12/29/2016

リコーダーの結露対策


結露への対策
気温が下がってくるとリコーダーの内管に水滴が溜まり、場合によっては微妙なサミングを邪魔してしまい、とんでもない音が出たりする。原因は窓の結露と同じことで、肺の中に溜まっていた水分をタップリ含んだ暖かい空気が冷えたリコーダーに吹き込まれると、空気が急冷され、含まれていた水分が内管に凝結する訳だ。

本題の前にこの現象にまつわる話を2つ
HRCを立ち上げたころだからかなり昔の話ではあるが痛みを持って思い出す。
新入部員の加入に伴い新規の楽器が届いたばかりの頃だった。国産の木管アルト。結露のため音が出にくくなったらしい。遠心力で水を抜こうとしたのだろう。管をつかんでビュンと力強く振ったのだ。勢いで頭部管がスポンと抜け、運の悪い事にその方は和太鼓の演奏者でもあったので、並の力をはるかに超えていたのだろう。さらに床がコンクリートにリノリューム張りで、絨毯や畳でなかったことも悲劇性を強めた。カッキーン! と鋭い音で床にぶつかりコロコロと転がった。あわてて拾い上げてみると吹き込み部分とブロックがひどく損傷していた。・・・その後修理は完了したとの話は聞いたが、演奏に使っているのを見たことが無いから、当初の性能に復帰できなかったのでお蔵入りとなってしまったのだろう。

次はかっこいい話だが、残念ながらクラリネットだ。
クラリネット協奏曲を聴きに行った、確かモーツァルトだったと思う、新進気鋭といった感じの奏者。第1楽章が終わった時、片手を上げて指揮者に何かアピールした。
ン!何だろう と思う間もなく、2本のネジを緩めてリードを外し、手品のように取り出した深紅の絹のマフラーのような布をリード部分の穴に差し入れ、そのままスッと先端のベル部分から引き出した。ネジを締めてリードを取り付け、そのまま何事も無かったように第2楽章を開始した。・・・
試し吹きもなく慌てる様子もない、それでいて早く、あざやかさに拍手したくなる程だった。
いつかリコーダーでもやってみたいと思ったが、木槌でコンコンコンとブロックを抜かなければできないだろう。

さて本題  リコーダーの内管の水分を取り除く方法
通常は頭部管を外し、ガーゼのような布を巻き付けた掃除棒を差し込んで水分を取り除き、中部管、足部管も同様にして水分を取り除き、再度組み立てる。
この作業を楽器をバラす事なくやってしまうのが今回の趣旨。
写真1 クリーニングスワブ、掃除棒 モダンピッチアルト

準備するもの
・ヤマハ クリーニングスワブ S  
・木製掃除棒
クリーニングスワブ 昔はガーゼ製だったが現在はマイクロファイバー製 薄くて滑りが良い。
木製掃除棒  全長は32cmは必要、楽器のケースには収まらないかもしれない。(写真の掃除棒はバロックピッチの楽器にも対応するため 38cm)
既存の金属やプラスチックの掃除棒は長さが不足しているし、管内を傷つけるおそれがある。太すぎるのもスワブを押し込むには不適格。5φ(アガチス材)の丸棒、一端にゼムクリップをカットした金具が取り付けてある。(この金具はオイル塗布などに使用)
写真2 押し込んだ状態

足部管の下側の穴からスワブを掃除棒の木製部分で押し込んで行く。布の部分がほぼ押し込まれたら、掃除棒でスワブを押し上げる
布の先端がブロックに触れたら(写真2)の状態、掃除棒を引き抜く。
ウインドウエイに強く息を吹き込み中の水分を吹き飛ばす。
スワブの紐を静かに引き出すと管内の水分が除去され完了
 
写真3 ゼムクリップをカットした金具 キリで穴をあけ糸で巻く

クラリネットの新進気鋭氏ほどスマートではないが、楽器をバラさなくても良いので位置関係の再調整が不要になる。かなり完璧に水分除去が出来るので、楽器の鳴りも良い。

演奏会を終わって

第4回細岡ゆき門下生 リコーダー演奏会
2016年12月4日(日) 近江楽堂
チェンバロ 矢野 薫
ヴィオラ・ダ・ガンバ  なかやま はるみ
演奏曲
G.P.Telemann. Sonate f-moll TWV41:f1
   Triste Allegro Andante Vivace

もう2週間以上も過ぎたが体調のバランスがくるったのか、まとめるのに時間がかかってしまった。
演奏会当日はバタバタと過ぎ、必死で演奏したけれども、やはりダメなところはダメ、セロ弾きのゴーシュにはなれなかった。

リコーダーを演奏する限り、いつかはテレマンをとの思いはあったが、この曲 ソナタヘ短調TWV41:f1は私にとって難しすぎたかもしれない。五線の頭にフラットが4つも並んでいてさらに加線もふんだんに使用されているから、加線を数え運指表で確認しながら進むハメになった。半音階などの基礎がしっかり身についていれば、これほど苦労することはなかったと思うが、とにかく遮二無二やるしかない。一つのフレーズを何回か練習すると”指”が覚えてくれるのか、なんとかその部分を演奏できるのだ、しかし完全に理解できているわけではないから、たとえば途中から演奏しようとすると悩んでしまって動けない。
それを補うためプロの演奏を徹底的に聴くことにした。通勤の往復は2時間はあるのでiPodに入れてある録音を連続して聴いた。
iPodには聴いた回数を記録している機能があるので調べてみると300回を超えていたからそれなりにスゴイと思うが、半分は寝ていたかもしれない。
あと練習の場所と時間の確保が大変だった。この時期はどうしても他の演奏会と競合する。土日などは他の演奏会やそのための練習などで埋まってしまう。HRCなど合間にヒイヒイ練習している私のために、合奏練習を早めに終了させ場所と時間を提供してくれたことが何回かあったがこれは多いに助かった。多摩川の河原はこの時期暗くなるのが早いしリコーダー向きではない(最近事件があったが、そこは私が練習している場所)

本番演奏中は”滑ったり転んだり”だったが、一瞬冷静になれる場所もあり、チェンバロとガンバがしっかり支えたり手を差し伸べてくれたりするのが実感できた。さすがプロ!

楽器への工夫
指掛け
私はモダンピッチの楽器には自作の指掛けを取り付けている。しかし今回使用した楽器には使っていない。伝統的なバロックピッチの楽器であるし、カエデ材に塗装仕上げであることも取り付けを躊躇させていたのだ。しかし右手がらみの細かい動きにモタつきがある。子細に観察してみると右手親指の位置が定まっていないため楽器の支えが不安定で、それを補うためか右手” 人差し指” ”中指”の腹でも楽器を支えていることがわかった。
小型の指掛けを作り、両面テープで固定した。それなりの効果は期待できる。アマチュアの場合許される範囲と思う。
楽器の結露対策
 気温が下がってくると管内の結露が多くなる。その都度楽器をバラして水分を拭き取るのは音程や取り付け角度が狂ったりして手間がかかる。
掃除棒やスワブ(拭き取り布)の材質やサイズを工夫して、組み立てたまま拭き取ることが可能となった。

演奏が終わりとりあえずほっとして考えてみると、ソナタなどの演奏は登山に似ていると思った。プロの奏者達は多少のガレ場でも楽しそうにスイスイ超えて行ってしまう。私はチェンバロとガンバの頼もしいガイドが同行しているのに”滑ったり転んだり”悪戦苦闘の連続なので、「素晴らしい展望ですよ」、「きれいな花がありますよ」など言われても見る余裕なし、それに山の規模は高尾山、大山ではなくて北岳クラスだったと思う。

男性の参加
Face Book に演奏会の集合写真が載ったが、「男性が少ない」との書き込みがあった。正にその通りで、Yさんと私だけなのであった。門下生が圧倒的に女性だけというわけではない。現に私の所属しているRicco Suonoではほぼ半数ずつだと思う。
私の場合ドン・キホーテ的で恥もタップリあったが得たものも多かった。
男性の場合少しばかりの自信と”自己防衛本能”のようなものが強すぎるのかもしれない。

これは”昼下がりの演奏会”のような演奏を行ってもお客さんはほとんど女性ばかり。男性はほんの一握り、同じような傾向だ。初めて聴くリコーダー合奏にも「アラいいわね」などと興味を示す女性も多いのに、男性は「なんだカラオケじゃないのか」と帰ってしまう。年をとるほど柔軟性が不足して頑固になるように思う。自分自身も含めて心しなければならない。