5/28/2017

スタンド製作

楽器に取り付けた状態

フレンドシップコンサートにドルネルの組曲2番を予定している。私はバスリコーダーを担当するが、楽譜が簡単ではないだけに、楽器の保持に問題がある。専用のストラップで吊ってあるが、押さえ方によって微妙に楽器が回転してしまうのだ。一緒にクルークの角度もズレてしまう。
練習を重ねて楽器に慣れるのも大切だが、この際楽器を床に立てる事ができるスタンドを作ってみることにした。このスタンドについては某家具製作所が注文を受けていて私の周囲でも使っている方が何人かいるようだ。がっしりして使いやすそうだ。しかし値段が少々・・・
そこで工作人間を自認する私としては自作してみる事とした。
制作の条件として
・形状は独自のものとする
・木製とし、ビスや蝶番の金属類は使用しない
・最低音(F) に影響を与えない
・折りたたんで楽器ケースに入れられる。
構造の概略
側板3枚(二等辺三角形)で楽器底部とセンターブロック部分を挟み込み、輪ゴムと紐で固定する。
最終仕上げを待たずとりあえず練習で使用してみた。きわめて良好。
指が楽器を支える業務から解放されるためだろう。バスリコの腕が上がったように感じるほどだ。
また楽器のセンターで支える構造も安定感に寄与していると思われる。

スタンド製作
材質 航空ベニア  厚さ 2mm(フィンランド樺材)
木製パイプ 外形15φ内径9φ(ブナ材)
丸棒 9φ  (ヒノキ材)
テトロンロープ 3mm

単板では窓をあけると割れる事があるので、2mm厚の航空ベニア(4枚張り)を3枚貼り合わせ6mmとした。そのため12枚張り合わせた合板ということになる。ちょっと贅沢だが、安心感は増大する。国産のシナベニアでも問題はないと思う。
リコーダーの先端部分は曲面であり、そこを3枚の側板で挟み込む構造のため、図面でその部分のサイズを決める事は困難なので、ダンボールで側板を試作し、側板の大きさを決定した。リコーダーを挟み込む部分は概寸として作業を進め、最後は楽器を当てながらヤスリなどで微調整する。同様に側板のセンター軸への取り付けも組み立てやすさやガタつきの許容度を考慮しながら決める。
側板の概寸
側板の概寸
側板の板取  2mm厚でもカッターでの切り取りに苦労するから直線で切る。9枚必要
中の窓は3枚貼り合わせてから糸鋸で切り取る。
補強リングも三角スペーサーも端材より切り取る、糸鋸で良く切れる

センター軸は外径15φに内径9φの穴が貫通している(ブナ材)長さ90mm これに航空ベニア3枚を張り合わせた補強リングと三角スペーサーをボンドで固定する。
ポールは10φのヒノキ材を用い、片方の端4cm程度を9φ程度に削りセンター軸にはめ込めるよう加工する。
側板のセンター軸への取り付けは試行錯誤の結果
下側はゴムバンドで弾力をもたせて軽く締め付け、上端は楽器への取り付けを確実にするため、ロープで締める。
ゴムバンドは100mm×6mm×1.1mmを100円ショップで購入、
ロープは3mmのテトロン、それにロープのストッパーを使用した。
パーツ一式

楽器と接触する部分にフエルトを使用することも考えているが、合板によって強度は十分だが、表面の樺材は当たりが柔らかく、フエルトなしでも良いのではないかと思う。最終仕上げは表面硬度をあまり上げないためオイルフィニッシュとする予定。




5/27/2017

ドルネル 組曲2番

ドルネル 組曲第2番 表紙

フレンドシップコンサートの演奏は事情により3名での演奏となった。
以前ドルネルの組曲の一部をやった事があるので、3名ならできそうだ、そんなことで決まったドルネル 組曲2番
組曲なのでいくつかの小曲が並んでいる
 1プレリュード  2アルマンド  3ロンド  4サラバンド  5ファンタジー  6シャコンヌ  7リゴドン
このように並べると難しそうな大曲に思えるが、みんな短い曲ばかり、単独で演奏するには短すぎる、このような組曲であってこそ、その存在価値がある。前奏曲があり、小手調べ、自己紹介・・シャコンヌがメインデッシュだろう、最後リゴドンは終曲 「終わりました、いかがでしたか!」 途中ちょっと短調になり反省もある。フルコース料理のようだ。

私は今回バスパートを志願した。以前やった時はアルト 1のパートだったが、今回バスに挑戦してみたくなったから。
楽譜の表紙を見ると2本のフルートあるいはオーボエあるいはヴァイオリンと通奏低音とあり、楽器の限定はない。だからリコーダー2本で演奏しても一向に構わないのだ。原調はシャープ3つのイ長調それをハ長調に転調してある。これは問題ない。
しかし通奏低音をバスリコーダー1本で演奏する・・・これが多くの問題をはらむことに気がついた。通奏低音はヴィオラ・ダ・ガンバやチェロのような大型絃楽器とチェンバロを想定していると思われる。チェンバロがしっかり低音部を補強しチンジャラ、チンジャラとリズムも刻んでくれる。ガンバはたっぷりした持続音でそれに応え、高音域に駆け上がって上声部と絡みあっても相手を圧倒することなく、音色や音量を自在にコントロールできる。
ところがバスリコーダーだと高音のフレーズが倍音を含まない妙に薄っぺらな音になってしまう。さらに最低音に下がりFとかGを「ボン!」と鳴らしたいのに「スカ」情けない、ガンバやチェロだと「グワン!」と胴鳴りで響くのに。
先日演奏を録音して聴いてみた。
まだ所々にミスが出るのは仕方ないとして、上声部2本のリコーダーを通奏低音がしっかり支え引き立てる構図ではなく、リコーダー3重奏のように聞こえる。低音で支える部分がごっそり抜け落ちているからだろう。
通奏低音をバスリコーダー1本で代用するのは無理なのだ。
今回は3重奏で行くしかないだろう。

参考のためドルネルを調べてみたが、あまり情報は伝わっていないようだ。残された曲もあまり多くはないらしい。
素晴らしいテクニックで演奏して聴衆の賞賛を浴びるような曲では無く、音楽好きな仲間が楽器を持ち寄り演奏を楽しむ。そのような目的で作曲されたように思える。

それは演奏をどれだけ楽しんでいるかを問われることでもあり、私たちにとって難題かもしれない。当日の演奏プログラムで私たちの演奏は一番最初、会場の設営などでバタバタした直後だけれど、気持ちをサッと切り替えて、できれば遊び心を持って演奏開始したいと願っています。

5/20/2017

第13回フレンドシップコンサート


6月3日 はフレンドシップコンサートです。
本来なら3月に開催されてきたのですが、今回は会場改修のため6月になったのです。
今までは観客席の椅子が古かったりエアコンの音が聞こえたり いろいろ不具合もあったのですが、かなり良くなっているのではないでしょうか。楽しみです。
チラシと各グループの演奏順を掲載します。演奏開始時間も書きますが、これはあくまで目安と考えて下さい

1 平尾リコーダークラブ                         13:00
2 Le☆Jupiter                                     13:20
3 ウインドベル                                     13:40
4  たまの音楽家                                   14:00
5  ジャスミー                                    14:20
6  厚木リコーダーアンサンブル       14:55
7  リコーダーアンサンブル チエルアルコ      15:15
8  Ricco Suono                                     15:35
9  全体合奏                                          15:55
10 リコーダーアンサンブル Gクレフ          16:30
11 アンサンブル”奏”                                      16:50
12  リコーダーアンサンブル ぴぽ                   17:10
13  ゲスト演奏                                       17:30
  <<順番訂正しました>>

演奏曲目は「秘密?」各グループ練習中と思われます。
HRC(平尾リコーダークラブ)は
ドルネルの「組曲2番」を演奏します。これに関しては別途ブログでも書く予定です。

5/10/2017

「ハートソング」:作曲家アントニオ・ヴィヴァルディとある少女の物語

 

「ハートソング」:作曲家アントニオ・ヴィヴァルディとある少女の物語 / ケビン・クロスリー=ホランド/文 ジェーン・レイ/絵 小島希里/訳 

爛熟期(1700年代)のベネツィアには貧しさなどの為、産まれた子供を育てられない母親が、子供を捨てる施設があった。
その一つが救貧院ピエタ(注1)、そこには音楽院も併設され、才能を認められた少女たちは教育を受け「音楽隊の娘たち」として演奏活動を行うのだ。
少女達のヴァイオリン教師としてアントニオ・ヴィヴァルディは40年近く色々な資格で教えたが、彼の他にもフランチェスコ・ガスパリーニ、ドメニコ・スカルラッティ、ベネデット・マルチェロ、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツなど当時一流の音楽家達が名を連ねている。ヴィヴァルディだけではなく多くの音楽家が関わっていたのだ。
外部から音楽のレッスンを受けに貴族の娘なども通っていて、音楽学校のような役割も果たしていたらしい。
ヴィヴァルディは当然超一流であるが、当時の他の一流音楽家に混じってしまうと特別に目立った存在ではなかったのかもしれない。ヴァイオリン教師としての契約も一時途切れた事が知られている。
しかし現代の我々からすれば40年近く関係を持ち、ピエタで演奏したであろう多くの曲を残しているのだからピエタとヴィヴァルディの関係は絶大であり、ヴィヴァルディを通してピエタを理解するのも、決して的外れではないと思う。
以前書いた「ピエタ」 大島真澄 ポプラ文庫ではヴィヴァルディとヴァイオリン協奏曲集「調和の霊感」そしてエミーリアとアンナ・マリーアの2人の女性を中心として話が進められたが、今回の「ハートソング」では口のきけない少女ラウラとリコーダーそしてアントニオ神父(ヴィヴァルディ)を中心として話は展開して行く。
楽器をヴァイオリンでなくリコーダーとしたところに、この小説の性格が定まり、
もし他の楽器、例えば ヴァイオリン、ファゴット、オーボエでは別の流れになったと思われる。
もちろん実際にリコーダーを教えたのはヴィヴァルディ以外のリコーダー教師だろう。

あとがきによれば当時ピエタには800人ほどの子供が収容されていた、そのうち男子は60人ほどでやはり女子が圧倒的に多く捨てられていたのだ。
そんな中で音楽の才能を認められ「音楽隊の娘たち」として教育を受け演奏活動が出来るのは     ほんの一握りでしかない訳で、選ばれなかった子達の羨望や妬みは当然だし、「音楽隊の娘たち」に選ばれたとしても今度は内部の序列競争が激烈なのだ。 第1リコーダー スザンナ、第2リコーダー シルヴィア そして新たに加わったラウラ、彼女の上達でシルヴィアが嘆く場面がある。しかしそのような緊張感だけではなく、彼女たちを育てる事を断念するしかなかった親への思いは全ての子に存在し、それが一種の連帯感のような友情を生み出していたに違いない。
ピエタは外部には簡単には出られなかったが、施設の中では800名もの少女たちのおしゃべりや場合によっては喧嘩そして楽器の練習の音が満ちていたのだろう。

最初に読んだ時、比較的短い本なので、リコーダーを練習するラウラとアントニオ神父の物語として簡単に結末まで進んだ。しかし結末が少しピンボケのような気がした。
少し時間を置いて読み返してみた。なんだ裏側の流れもしっかり書き込んである。これなら納得。表面の流れを追うあまり、裏の流れが全く読み取れてなかった。私も石頭の頑固ジジイに近づきつつあるのだ。

気になる場所があった、「アルカンジェロ・コレリのカンタータを練習している」との記述だ。
あれ?コレッリにカンタータなどあったっけ? 確か楽譜は存在していないと思う。
しかしこのような記事を読んだことがある。・・・・・以下引用
コレッリの指揮
バッハと同年生まれのジョージ・フリデリック・ヘンデルは、弱冠23歳であったイタリア時代にオラトリオ《復活》(正式には《われらが主イエス・キリストの復活》)を発表しています。この作品は1708年の復活祭(4月8日)にローマのボネッリ宮で初演され、好評を博したため再演されていますが、初演で指揮をしたのはほかならぬアルカンジェロ・コレッリであったと伝えられています。

キリスト教と音楽  ヨーロッパ音楽の源流をたずねて  金澤正剛 音楽之友社
《メサイア》誕生物語  ・・引用ここまで

コレッリがヘンデルのオラトリオの指揮をしたという事だとすると、コレッリ作曲のカンタータというのも十分あり得る話だと思う。作者の想像力だけで書いたのではなく、何か文献の裏付けがあるのだろう。

当時のヴェネツィアの様子をもっと書き込んで欲しいとの思いはあるものの、最小限の記述に止め、ピエタとヴィヴァルディとの確執もバッサリ切り捨て、
ピエタそのものについての記述、全体の規模とか男女の比率、入所の方法、など細かいようだけれども、それを知る事により、ピエタがぐっと身近に感じられてくる、そして「後書き」で知ったのだが、ヴィヴァルディの生家とピエタが100mぐらいしか離れていないとの事、不思議な気持ちにさせられる。
添えられている絵が秀逸 、実は文章よりも絵の方が先行したとのこと、納得できる。
ヴィヴァルディのリコーダーコンチェルトも他の楽器と同様にソロ奏者に至難の要求をしている。口うるさいヴェネツィア市民の喝采を取るにはそれが必要だったし、それを演奏できる少女たちが存在したと言うことだろう。
現代の私たちがこのリコーダーコンチェルトを演奏するのは余程の覚悟が必要だが、この本を読むのは比較的簡単。ピエタがぐっと近づいて来る。おすすめです。

(注1)
正確には「ピエタ病院附属音楽院 Seminario musicale dell' ospidale della Pieta」

当時ヴェネツィアにはこのような施設はピエタを含めて4つあった。

3/10/2017

電子打楽器を演奏会で使用してみた

iPADmini  plugKEY  青いマイクケーブル

3月5日 個人のお宅での演奏会に出演させてもらった。二部屋つなげて演奏会場としたが、20名以上お客さんが入っていたから、ギッシリという感じ、音の響きは少なく、手前の部屋はともかく、奥の部屋までしっかり音が届いたかは少し心配。
次回はフルートの演奏とか紹介していたから、定期的に演奏会を開催しているらしい。
羊は安らかに・・とか日本民謡メドレーのような少し難しい曲もあったが、最近、他でも演奏したので、まとめる事が出来た。
私にとって今回の課題は電子打楽器を成功させる事。
EWIやEL(エレクトリックリコーダー)電子打楽器など機材を揃え、練習でちょっと使い、blogに書いても、それだけではあまり意味がない。実際の演奏で使用し、他の演奏者や観客にその価値を認めてもらう事が大切。

プログラム
愛の挨拶・・・エルガー作曲 積志リコーダークラブ編
羊は安らかに草を食む・・・J.S.バッハ
アニーローリー・・・スコットランド民謡 C.Yazawa 編
ロンドンデリーエアー…アイルランド民謡 C.Yazawa 編
りんご追分 米山正夫 作曲  高梨編 (クラリネット、ギター)
鈴懸けの径・・・灰田有紀彦 作曲 (クラリネット、ギター)
ナツメロメドレー  高梨編
青い山脈  服部良一 作曲
知床旅情 森繁久弥 作曲 菊池雅春編
浜辺の歌・・成田為三作曲 菊池雅春編
一匁の一助さん・・広島地方民謡 北爪やよひ編
日本民謡メドレー  金子健治編

機材
iPad mini  そして新兵器 plugKEY
アプリは
GarageBand (Chinese Kit) (Classic Drum Machine)
を使用した。
アンプ、スピーカーはMACKIE SRM150 アクティブPAシステム

plugKEYの導入でiPadの出力を標準6.3mmプラグとマイクケーブルでPAシステムにつなげるのが心強い。
現場での機材の配置の自由度が増すし、動作も安定する。
そしてiPadのバッテリー残量を気にしなくてもよい。

「1匁の一助さん」
アプリはGarageBandの(Chinese Kit)中央に「木魚」が5個もならんでいるので使ってみた。他に中国の太鼓やシンバル、そして大きなドラも、しかしこの曲は一番目立つのが打楽器パート、そして全体の骨格も打楽器が決定する。だからかなりの打楽器スキルが要求され、私にはまだ荷が重いのは当然かもしれない。最後に「グァーン!」とドラを鳴らして笑いを取ったが、まだ修行不足でした。

「りんご追分」「鈴懸の径」
アプリは(Chinese Kit) (Classic Drum Machine)を使用
クラリネットソロにギター伴奏だから必要だと思える場所に「木魚」「シンバル」「拍手」などを小さめの音で加えてみた。本物の打楽器のように目立ったり音が大きかったりはしないが、曲にしっかりメリハリはつけることが出来たと思う。
plugKEY自体に出力可変のVRがあるので曲がフェードアウトで終わる場合もしっかり対応できた。
演奏者からは「演奏しやすかった」との言葉ももらえたし、観客から打楽器への質問も出たので、効果は十分あったと思う。


実際の打楽器・・マラカス、シンバル、拍子木などの代用品ではない、比較的音の小さいリコーダー合奏に微小な電子音のリズムを加える効果について新しい世界が開けているように感じた。もう少し実験を続けてみましょう。

2/03/2017

iPadを楽器に


打楽器用機材の結線

北爪やよひさん編曲の民謡に「一匁の一助さん」がある。S,A,Tと打楽器の組み合わせで軽快な曲だが、11月地域の文化センター演奏会で演奏した。打楽器パートが私に割り当てられていた。
私としては電子打楽器を利用するとの目論みはあったのだが、演奏日までの時間的余裕が少なくアプリや機材などに不足もあったので、wood blockなどを借りて演奏した、複雑なリズムを要求される編曲で、焦って演奏していると膝の上に置いた楽器が滑って移動してしまう。焦りまくってモタつく様子が受けたらしく、拍手をもらったが、名誉なことでは無い。
今回リベンジの機会が訪れた。 
1月末の「昼下がりのコンサート」でもこの曲を演奏する事になったのだ。パートは同じ打楽器。今度は電子打楽器でやった。
機材
iPad mini  、KORG nanoPAD2、
USB HUB(電源供給タイプ) Lightning-USBカメラアダプタ、USBケーブル
アプリは
KORG Gadget-London (PCM Drum Module)
を使用した。

アンプ、スピーカーはMACKIE SRM150 アクティブPAシステム

iPadの液晶を叩いてもアプリは動作するが、小さく叩きずらいし、場所が狂うと画面が変わってしまったり、muteがかかってしまったりするので、nanoPAD2を導入した。
結果は とりあえず条件付きでなんとか打楽器デビューできたかな?
しかしこれだけ打楽器が活躍する曲では便利な電子打楽器を導入すればそれでOKというわけではなく当然打楽器のスキルが要求されるのは言うまでもなく、楽器としてのアピールは出来たものの演奏はかなりガタガタだったと思う。
KORG Gadget-London の画面

また
クラリネットの「りんご追分」にシンバルをワイヤーで叩く「シャ・シャ・シャ」のような音をのせてみたがタイミングもそれほど難しくなく悪くはないと思った。
自在にテンポが変化するこの演奏においてマラカスの上下運動で追従しようとすると結構難しそう。とりあえず指先だけの動きの方が簡単だ。しかしリズムの安定性という観点から見ると、マラカスやスティックを振ったりする事は、一種の振り子運動とも考えることが出来、安定感にかなり寄与しているとも思われる。いずれにせよもう少し習熟した後でなければ、結論は出せないだろう。

打楽器としての性能はnanoPAD2のパッドが硬いスポンジのようでわずかなディレイ感を伴うが、慣れてしまえば何とか克服出来そうな気がする。それに音色の種類は無限に近いし、音の強弱も自由なので、これまでの打楽器の代用に止まらず、さらに広いリズムの世界を切り開く可能性を秘めているような気がする。(例えばバッハの曲に使ってみるとか)

同じアプリKORG GadgetでTokyoという打楽器のシンセサイザーもあるし、他のシンセサイザー 例えばMarseilleでは"PIPE ORGAN" や"GLOCKNSPIEL" があるからnanoPAD2を鍵盤式キーボードに交換すればパイプオルガンや鉄琴の演奏が出来るわけで、リコーダー合奏に気軽に色々な音色を持ち込むことが可能となる。他のアプリ例えばGarageBand でも同様に使用でき、弦楽器なども鍵盤キーボードで操作出来る。

・・バッハのコラールの演奏にパイプオルガンの音を加えることが出来たら楽しいと思いませんか・・・

iPad が簡単に楽器に変身してしまうところが魅力だ。キーボードやパッドとiPadをつないでいる要が「Lightning-USBカメラアダプタ」で、これは本来カメラとiPadをつなぐためのパーツなのだが、裏技としてキーボードなどをつないで使用することが出来た訳で、Appleが動作保証しているわけではない。その後「LightningーUSB3 カメラアダプタ」が発売され Appleの保証もあり、使用しながらの電源供給も可能らしい。KORGでもより高機能のplugKEYを発売予定(訂正、すでに発売済み)としているので、かなり期待をしている。

例えば出力もiPadのヘッドホーンジャックから3.5mmステレオプラグでひきださなければならないが、これはかなりの制約だ。plugKEYでは2個の標準 6.3 mmのプラグが使われている。これがあれば特別扱いされなくともPAの世界に入れるパスポートだ。
Erody、電気ギター、コンデンサーマイク、などと対等に勝負できるのだ。

plugKEYを入手しテストして実際の演奏に使用してみたいと思う。

1/28/2017

「ピエタ」 ポプラ文庫

「ピエタ」 ポプラ文庫


18世紀 地中海貿易で利益を得て大きく発展したヴェネツィアだが、その後貿易は地球規模に広がり、それに遅れをとったため経済は傾きかけている。しかし音楽や絵画の巨匠たちがキラ星のように並び文化は爛熟期

爛熟期のヴェネツィアに生まれたヴィヴァルディは、そこのピエタ(注1)と40年近く関係を持ち、多くの協奏曲を発表し、オペラも手がけ、ヨーロッパにその名を轟かせたが、最後はウイーンで病死し貧民のように葬られた。まさにドラマチックな人生だったと思われるのだが、正確にたどるのは難しい。仲間や崇拝者によって活動が記録されたのちの時代の作曲者たちとちがい、資料が少ないらしい。しかしヴィヴァルディの曲は背後にあるヴェネツィアの爛熟した文化とそこから派生したピエタ音楽院という特殊な集団を抜きにしては語ることが出来ないだろう。 この小説「ピエタ」はそんな疑問に答えてくれると思う。

「ピエタ」 大島真澄 ポプラ文庫

綿密な考証を積み上げたのだろう。実在の人物を何人か登場させている。私がわかった範囲では
アンナ・マリーア     : ピエタ出身とされるヴァイオリンニスト
アンナ・ジロー嬢    : ヴィヴァルディと行動を共にすることが多かった歌手
カナレット  : 画家
など
作者の創作と思われる
エミーリア : 親友アンナ・マリーアと一緒にピエタで育てられた。現在は書記を任されている。 彼女の口からこの物語が語られる。
ヴェロニカ : 貴族の娘、以前ピエタに通いヴィヴァルディの指導をアンナ・マリーアやエミーリアと一緒に受けたことがある。
クラウディア : コルティジャーナ (高級娼婦)
ジーナ  : ピエタ出身の薬屋

Vivaldi L'estro Armonico ル エストロ アルモニコ(調和の霊感)
12曲の協奏曲集、ヴィヴァルディはこの曲集を全ヨーロッパに向けて出版する事により、一躍注目を集める事になる。協奏曲の基礎を確立したと言われるこれらの曲はピエタの「合奏の娘たち」と呼ばれた合奏団での経験の蓄積があったからこそで、その経過が小説開始直後に熱く語られる。途中「合奏長」アンナ・マリーアの指導による練習もL'estro Armonico   でありエピローグで演奏されるのも、この曲集なのだ。ヴィヴァルディといえば「四季」を持ち出したくなるが、敢えてL'estro Armonico だけに焦点を絞っているのは作者の考証の自信からだろう。

物語は一枚の楽譜をめぐって展開してゆく。それによってピエタやヴェネツィアのようすが浮かび上がってくる。
「貴族の娘」や「高級娼婦」を登場させ爛熟したヴェネツィアの裏の世界も見せてくれる。

エミーリアとアンナ・マリーアとの関係、ピエタとヴィヴァルディの、
ピエタとヴェネツィアの関係が徐々に明らかになっていく。

ヨーロッパでは戦乱が始まり、イギリスでは産業革命ののろしが上がり、時代は大きく動き出した。 

L'estro Armonico  を再度通して聴いてみる。どの曲も個性的かつ野心的でさえある。
熱心さと好奇心に富んだ若い生徒たちが主体となっているピエタの合奏団との共同作業がなければ、生まれてこなかった作品群かもしれない。
派手好みで飽きっぽいヴェネツィア市民、その心をとらえるべく画期的なニューサウンドを生み出しヴェネツィア市民の喝采を浴び、ヨーロッパでも注目を集めたのだ。

某評論家が「ヴィヴァルディの音楽の品のなさが耐えられない・・・イタリアのテノール歌手のように歌いさわぐだけで・・云々」などとかなり「的外れ」な発言をしているが、むしろ「ピエタ」の作者大島さんの方がL'estro Armonico  だけにピシリと照準を合わせている事を頼もしく感ずる。
ヴィヴァルディの伝記にはない部分も十分に説得力がある。お勧めします。

注1 ピエタ 「公立の捨て子養育院、音楽院も併設されていた」当時のヴェネツィアには同様の施設がピエタも含めて4つあった。 





12/29/2016

リコーダーの結露対策


結露への対策
気温が下がってくるとリコーダーの内管に水滴が溜まり、場合によっては微妙なサミングを邪魔してしまい、とんでもない音が出たりする。原因は窓の結露と同じことで、肺の中に溜まっていた水分をタップリ含んだ暖かい空気が冷えたリコーダーに吹き込まれると、空気が急冷され、含まれていた水分が内管に凝結する訳だ。

本題の前にこの現象にまつわる話を2つ
HRCを立ち上げたころだからかなり昔の話ではあるが痛みを持って思い出す。
新入部員の加入に伴い新規の楽器が届いたばかりの頃だった。国産の木管アルト。結露のため音が出にくくなったらしい。遠心力で水を抜こうとしたのだろう。管をつかんでビュンと力強く振ったのだ。勢いで頭部管がスポンと抜け、運の悪い事にその方は和太鼓の演奏者でもあったので、並の力をはるかに超えていたのだろう。さらに床がコンクリートにリノリューム張りで、絨毯や畳でなかったことも悲劇性を強めた。カッキーン! と鋭い音で床にぶつかりコロコロと転がった。あわてて拾い上げてみると吹き込み部分とブロックがひどく損傷していた。・・・その後修理は完了したとの話は聞いたが、演奏に使っているのを見たことが無いから、当初の性能に復帰できなかったのでお蔵入りとなってしまったのだろう。

次はかっこいい話だが、残念ながらクラリネットだ。
クラリネット協奏曲を聴きに行った、確かモーツァルトだったと思う、新進気鋭といった感じの奏者。第1楽章が終わった時、片手を上げて指揮者に何かアピールした。
ン!何だろう と思う間もなく、2本のネジを緩めてリードを外し、手品のように取り出した深紅の絹のマフラーのような布をリード部分の穴に差し入れ、そのままスッと先端のベル部分から引き出した。ネジを締めてリードを取り付け、そのまま何事も無かったように第2楽章を開始した。・・・
試し吹きもなく慌てる様子もない、それでいて早く、あざやかさに拍手したくなる程だった。
いつかリコーダーでもやってみたいと思ったが、木槌でコンコンコンとブロックを抜かなければできないだろう。

さて本題  リコーダーの内管の水分を取り除く方法
通常は頭部管を外し、ガーゼのような布を巻き付けた掃除棒を差し込んで水分を取り除き、中部管、足部管も同様にして水分を取り除き、再度組み立てる。
この作業を楽器をバラす事なくやってしまうのが今回の趣旨。
写真1 クリーニングスワブ、掃除棒 モダンピッチアルト

準備するもの
・ヤマハ クリーニングスワブ S  
・木製掃除棒
クリーニングスワブ 昔はガーゼ製だったが現在はマイクロファイバー製 薄くて滑りが良い。
木製掃除棒  全長は32cmは必要、楽器のケースには収まらないかもしれない。(写真の掃除棒はバロックピッチの楽器にも対応するため 38cm)
既存の金属やプラスチックの掃除棒は長さが不足しているし、管内を傷つけるおそれがある。太すぎるのもスワブを押し込むには不適格。5φ(アガチス材)の丸棒、一端にゼムクリップをカットした金具が取り付けてある。(この金具はオイル塗布などに使用)
写真2 押し込んだ状態

足部管の下側の穴からスワブを掃除棒の木製部分で押し込んで行く。布の部分がほぼ押し込まれたら、掃除棒でスワブを押し上げる
布の先端がブロックに触れたら(写真2)の状態、掃除棒を引き抜く。
ウインドウエイに強く息を吹き込み中の水分を吹き飛ばす。
スワブの紐を静かに引き出すと管内の水分が除去され完了
 
写真3 ゼムクリップをカットした金具 キリで穴をあけ糸で巻く

クラリネットの新進気鋭氏ほどスマートではないが、楽器をバラさなくても良いので位置関係の再調整が不要になる。かなり完璧に水分除去が出来るので、楽器の鳴りも良い。