1/26/2018

iPad で楽譜

A4の楽譜と9.7インチiPadの画面

平尾リコーダークラブも発足して10年以上になるが、演奏技術は別として、楽譜がたまってくるのだ。大部分は演奏のためコピーした楽譜なのだが、きちんと整理してあるわけではなく、再度演奏してみたくなって、楽譜を探しても、簡単には見つからない。結局コピーする羽目になる。そして益々楽譜の束が厚くなるのだ。スキャンしてPDFに変換HDDに整理——など構想は何回も立てるのだが結局実行されないのだ。
最近はiPadなども性能が向上し、紙にプリントしなくとも画面から読み取ることが可能になり、スキャナーも内蔵カメラとアプリで十分実用になるらしい。
検索してみるとこの分野でも先行している方々が多くいるらしい。特に下記は参考にさせてもらいました。

ひろせめぐみさんは
歌声喫茶のピアニストで、お客の要求に対応するため、常に数百枚の楽譜を持ち歩かなければならず、電子化してiPadに入れておき、必要な時は即座に検索できて非常に便利なのだそうだ。また紙の楽譜からデータを読み取るのに、内蔵カメラを使用してアプリで処理、楽譜を見るのも専用のアプリがある。実際に活用した上での意見なので非常に参考になる。

彼女の推薦は
iPad Pro 12.9インチ  Scannable(スキャナーアプリ) piaScore(楽譜閲覧) 
Scannableを使用しての楽譜の取り込みなども具体的で丁寧に説明している。

リコーダー演奏にiPadの楽譜が必要だろうか? 
歌声喫茶のピアノと違って、常に数百曲持ち歩く必要は多分ない。紙の楽譜の方が見やすい。
しかし「昼下がりのコンサート」のような演奏を続けていると、繰り返し演奏する曲や季節の曲などiPadに収まっていれば便利ではないだろうか。また楽譜の束も解決出来るかもしれない。通勤の途中でも簡単に楽譜を見ることができる。問題は12.9インチのiPad pro、現在発売されているiPadで最大の画面で価格もかなりする。iPadの画面の大きさは対角線の長さをインチで示してある。これで見るとiPad Pro 12.9インチはほぼA4と同サイズであることがわかる。

試しに手持ちのiPad miniで試してみると初期型のためScannabl や piaScore のアプリがうまく動作しない。しかしEvernoteを使ってPDFの楽譜を表示してみると、画面は小さいが楽譜として使うことが出来そうだ。

よしそれなら
とりあえず標準サイズの9.7インチで我慢しよう。
iPadの各モデルと画面のサイズ
iPad Pro 12.9インチ(32.8cm)
iPad Pro 10.5インチ  (26.7cm)
iPad         9.7インチ (24.6cm)
iPad mini 7.9インチ (20.0cm)
A4.         (参考)          (36.5cm)

とりあえず中古のiPad air2 Wi-Fi(9.7)を入手。楽譜を入れてみる。J.S.Bach “CONTRAPUNCTUS Ⅰ ” 4パートの総譜だと2ページとなる。ちょっと小さいかな、とも思うが、充分実用になるはずだ。譜めくりは、パートがソプラノで左側の譜面の最期の小節が(Cis D E)なのでCisとDは左手だけで演奏出来るからその瞬間に右手で画面をスワイプすれば一瞬で次ページへ切り替わる。紙の楽譜のように引っかかったりしないから慣れれば問題はないが、E音の出だしがちょっと不安定になるかもしれない。譜めくり専用のペダルもある。“Air Turn PED pro ”あるいは”IK Multimedia iRig Blue Turn”足で操作しBluetoothでワイヤレス接続する。必要なら購入するしかないが、今回はスワイプとタップだけで対応し様子を見ることにする。
「セットリスト」という便利な機能もある、その日のプログラムに合わせて必要な曲のリストを作っておくとスワイプしていくだけで、必要な楽譜が順番に出てくる。

紙の楽譜からPDF に変換するのにScannableは簡単で便利ではあるが、ページ数の多い楽譜などはスキャナーでパソコンに取り込みDropbox経由でiPadに取り込むのも手間は少しかかるが、品質の良い楽譜が得られる。
私の場合はWindows XのPCにUSB接続でCanonのプリンター(MG6930)があり、これをスキャナーとして使う。保存場所としてDropboxの中に「楽譜」のホルダを作っておく。Wi-FiでつながっているiPadのDropboxの「楽譜」を開くと目的の楽譜のPDFがあるから選択し
(エクスポート) 、 (別のアプリで開く)をタップ、(piaScore にコピー)をタップ 、完了

反射防止シート
iPadを譜面台においてみる場合、天井の照明が反射して見ずらい場合がある。画面保護シートで反射防止(アンチグレア)タイプがあるので有効かもしれない。私はまだ使ってないですけれど。

老眼鏡
この年齢になればiPad使用の有無に関わらず、使用は必須だが出来合いのメガネはレンズがデザイン重視の横長だったりして楽譜全体が見えずらい、また遠近両用の様な小細工がしてあると楽譜の端が歪んで見えたりする。本を読む時より楽譜を見るときはもっと離れているはずだ。この際、楽譜用のメガネを作れないかとメガネ屋さんに相談すると、可能です「近々仕様ですね」とのこと。サンプルとしてA4にプリントされた楽譜を出してきたのにはちょっと感激。測定してもらうと+2.25、通常は+2.5なので納得、上下の視野も確保するためほぼ円形に近いレンズのデザインを選んだ。私のオヤジの風貌に似てきたかな?
譜面までの距離も適正に確保でき上下の視野も広がった。なかなか具合が良いですよ。

1/10/2018

全音ブレッサンの特徴

新ブレッサンのウエルドライン(手書き)

全音新ブレッサンは発売以来なかなか評判が良いようだ。従来のABS樹脂の旧ブレッサンも楽器としての性能は十分あった訳で、それを上回っていると納得させるには、それなりの手段が必要となる。
細部に至る見直しが行われたと思うが、実際演奏してみてその効果を実感できた 1.指孔のアンダーカット、 2.ウインドウエイの個別パーツ化について私流に分析してみた。

  1. 指孔のアンダーカット
指を持ち上げ孔を開いた時、一定の振動モードにある内管の空気に外気が影響を及ぼす。トンネル状の指孔よりアンダーカットされた指孔の方が反応が早いのは当然のような気がする。
特に音がひっくり返りやすい高域のトリルでかなりの改善があるし、指孔の間隔が少し狭くなったのは運指のやり易さにつながる。
 
写真は新ブレッサンの左手で押さえる指孔。左側から人差し指、中指、薬指だ。この内中指と薬指の孔にアンダーカットが施されている。
ここで射出成型におけるウエルドラインから考えてみる。
一番左側の人差し指の孔に着目すると写真では青色の細い線が見える。実はこの青色の線は、わかりやすい様に私が写真に書き加えた。実際の線は角度を変えながらよく見ると(青色の線と同じ位置)指孔から右方向に線を確認することができると思う。
中部管を射出成型で作る時,この写真で言えば左側のジョイント部分に金型の吹き込み口がある。そこからドロドロに溶けたABS樹脂が圧入される。樹脂は金型の中を走るわけだが、孔の位置に来ると金型が円筒状の柱になっている為溶けた樹脂が一旦左右に分かれる。柱を過ぎればまた合流するのだが、その時左右の樹脂の接合面にわずかに筋が入るのだ。(ウエルドライン)これは射出成型には付き物の現象だそうだ。ちなみに全音旧ブレッサンを調べてみると全ての孔にこのウエルドラインが見られる。では新ブレッサンではどうかと確認すると、左側の人差し指の孔は同様にラインが見える(梨子地仕上げで見えずらいが)ところが中指、薬指の孔は少し状況が異なっている。孔の外側に同心円状の筋が入っており、リコーダーの外壁より少し低くなっている。この部分を(オーバーカット)と呼ぶらしいのだが、このドーナツ状の部分にはウエルドラインが無いのが確認いただけただろうか。ウエルドラインは外側の同心円から始まっている。つまり中部管の射出成型時は外側の大口径の孔で成型され、その後ドーナツ状の部品を取り付けているのだ。やはり中側が広がった孔は一回の射出では成型できず、後で別部品を取り付けると言う二重の手間をかけているのだ。さらにメーカーによれば、4カ所のアンダーカットされた孔はそれぞれエグリの傾きや孔のサイズが微妙に異なる為、全部別部品だそうだ、それを接着剤ではなく高周波加熱により溶着しているとのこと。 手間がかかっているのだ。

  1. ウインドウエイの個別パーツ化
従来の樹脂製リコーダーのウインドウエイはちょっと極端に表現すれば、歌口を覆うクリーム色(象牙色)の部分、ブロック(茶色)の部分、  その他リコーダー構成部分などの部品によって囲まれた空間(すきま)がウインドウエイと呼ばれていた。ウインドウエイを発音上重要な部分と考えるなら、これでは十分な精度が得られにくいだろう。新ブレッサンではこのことを考慮したのだろう個別部品化してウインドウエイの形状の精度を上げている。8月に行われた「お披露目演奏会」では全音の説明員の方が、ポケットから頭部管のサンプルを取り出して、ウインドウエイの部品を取り外して見せてくれた。小さなチョコレート色だった。これにより吹いた時の感覚が理想的になり、水分による(詰まり)も回避しやすい。との説明だったが私はもう1つ重要な事があると思っている。樹脂製リコーダーは水分による「詰まり」に弱いが、この新ブレッサンはむしろ強いのだ、ウインドウエイの形状が正確に出来ているので水分を吹き出しやすいとの説明だが、私はウインドウエイの熱容量も関係していると考えている。
従来の楽器だとウインドウエイの天井、床、左右の壁とも他の部位例えばブロックなどの表面、であるわけだから、冷えた状態に息を吹き込んでも、冷えたままですぐに温度が上がりにくい、ところが新ブレッサンの場合小さな個別部品なので簡単に温度が上がってしまう。そして一旦温度が上がれば息を吹き付けても、もはや水分は発生しないことになる。
これは大変有効な性質ではないだろうか。もちろん水分の発生が抑えられるのはウインドウエイ部分だけで、高温で湿った空気はそのまま内管へ突入するわけでそこで水分を発生するのは従来の樹脂製楽器と同じだけれども。

関西での「お披露目演奏会」では、バロックピッチの替え管の話は出なかったようで、ちょっと気になるところだ。売り上げの伸びがイマイチなのかもしれない。