、これはバロック時代の製作家ブレッサンの楽器を採寸して設計に反映させているそうだ。
音程をチューナーで確認してみるとほぼA=442Hzでほとんどの音がセンターを示す。オクターブ高くしても高い方にズレたりせずほぼセンターを示すのは優秀と言える。
高音域の音も比較的安定して出しやすいようだ。(個々の音の最適な息の量や速さは現行の楽器とは微妙に異なる)
指穴もそれほど不自然なところがなく、現行の楽器から大きな違和感なく持ち替えて可能。
楽器本体がプラスチックなため、手で持って構えると少し滑りやすい
唇にも違和感。
音の鳴るポイントが少し遠いような気がする(右手の薬指付近)
音によっては楽器自体がブルリと振動するように感じることがある。
高音域の音が比較的バラつきなく出るせいだろうか、それに安易に頼って発音するせいか、高音の連続するフレーズの音の輪郭が竹山ほどハッキリしない。言い換えれば「ソフトに聞こえる」これは材質の違い(竹山はローズウッド)が原因かもしれない。以上演奏してみて感じた点をまとめてみた。
早速HRCの練習に持ち込んで試してみた。
コレッリのソナタ (アルト2本とバスリコーダーの編曲) の第一アルト
スタートからブレッサンで演奏してみる。楽器が滑りやすく、音の立ち上がりが少し異なり、あせりながら演奏した。ところが他の2人の奏者はいつもの楽器と異なっていることに気付かない様子。第一楽章が終わってからそのことを告げると「楽譜に気を取られて気付かなかった」と言い訳めいた発言だったが、今までの演奏とほとんど同じに聞こえたと言うことだろう。演奏している方からすれば、苦労して演奏しているわけだし、発音ポイントも異なるし音色も違っているはずなのに納得出来ない。
簡単なブラインドテストをやってみた。
目をつぶってもらい、適当な曲を演奏し、楽器を交換して同じ曲をもう一度演奏し、楽器を当ててもらう。意外にと当たらない。
演奏する方からするとこんなに違うのにとの思いがあるが、聞く方からすればそれほど差は無かったことになる。
楽器に習熟すれば克服できる部分
指や唇の違和感、個々の音の最適な息の量や速さ、サミングのやり方、などは楽器に慣れればほとんど解決できる。
しかし材質が木であることによる安定した触感、「音の輪郭、音の粒立ち。音の芯」など表現感じ方の違いはあるが「音色」に関する部分は違いとして残ると思われる。
発音ポイントが(右手の薬指付近)などと書いたが、竹山はもう少し近く左手の中指付近)と感ずる。双方の楽器の音響的構造はほとんど同じはず、つまり発音される場所は、ラビユーム付近、各指孔、先端の穴であり、音量や音色の差がそのような遠近を感じさせていると考えられる。
リコーダーオーケストラ
リコーダー演奏において音色などの音の個性、は非常に重要な要素だと思える。しかしリコーダーオーケストラなどの集団ではそれぞれの楽器の個性はなるべく抑え込んで集団としてのハーモニーが優先される。だとすれば個々の楽器の個性を抑え込む努力をするくらいならいっそアルトパートは全員「ブレッサン」を使用する。ついでにソプラノやテナーパートも性能の良いABS樹脂の楽器選んでを選んで統一を図れば美しいハーモニーへの近道かもしれない。
・・・・この文章をまとめている時びっくりするニュースが飛び込んできた。全音が新ブレッサン(1600B)を出すとのこと。山岡重治氏と竹山木管楽器製作所との共同設計だそうだ。8月29日には近江楽堂で新製品発表会がある。聴いてみたいですね。今のままでもかなりいい線なのに音色や音の粒立ちまで踏み込んでの改良なのだろう。 大いに期待しましょう。
追加
今日もブレッサン1500BN と竹山(ローズウッド)を比較してみた。かなり高性能、付属の運指表には載っていないが先端の穴を塞ぐ いくつかの高音も出すことができる。これ以上何を変える? 樹脂の材質を変える?・・考えにくい
ひょっとしてブレッサン1600Bはバロックピッチ(415Hz) の楽器ではないだろうか。
新製品発表会は近江楽堂、ガンバ、チェンバロ、錚々たる演奏家たち・・これだけそろえばやはりバロックピッチしかないだろう。